共用サーバーと専用サーバー双方のメリットを合わせ持つ VPSの基礎知識
VPS vs. 共用サーバー
ほとんどの中小企業や個人目的の利用においては、比較的廉価な初期費用と維持コストを重視し、ホスティング事業者が提供する共用サーバー(ホスティングサービス)を利用してインターネット上でサービスを提供することが一般的でした。
共用サーバーを利用する目的は主に下記の3点です。
- 共用サーバーは、コストがあまりかからない。
- 共用サーバーは、すぐ使える。
- 共用サーバーは、簡単に使える。
VPSがこれらの目的をどの程度満たすか見ていきましょう。
1. 共用サーバーは、コストがあまりかからない。
共用サーバーはVPS登場以前から月額数百円ないし数千円程度で多くの事業者から提供されていましたが、VPSの普及にあわせて安価な共用サーバーが登場してきており、中には月額100円程度のものまで登場してきています。
引き続きコストを重視する場合は、同程度のスペックでより安価な共用サーバーに移行することで同等の性能・機能を維持したままコストを下げる事が可能になってきています。
もし機能や性能を重視する場合は、VPSに移行することで同程度のコストのまま性能や機能を向上させることが可能になっています。
VPSにすることで、コストはそのままで、性能や機能を上げることができる(VPSにしない場合、同等の安価な共用サーバーに移行することでコストを削減することも可能)。
2. 共用サーバーは、すぐ使える。
共用サーバーもVPSも、クレジットカード払いの場合は申し込みをしてから概ね数分程度で利用可能になります。
ただ、共用サーバーは利用開始後直ちにコンテンツの公開作業に着手できますが、VPSはOSやアプリケーションソフトのインストール、設定を行ってからでないとコンテンツ公開ができないのが一般的です(Web管理画面からアプリケーションソフトのパッケージセットを導入できるVPSサービスもあります)。
サーバーを利用できるようになるまでのリードタイムは差異がない。
コンテンツ公開までのリードタイムは、共用サーバーの方が短い。
3. 共用サーバーは、簡単に使える。
共用サーバーについては、一般的に簡便なWeb管理画面が提供されており、脆弱性への対応や各種ソフトウェアのバージョンアップなどの重要な保守作業についてはサービス提供業者側で行ってくれるなど、利用者にとって敷居が低く、コンテンツ以外の部分について適度に面倒を見てくれるのが一般的です。
しかし、VPSではサーバー管理に最低限必要な管理画面しか用意されていないことも多く、サーバーに関する全てを管理者が面倒見ることになります。
VPSにすると、できる事が増えるが、手間も増える。
以上のように、現在利用している共用サーバーで十分に満足している人には、VPSに移行するメリットはあまりないでしょう。
しかし、VPSには専用サーバーと同様に共用サーバーにはない以下のような大きなアドバンテージがあります。
- できる事の制限が少ない(自由がある)。
- リソースがVPS単位で割り当てられるため、他人の影響を受けにくい。
- 管理者のスキルの成長に伴い、サービスを成長させることができる。
共用サーバーと比較してあまりメリットがない、と即座に検討の対象外にすることなく、常に「VPSも選択肢の一つ」として意識しておくことは、変化の激しいインターネットにおいてコンテンツを効果的に公開していく上では重要になるでしょう。
ただし、「できる事の制限が少ない」代わりに、脆弱性対応など「やらなければいけない」作業も基本的に全て利用者が行う必要があるため、サーバー管理者として適切なスキルと対応が常に求められます。
重大な脆弱性が発見された場合などは、その情報収集と対応についても時間を取られることが避けられません。
適切に管理されていないサーバーは不正アクセスの踏み台として悪用される可能性があり、管理者としての責任が問われることになるからです。
サーバー管理者として自由に振る舞うことができることと引き換えに適切に管理する責任を負うことは意識しておくようにしましょう。
(共用サーバーからVPSへの乗り替え 判断ポイント)
- 管理者(root)権限を適切に管理できるか?
- 自力でサーバーセキュリティを維持できるか?
- 常時サーバーの状態を気にしていることが苦にならないか?
次回は
VPSの機能とVPSを使ったサービスの構成方法について解説していきます。