メルカリファンド等から4億円調達したジラフに、優秀な人材と未経験者が集まる理由|株式会社ジラフ麻生氏・佐々木氏
月間140万人以上が利用する買取価格比較サイト「ヒカカク!」や、修理料金比較サイト「最安修理ドットコム」を運営し、2017年11月にグリー・メルカリファンド等から4億円調達を発表した株式会社ジラフの麻生(代表取締役社長)佐々木氏(執行役員・ポケラボ創業者)に、事業や採用のポイントついてお話をお伺いしました。2017年10月に、新たにリリースした検品済携帯のフリマサイト「スマホのマーケット」が生まれた背景と今後についてもお話いただいています。
自分自身の困った原体験から生まれたサービス「ヒカカク!」
――株式会社ジラフについて教えてください。
株式会社ジラフは、インターネットでリユースのマーケットプレイスやメディアを運営している会社です。買取価格比較の「ヒカカク!」と、修理料金比較サイトの「最安修理ドットコム」、2017年10月から新しく「スマホのマーケット」というスマートフォンのフリマのサービスを始めていす。今は40名くらいの会社です。
――麻生さんは学生のときにジラフを創業されたんですよね。キッカケは何だったのですか。
元々中学生のときにコミュニティサイトを運営していて、それから起業したいとずっと思っていたんです。大学生の頃に自分でサービスを自分で作ってそれを法人化したというのが、きっかけです。
麻生輝明氏(株式会社ジラフ代表取締役社長)
――最初に作ったサービスが「ヒカカク!」ですよね。このサービスのアイデアに至ったきっかけはなんだったのですか。
僕自身がiPadを売りたいなと思ったことがあって、ヤフオクは面倒くさくてBOOKOFFやゲオみたいな中古品買い取りのお店で売ることを考えたんですけど、どこで売ればわからなくて、じゃあそれがわかるサービスってないのかなと思って作ったのが始まりです。
――ご自身の困った原体験があったんですね。当時新卒として内定されていた企業もあったとのことですが、起業家として歩む決断をしたポイントはあるのでしょうか。
大きかったのが、投資が決まったんですよね。また、他の人とお話をするなかでもこの事業は可能性があると評価を貰っていました。でも、自分の中の「やってみたい」という気持ちが強かったというのが一番大きいですね。
――そのときは会社は何名ぐらいだったのでしょうか。
まだ5名くらいで、当時はまだ全員学生でしたね。
いい人がいい人を呼ぶ流れができ、半数が社員の紹介で入社
――人を採用をする際には、どういったところを見ていますか。
一番は、考え方が柔軟な方ですね。あとは、経験に縛られない方。うちの特徴として、社員が友人を連れてくることが多いですね。なので、スタートアップの会社に入りたい人ではく、スタートアップを知らない状態の人がうちだけを知って入社するケースが多くて、他のスタートアップと人材の取り合いになることは少ないですね。半分以上は紹介で入社していますね。
――半分以上が紹介での入社ってすごいですね。社員紹介については、社内で積極的に取り組んでいる仕組みや制度があるのでしょうか。
今のところ特にはなくて。社内に呼びかけはしていますけど、ほぼ自主的にやってくれています。わりと僕はまめなので、面談からの採用率は凄く高いと思います。紹介されたら、真剣に考えますし口説きますね。あとは、待遇についてもエージェントを使っていないので、その部分をお給料に転換してできます。条件勝負になったときに、別に他の会社に負けるというわけではないですね。あと、いい人が採用できているので「一緒に働きたい」という方がまた入ってきて、といういい流れができてきてます。
未経験からエンジニアを採用、育成できる仕組みができてきた
――エンジニアを未経験からも採用されているとお伺いしました。育成で取り組まれていることはありますか。
1on1と勉強会をやっていますが、メインは実践ですね。1on1は事業部長と各メンバーでしています。勉強会は部署ごとに自発的に実施しているもので、エンジニアだと今は設計の勉強をしています。実践だと、未経験から入社される方には、実際にすぐにコードを書いてもらうようにしていて、それに対してコードレビューをしっかりやっていますね。座学で学ぶのも、もちろんいいんですけど、そうすると勉強だけに集中してしまう方もいらっしゃって、それはあまりおすすめしないです。今活躍しているメンバーを見ていると、実践を多く積むほうが成長は早いと感じますね。
――未経験からでもエンジニアとして成長できる体制があるんですね。成長されている方の共通点はどんな点でしょうか。
