OTRSの問題管理とナレッジ管理
OTRSの問題管理
ITILv3の問題管理プロセスは、インシデントの未知の根本原因を識別し、解決することを目的としています。その実現のためにOTRSでは、問題の種類(OTRSでは「タイプ」と呼びます)と優先度で分類して、既知のエラーデータベースにワークアラウンド(回避手順)があれば、それに基づいて担当者が対応するというプロセスを経ます。ワークアラウンドがない場合は、エラー記録を作成して対応します。
図1:OTRSの問題管理プロセス・フロー |
インシデントを問題と優先度で分類する手順
最初に、インシデントを問題管理プロセスとしてエスカレーションする際の操作手順例を示します。まず、「チケット」の「状態一覧」からチケットの詳細内容を表示させて、「第4回 OTRSのインシデント管理」の3ページ目で紹介した「優先度」をクリックし、図2の「タイプ」のリストボックスを「問題管理」に変更します(「タイプ」リストボックスの内容は、事前に定義しておく必要があります)。
そして、「優先度」リストボックスから該当するものを選択し、担当者の作業履歴として本文に注釈を入力して「送信」すると、問題管理にエスカレーションした履歴が作成されます。この操作履歴は、顧客のWeb画面には公開されません。
図2:チケットの優先度を変更する画面 |
OTRSのナレッジ管理
問題管理プロセスが完了した場合は、次回以降の問い合わせ対応や内部(担当者間)のノウハウ蓄積のために、担当者がFAQを追加していくことが、ITILで推奨されています。FAQに登録する際には、「FAQ」の「新規」をクリックし、FAQの作成画面を表示させます。表1は、FAQを登録する際に設定する項目の一覧です。
作成したFAQ文書は、担当者向けのWebインタフェース担当者にしか公開しない「内部(担当者)」、顧客向けのWebインタフェースに公開する「外部(顧客)」、一般向けのWebインタフェースに公開する「公開(全員)」の3種から公開範囲を指定することができます。また、担当者や顧客によって公開するFAQ文書を分けたい場合は、カテゴリごとに公開権限を指定することが可能です。
図3:FAQ文書の作成画面 |
項目 | 説明 |
---|---|
タイトル * | ※任意で入力 |
キーワード | FAQ文書を検索するためのキーワードを登録します。 |
カテゴリ * | FAQ文書の該当するカテゴリーを指定します。 |
状態 | 外部(顧客)、内部(担当者)、公開から選択します。 |
有効 | (有効)※不要になった文書を無効にします。 |
言語 | Ja(日本語)を選択 |
承認 | ※この項目は承認者のみに表示されます。FAQ文書の公開を承認するときは、「はい」を選択します。 |
添付ファイル | 添付ファイルがあるときは任意で添付します。 |
症状 | インシデントの症状を記載します。 |
問題 | インシデントの問題点を記載します。 |
解決 | インシデントの解決方法を記載します。 |
コメント | ※任意で入力 |
* 必須入力 | |
表1:FAQ入力項目 |
作成したFAQ文書は、インシデント文書と連結させることができます。FAQ文書かインシデント文書を表示して、「連結」ボタンをクリックして、連結したいインシデント文書やFAQ文書を設定することでインシデント文書とFAQ文書を連結できます。
ナレッジ管理の機能を利用するには、いくつかの事前設定が必要になります。ここでは、その設定方法について説明します。
ナレッジ管理を使用するための登録の流れ
FAQ文書の公開範囲を特定するためには、以下の設定が必要になります。
- 顧客とグループを連結させる機能の有効化
- 顧客グループの登録
- 顧客とグループの連結
- カテゴリの登録
OTRSでは、FAQ文書の公開範囲を「カテゴリ」単位で特定することができます。ここでは、「OTRS」というカテゴリを作成し、そのカテゴリ内のFAQ文書を「OTRS Group」という顧客グループのみに公開するときの例を説明します。
顧客とグループを連結させる機能の有効化
デフォルトでは、顧客とグループの連結が無効になっているので、有効にします。「管理」の「システムコンフィグ」をクリックして、操作欄で「Framework」を選択します。サブグループ内の「Framework -> Frontend::Customer」をクリックします。
「CustomerGroupSupport」を「はい」にして、一番下にある「更新」をクリックすることで、グループ連結機能が有効になります。
図4:顧客とグループの関連付け |
顧客グループの登録
グループの作成方法は、「第3回 OTRSの基本設定」で説明した「グループの作成」を参考にして下さい。ここでは、「OTRS Group」というグループを作成します。
顧客とグループの連結
「管理」の「顧客 < > グループ」をクリックして、「OTRS Group」グループをクリックします。そのグループに含めたい顧客に対して「ro」と「rw」の権限をチェックして、「送信」をクリックします。
カテゴリの登録
「FAQ」の「カテゴリ管理」をクリックして、「カテゴリを追加」をクリックします。ここでは、権限項目に「OTRS Group」を選択します。
項目 | 説明 |
---|---|
名前 * | 名前を入力します。 |
親カテゴリ | ※親のカテゴリがあれば指定します。 |
コメント * | コメントで入力します。 |
有効 | (有効)※不要になったカテゴリは無効にします。 |
権限 * | 追加したいグループを選択します。 |
* 必須入力 | |
表2:カテゴリ管理の追加 |
FAQ文書の承認機能
最後に、承認機能について説明します。この機能を使うことで、管理者が承認したFAQ文書のみを公開できるようになります。
承認機能は、デフォルトでは無効になっています。「管理」の「システムコンフィグ」をクリックして、操作欄で「FAQ」を選択します。サブグループ内の「FAQ -> Core::Approval」をクリックします。「FAQ::ApprovalRequired」を「はい」にして、一番下にある「更新」をクリックすることで有効になります。
図5:FAQ承認機能を有効にする |
デフォルトでは、FAQ承認者グループが「faq_approval」、FAQ閲覧グループが「faq」となっており、このグループに担当者をアサインします。設定方法は、「第3回 OTRSの基本設定」で説明した「担当者とグループの権限設定」を参考にしてください。
FAQ承認キューはデフォルトで「FAQ_Approval」に指定されているので、ここではこの名前でキューを作成します。設定方法は、「第3回 OTRSの基本設定」で説明した「キューの作成」を参考にして下さい。
以上の設定で、承認機能が利用できるようになります。次回は、「OTRSのサービス資産・構成管理」について説明します。