LinuxCon Japan 2014 -アジア地域最大のLinuxカンファレンス-

2014年5月29日(木)
Think IT編集部

大きなトレンドは3つ

今日の状況に関してゼムリン氏は次の大きな3つのトレンドがあると強調する。

  1. Software Abstraction(ソフトウェアの抽象化)
  2. Dominance of open source(オープンソースの優位性)
  3. Software Talent War(ソフトウェア人材争奪戦)
The Linux Foundationが捉えている3つのトレンド(クリックで拡大)

前述のedXとのコラボレーションにも呼応するが人材問題に関しては「世界はハードの中心の世界から、今ではソフト中心になっている。ハードはコモディティ化し、価値の源泉はいまやソフトに集約されている。しかし、ソフトもオープンソース、フリーソフトによって、コモディティ化しています。それによってより優れた才能を持つ開発者が必要とされている。才能のある人材はプレミアムなので人材不足となっている。 一部の会社が能力の高い開発者を確保するために、他社に引き抜かれないように、談合を組み、反トラスト法(独占、談合を禁止する法律を指す)に抵触するケースも出てきている」と深刻さを分析する。

人材の確保の難しさからトップ開発者のサラリーの高額化を招き、ひいては内部の研究開発費の圧迫にもつながっている。その諸問題を解決する方法について、同氏は外部開発が最適と強調する。トップ10のハイテク企業は数10億ドル規模の研究開発費を費やし内部で行っている。それは将来の製品開発のためであるが、外部開発についても的確にマネージされているとする。
「LFではトップテクノロジー企業に在籍し、フルタイムで外部マネージを行っている人がいる。それらの人は数十億ドル規模の研究開発を企業外でマネージすることにあり、数十億ドル規模の開発を無料のソフトを使って製品サービスの核となる部分を強化している。それは、アップストリームのプロジェクト整合性を以て行われ、コスト削減を実現している」高いテクノロジーを保有する企業の研究開発費は高い額ではあるが、コスト削減の取り組みも行っていると語る。

外部研究開発のススメ

LFのプロジェクトについては「プロジェクトでは常にフレンドリーな関係を築き、かかわる外部のプロジェクトによって企業の価値も生まれる」と語り、未来のメンバー候補に向けて「自社がどの様に外部研究開発をどの様に行っているか再考してみてください。業界の今の動きでは平均的に30%のコードがオープンソースとなっています。将来的にマーケット競争力を待ちたいのであれば80%がコモディティ・オープンソースとなり、残り20%の内部研究開発をより集中して行うことで、競合との差別化を産む部分より強化できるでしょう」と将来的展望も交えて薦めている。

外部研究開発の難しさについては、マネージメントを行う人材がキーとなることを強調しつつも、必要なスキルは「どの様なライセンスが必要なのか?コードをシェアしたいのか?自分達のコードにしたいのか?トレードマークの問題?」など多岐にわたり、難易度が高く、長期的なものであると言う。
新規に外部研究開発を推進する方法については「10年以上にわたり、オープンソースを上手く利用してきた日本企業も多く、その手法に学び、社内でプロセスを作成する」ことを推奨している。そして、会社の中で責任者を指名し、外部研究開発をできる様に育てる取り組みがスタートであると強調した。

OSSでSDN実現を牽引するOpenDaylight

昨年発足したOpenDaylightプロジェクトを代表してニーラ・ジャック氏が登壇した。発足から1年ほど経ち、現在では現在180名の開発者が在籍している。

OpenDaylightの発足の背景について「エンドユーザーはコンピューティング、ストレージングでも自動化を求めており、大きな意味で達成されているが、ネットワーキングではまだ人手を要し、自動化が進んでいない」と語り、実際にSDNを適応させている例は少ない現状についてはオーバレイネットワークやホワイトボックススイッチ、プロトコル、コントローラへのノースバウンドAPI等々の議論が多く、その現状においてユーザーは「傍観者的な立場」を取っている様子を「どの"勝ち馬"に賭けるか」と、競馬に例えて指摘する。

同プロジェクトでは主にSDNコントローラに取り組んでいるが、NFV(Network Function Virtualization)も扱っている。SDNのサポートとNFVのサポートという2つの目的に向かってプロジェクトを実行させている。
実行方法についてはLinux同様に全体を包括するサイズ感・多様性が重視されている。何よりも皆が望んでいるのは共通のプラットフォームでもあることをモットーとしていると語った。

SDNプラットフォームが成功するための要素には、エンドユーザーの持っているすべての環境・プロトコルに対応し、多くのテクノロジーをサポートしなければならないと強調する。そのために、本年2月リリースされた「Hydrogen」ではService Abstraction Layer(SAL)を作ることを設定し、抽象化を行った。これにより、ケーブルネットワークをOpenDaylightコントローラでマネージすることを実現している。

OpenDaylightプロジェクトを代表して登壇したニーラ・ジャック氏(クリックで拡大)

OpenDaylightの将来性についてジャック氏は「将来のネットワークはどの様になるかは様々な議論がある、オーバーレイネットワーク、ホワイトボックス、Openflowなど多くの要素が絡んでいる。OpenDaylightにおいてはSALがあるのでエンドユーザーが活用すれば実際に様々な経験をすることができる」とメリット強調し、OpenDaylightを面白いと感じて単に傍観するのではなく、様々な立場ので参加方法があるんので是非参加してもらいたいと訴求する。そして「日本からの参加も期待している」と締めくくった。

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