ユーザビリティ向上はプロセスが大事!
Webサイト制作者にとっては大変
この連載を執筆する上で、実は大変迷ったことがあります。デザイナーやプログラマーなどのWebサイト制作者の方に見ていただけるのであれば、現場レベルで使えるTIPSなどで自分が提供できるものを紹介した方が良いのではないかと思いました。しかし、基礎的な部分を除いて本質的にユーザビリティを考えれば、実際のユーザーしか答えを持っていないのです。そこで、アウトプットについてではなくユーザビリティ調査やユーザー中心設計のプロセスについて紹介させていただこうと思いました。
ユーザーを中心に据え、Webサイトを構築するということは、実際には非常に労力がかかります。ユーザーの利用状況は変化し、チェックして改善してもまた違った問題が明らかになり修正する必要が出てきます。特に実際に構築を行うデザイナーやプログラマーにとっては非常に大変です。自身が時間をかけて作成したものに対していろいろと問題を指摘され、修正を繰り返すことになります。
しかし、私たちが設計・構築しているのはWebサイトではなく、「ユーザーの経験=ユーザーエクスペリエンス」です。そのためには、やはり設計段階からユーザーに参加してもらう必要があるのです。
ユーザビリティに近道はない
これまでいろいろとユーザビリティについて説明してきましたが、ぜひご自身がかかわっているWebサイトにてユーザビリティ調査をやってみてください。
仮説を持ち、ユーザーにWebサイトをさわってみてもらってください。きっと問題点が出てきます。しかし問題点が出てくることは、実は大きな前進です。仮説なしには問題すら生まれないのです。「あるべき姿と現状とのギャップ」が「問題」です。この問題の原因が明らかになれば、それは解決可能な課題になります。われわれWeb制作者は、それを解決するための具体的な設計をしていくのです。
大切なことは、考えることをやめずにプロセスを回していくことです。ISO13407ではユーザビリティ調査を行う施設の整備、そのための部署や人員の配置、教育の実施なども求めています。これは、ユーザー中心設計において調査からのフィードバックを循環して何度も修正を行うことの重要性を示しています。
本質的にユーザビリティを考えれば、そこに近道はありません。生活者のライフスタイルは多様化し、Webサイトの利用目的や利用状況も大きく変容します。Webの技術やサービスもさまざまなものが日々生み出されています。あなたのかかわるWebサイトは常にほかのWebサイトと同じ画面上にて比較されています。そのような状況の中で「常に正しいユーザビリティ」などあり得ないのではないかと筆者は思います。
だからこそ、アウトプットされたWebサイトのユーザビリティに関するTIPSではなく、ユーザー中心設計のプロセスそのものを重要視し、現時点・現ユーザーにとって「最適なユーザビリティとは何か?」をユーザーエクスペリエンスの設計・構築という観点から考え続けることが重要なのだと筆者は考えています。