ポイントして、理解力や考える能力が高い人というのはありますね。あとは、他の業務で成果を出している人。それと、開発者としてやっていきたいという気持ちが強いかの3つですね。よくあるのが、起業のプロセスとしてプログラミングをしたいっていうケースですね。そういった方は、長期的に見て上手くいかないかなという実感があります。やっぱり、エンジニアは勉強し続けるものだと思うので、そういう覚悟がないと例えキャッチアップが早かったとしても、いずれ成長が止まってしまうと思うんです。
既存事業の強みを活かしたCtoCサービス「スマホのマーケット」
――2017年10月に新サービスの「スマホのマーケット」をリリースされましたね。ユーザーの反応はいかがですか。
反応はありましたが、使われている状況を見るとまだまだこれからだなと思っています。一方でサービス内容に対する反応は良くて、たくさんの方から興味を持っていただけていますね。海外でも類似モデルのサービスがあるので、事業領域としてのチャンスは十分にあると思っていて、僕ら自身これをやるべきというのは凄く納得できています。
――「スマホのマーケット」をはじめたキッカケは、「ヒカカク!」スマホ買い取りの比較が多かったからでしょうか。
そうですね。スマホの買い取りの依頼が「ヒカカク!」で多かったというのと、あと、僕らのなかで「次は販売やりたいよね」というのがありました。世の中的にも、C to Cビジネスがやりやすい状態になっている。「じゃあ、どの商材なのか?」と考えたときに、利用頻度や価格を考慮し商材を模索していたんですけど、スマートフォンならハードウェアの売買だけじゃなくてソフトウェアの保証や通信契約など付帯するものもあるので、それらをセットで売る仕組みが作れるんじゃないかと思いました。C to Cを始めるときの難しさって、出品者を集めるところが一番大きいと思うんですけど、僕らの場合そこはもう既にある状態なので事業としてスタートしましたね。
「地に足を着いた」から「羽ばたく」事業展開へ
――スタートアップ界隈の中でも、地に足の着いたビジネス展開をされている印象があります。
「地に足の着いたことをやろう」ということを、強く目指しているわけではなくて、結果的にそういうモデルになったという感じです。ただ、自分としてどういう経営者になっていきたいかということを考える時に、理想とのギャップもちょっとあって。事業を選定するときに、時代のトレンドを掴んでいち早く参入していろいろリソースを突っ込んでやっていくというのがあると思うんですけど、僕自身が事業選定のときにそういったトレンドを強く意識してこなかったんですね。僕にとって、そういった決断はスッと出てくるものではなかったんです。でも一方で、そういう勇気をもってやるべきだと思っている自分もいて、色々日々考えながらやっています。ただ、今はしっかりと立ち上がっている事業があるので、そこを一番大事に考えていきたいと思っています。
――起業家として新しい領域を気にしながらも、まずは今の事業を伸ばしていくということでしょうか。
そうですね。ただ、今回新しく出した「スマホのマーケット」は、C to Cサービスなので認知が重要だと思っています。スマホはみんな持っているものじゃないですか。そこにどうやって中古のスマートフォンやSIMフリー、MVNOが広がっていけるかを常に考えています。SEOなど、やるべきことをしっかりやり続けるともはもちろん重要なんですけど、認知を獲得するためにしっかり投資もして羽ばたかせたい事業ではあります。今、優秀な人材が入ってきているので、既存事業は既存事業で伸ばしていきながら新しいことにも挑戦できる体制になっています。(※2017年11月2日にアイ・マーキュリーキャピタル、グリー、メルカリファンド等から総額4億円を資金調達を発表)
エンジニア採用「経験者」と「未経験者」で面接担当を変更
――佐々木さんのご経歴についても教えてください。
新卒でNTTコムウェアという会社に入社し、2年間SEをやった後ポケラボという会社を創業しました。その後、会社を売却し今はジラフに出資兼ジョインして一緒にやっています。
佐々木俊介氏(ポケラボ創業者・株式会社ジラフ執行役員)
――エンジニア採用は、経験者をCTOの岡本さんが、未経験者を佐々木さんが面接されているんですよね。どうしてそのように分けていらっしゃるのですか。
経験者は、やっぱり実力重視で即戦力として活躍できる方かどうかを見る必要があると思うんですけど、未経験の方の場合は、CTOの岡本が面接すると育てる大変さがどうしても判断基準に入ってきてしまう。ただ、ポテンシャルのある方を採用して育てていきたいというのがうちの方針としてあるので、そこは一旦完全に技術面で目をつぶれる私が人柄を見て面接しています。
