「ソースオープン」から「オープンソース」へ… Go Azure 2015でマイクロソフトが見せた本気
パートナー重視は変わらず
次に登壇したのは日本マイクロソフト株式会社でマイクロソフトテクノロジーセンターのセンター長、澤円(さわ まどか)氏だ。澤氏は企業向けのメッセージとしてAzureのデータセンターの拡充を訴え、これまでに19のリージョンが稼働していること、企業ユーザーはハイブリッドクラウドを求めていることなどをリサーチのデータなどを元に紹介した。
ここでもマイクロソフトはこれまでの資産を尊重した上で、企業が求める信頼性と規模をパブリッククラウド、さらにHyper-Vによる仮想化によって実現しようとしている意志を感じることが出来た。
澤氏はインターネットイニシアチブ、エクイニクスジャパン両社のゲストを招き、Azureと連携したサービスを紹介しながら、企業ユーザーにとってのパブリッククラウドサービス利用を促進するキャンペーンを始めたことなどを説明した。マイクロソフトのエンタープライズビジネスを支えるパートナーを立てることで、これまで通りパートナー中心のビジネスを展開するというメッセージであったように思える。
「ググる」じゃなくて「Bingる!」
キーノートセッションの終了後、午後はJAZUGのメンバーによるAzureの基礎的なセッション「機能で語るよ!Azureアレコレ基礎」に参加した。このカジュアルなタイトルが示すように、カジュアルな掛け合いトークでAzureの機能の初歩的な内容で説明するセッションであった。
NTTデータの女性SEと富士通ラーニングメディアの女性SEが掛け合いでAzureを解説するのだが、通常であればインターネットで検索することを「ググる」と言うところをマイクロソフトのサービスに言い換え、ワザと「詳しいことはBingってね!」と言い換えていたのが印象的だった。
次に3つのセッションについて簡単に紹介しよう。
最初はCapyの富樫英雅氏。CapyはCAPCHAに替わる新しい画像による認証システムを開発しているベンチャー企業で、今回、富樫氏が語ったのはIoTなどから出てくる大量なデータを解析するためのAzure上のソリューションであるStream Analyticsについて。ビッグデータの分析、解析ではバッチ処理のHadoopが今でもメインだが、これからはストリーム処理によるリアルタイム分析が求められてくると説明し、AzureのEvent HubとStream Analyticsの組み合わせで利用できる分析は簡易に始められることが魅力であると解説した。
その上で、質疑応答ではGoogleのBig Queryとの比較に対して、今はまだPreview版なので直接比較は難しいとは断りながらも、比較検討を行う対象としてはかなり有望なのではないかと答えた。
次のセッション「Azure MLで機械学習をやってみよう」では、機械学習のサービスについてオークファンサービスの基礎技術部部長の得上竜一氏が解説。オークションの過去のデータをサンプルに、機械学習によって売り上げの予測が上手く行えることをデモで紹介した。
マイクロソフトの製品で言えば、Visioのようにコンポーネントをマウスで線を引くように接続し、データと処理の流れをプログラムするだけで簡単に機械学習のモデリングとアプリケーションが開発できる様は、これまでデスクトップアプリを開発してきたマイクロソフトの強みが出ていると思われる。さらに得上氏は今から機械学習を始めるならマイクロソフトのAzure MLが最適と解説した。講演後も参加者からの名刺交換と質疑応答に列が出来るほど参加者の興味は高かったようだ。
最後に紹介するのは、.NETのマルチプラットフォーム化を実現しているMono及びXamarinのエンジニア、榎本温氏が登壇した「オープンソース.NETとMono、Xamarinの今後について」と題されたセッション。Monoは.NETフレームワークを独自にマルチプラットフォーム化したオープンソースのプロジェクトで、XamarinはMicrosoft Visual Studioと統合する開発プラットフォームでありiPhoneやAndroidの開発を行うことが可能な、いわゆるクロス開発ツールである。Xamarinは製品名であり、また開発を行っている米国企業の名前でもある。
このセッションでは、現状の.NETフレームワークのオープンソース化の状況や、Mono、Xamarinの開発状況などが解説された。このセッションの要点はマイクロソフトの言う“.NETのオープンソース化は具体的にはどうなっているのか?”についてMonoを開発している第3者が俯瞰するということだ。
つまり冒頭のハンセルマン氏の講演でも語られた『オープンソース』ではなく『ソース、オープン』のような不十分だった頃に比べ、現状ではまだ完全ではないがかなり本格的なオープンソースになってきていると解説した。これらのメッセージも最終的には企業ユーザーにとっての「マイクロソフトは真剣にオープンソースにコミットしていますよ」という意図を第三者に語らせたかったということの表れなのかもしれない。
最後の懇親会ではスコット・ハンセルマン氏にバースディプレゼントが贈られたり、ケーキが出されたり、最近入社した日本マイクロソフト社員やパートナーの自己紹介、バンド演奏等々、あくまでもコミュニティとの和気あいあいのイベントであることを演出していたが、マイクロソフトのAzureとオープンソースにかける意気込みは企業ユーザーにとって強く伝わったのではないかと思わされる一日であった。
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