Rubyは儲かる?「Ruby&Rails BIZcon2013」レポート
多角的な視点から見たRuby
基調講演以外には3つの講演が展開された。いずれの講演も異なる視点・方向からRuby&Railsが語られた。講演内容を下記に示す
ビジネスコンサルタントが語る!Rubyで儲かるための10か条
吉政創成株式会社代表取締役 吉政忠志氏
吉政創成株式会社の吉政氏によるセッションでは、「Rubyは儲かるのか?」というエンジニア・企業単位での疑問に対して、具体的なデータを掲げて解説がなされていた。
特に印象に残ったのは「国内のRuby市場規模を示すデータはどこにも存在しない」ということだった。データが存在しないと言うことは、言い換えれば今日の国内市場規模はそれほど大きくはないことを示している。どのタイミングで大ブレイクするのかは不明であるが、米国でのデータを見ると一番多いJavaと比較してRubyは年1%程度増加し、ジワジワと差を詰めている。その流れは確実に国内にも伝播してくると思われる。
Rubyistによるアジャイル開発の進め方
株式会社アジャイルウェア代表取締役 川端光義氏
株式会社アジャイルウェアの川端氏は2003年からJavaのアジャイル開発を手がけており、アジャイル開発の著書も執筆している。昨年よりアジャイルウェア社を立ち上げBtoB受託開発でRailsのシステム案件を多く手がけていて、実に全案件の内9割がRubyの関わる案件だと言う。
川端氏はRedmineのプラグイン開発を事例として挙げ、話を進めた。開発のスピードの速さもあるが、驚くことにチケット(同社はPivotal Trackerを利用)管理される工数の単位は同社では最大でも1日と細かく割り当てられ、2~3時間でタスクが終了している。
そのスピード感から、エンジニアはドキュメンテーションに時間を割くことなく、作る→確認(クライアント)→修正のプロセスを経ている。これまで同社の案件では、スケジュールは全て前倒しで終了させ、遅延はまったく発生していない。
そこには的確なプロジェクト・マネジメントだけでなく、優秀なRubyistの存在が欠かせない。「優秀なRubyistは個性も強力です」と同氏は語り、在宅勤務/フレックスはもとよりコミュニケーション方法まで、最大限のパフォーマンスが発揮できる様にそれぞれの個性に合わせていると言う。
COBOL技術者向けのRailsを用いたオブジェクト指向教育
フロイデ株式会社 代表取締役 吉谷愛氏
COBOLエンジニア向けにキャリア・チェンジ研修プログラムを提供し、市場からも好評を得ているのがフロイデ株式会社だ。以前は制御・汎用系エンジニアを対象に「COBOL to Java」なども展開していたが、講師/受講者共々からの評判は芳しくなかった。そこで代表取締役の吉谷氏が講師/受講者の声を拾いあげた結果、Web知識が皆無であっても「MVC」「クラウド」「oop」等々の押さえて欲しい技術に対してベテラン・エンジニアのプライド傷つけることなく、興味をもたせ、挫折することなく習得できるプログラムとして「COBOL to Rails」に至った。PC環境等の事情で予定されていた演習のデモは行われなかったが、「MOGOK」を用いてアプリ作成の演習である解説からも同社の研修のクオリティの高さを感じることができる。受講者はフリーである「MOGOK」に触れることで、研修終了後も継続的に独習するが可能だ。同社の目指す"教育プログラム"は、一時的に「何となく分かった」ではなく、受講者に末永く続く学習意識を根付かせるのことを可能にしている。
Ruby&Railsに関する 個人スキルから企業の方向性までを考える
講演後にはヒューマンリソシア社主催によるパネルディスカッションが行われた。テーマは「RailsとRubyの技術者の育成について」。人材派遣の見地から語られるRailsとRubyの人材需要状況は前出の登壇者との間で活発で興味深い話が展開された。
現状、日本国内においてRuby&Railsのビジネス需要・認知はまだまだ低いと言えるが「Ruby&Rails BIZcon2013」を通じて「必ず大きなムーブメントが来る」と言うことを強く感じる。
しかし、その"ムーブメント"が訪れるのは、半年後なのか2年後なのか、いつ何時訪れるのかは知る由もない。読者諸氏は常にアンテナを広く高く張り、ムーブメントに乗り遅れないことをおすすめする。
【関連リンク】
(リンク先最終アクセス:2013.09)
<編集部より>まつもとゆきひろ氏の名前が間違っていたため修正しました。他、一部文章を修正しました(2013.09.17)
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