未経験からエンジニアを育てる勘所がつかめてきた
――未経験者でエンジニアを採用するに至った背景をお伺いしてもよろしいでしょうか。
これまでにエンジニアで未経験から3名エンジニアになっている実績があるんですね。そのメンバーがしっかり成長しているので、未経験の方の採用を増やすことにしました。最初は、ジョブローテーションで未経験の状態から開発を覚えてエンジニアになった方が1名いて実績があったので、未経験の方も採用しやすかったんです。あと、うちはソースレビューをちゃんとやっているのと、タスクが結構あって小さい業務からはじめて勉強できる環境なのでやりやすいと思います。あと、未経験から3名のエンジニアが成長する過程で、僕らがどうコーチングしたらいいかという勘所がつかめてきたというところですね。
――既に未経験から採用された方はどのような方々なのでしょうか。
ひとりは、エンジニアとしてインターンで採用しました。彼は多分サーバサイドで今一番速くコーディングができるようになっています。あとは、元々「ヒカカク!」の運営メンバーで業者様の対応業務をしていたんですけど、自分で対応するよりもプログラムで動かした方が速いと気付き、自主的に勉強を始めていましたね。結果的には、もう完全エンジニアに転身しています。
――社内でのジョブチェンジは多いのでしょうか。
増やすようにしています。特に若手のメンバーだと、新しいことにチャレンジしたい気持ちがあると思うんですよ。営業で入ったけど、事業企画をやってみたいとか。エンジニアに限らず、そういった機会を創っています。
――それは、立候補できる制度のようなものがあったりするのですか。
特に制度としてはないんですが、部長との1on1を月に1回、少なくとも2ヶ月に1回はやるようにしてるんです。その中で意見を聞き、なるべくチャレンジできる仕事を任せるようにしています。スタートアップで働くなかで、挑戦や成長の機会を求めているメンバーもいるので、そういう機会は創っていきたいと思ってます。
何かを成し遂げた経験で「努力できる人」かどうかをみる
――今回未経験のエンジニアを募集されて、反響ありましたか?
そうですね、結構応募はきています。
――佐々木さんが採用をする際に、どういったところを見て適正を判断されていますか。
ゼロから何かを成し遂げたことがある、根詰めて達成した経験があるかというのは大きいと思っています。未経験からエンジニアになるのって簡単なことではないと思うんですけど、これまでの人生で努力した経験のある方なら、そういった努力もできると思ってます。
例えば、社内で未経験からエンジニアになったメンバーのひとりはラグビーをやっていたんですけど、元々は小さいチームから、ルールを勉強し自分でチームを組成して勝てるチームまで成長させたとか。もうひとりは、陸上をずっとやってて、県大会に出場して活躍してたり。あとは、東大への合格までのマイルストーンを置いて勉強して合格を成し遂げたとか。そういう、努力ができる人かどうかっていうのは見てますね。
――入社してエンジニアとして活躍されている方々の中で共通していることを教えてください。
どこの会社でも同じだ思うんですけど、エンジニアってずっと勉強し続けなければいけないので、そこをちゃんと理解して勉強を継続しているというのは重要だと思いますね。あとはうちは、エンジニアのみんなが仲がいいとと思っています。チームの人数が増えてくると、経験が足りない方がいたときに和が乱れてしまうというか、ついていけなくなる雰囲気になることもあると思うんですね。ただ、うちはそういうのが一切なくて助け合ってますね。未経験の方も、分からないことを積極的に聞きやすい環境だと思うんです。そういう点では、コミュニケーション能力が高く一緒に問題解決ができる方は非常にいいなと思いますね。誰かが詰まっていても、率先して助けられたりとか。相互レビューもしているのですが、そういうことが自主的にできる方は活躍しています。
――TechAcademyマガジンを読んでいる方のなかには今プログラミングを学んでいる方も多いと思います。スクールや独学で努力してきた方は採用対象になりますか。
はい、対象になります。もちろん、完全に未経験の方もいらっしゃるんですけれど、自分で一度勉強に取り組んで来た方は、知識もそうですし熱意がありますよね。自分で、時間でもお金でもどちらでもいいんですけど、自分の何かを投資して勉強されている方は姿勢としてとてもいいなと思います。
インタビュアー:新嘉喜りん(キラメックス株式会社 広報)
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