ビジネス系フリーランスになるために、会社員時代からやっておきたい「10」のこと
はじめに
広報、人事、マーケティング等のビジネス系職種でフリーランスになる人は、会社員時代の経験をもとに転身するケースが大半です。では、ビジネス系フリーランスとして活躍するためには、会社員時代に何をしておくべきでしょうか。
その前に、フリーランスになる……と言っても、せっかくなるのであれば「活躍する」「企業から必要とされる」、そんなフリーランスになりたくはありませんか。
高い専門性と企業と対等な関係を持つ
「変革型フリーランス」とは
筆者が共同代表を務める株式会社Waris(ワリス)はビジネス系フリーランスと企業をマッチングしているのですが、「高い専門性を持ち、取引先企業と対等な関係を通じて企業の組織変革やイノベーション創出の触媒としての役割を担うフリーランス」を「変革型フリーランス」と定義しています。
変革型フリーランスとはどのような人たちで、どうやったらなれるのか。Warisではその調査分析も行っています(調査結果の詳細はコチラをご覧ください)。
変革型フリーランスには、以下の5つの特徴があります。
①高額な時間単価を獲得している(中央値3000円)
②月160時間以内の稼働時間でリモートワークを活用している
③「フリーランスになったことに満足」しており、将来もフリーランスもしくは経営者として働きたいと思っている
④会社員としての経験が10年以上ある
⑤多くが企画、マネジメント型の業務に従事している
そして、変革型フリーランスには共通して3つの資産があります。
1)明確なビジョン・モチベーション
(なぜフリーランス?なぜその仕事?)
2)確固たるヒューマン・キャピタル
(仕事完遂能力、課題ヒアリング力等)
3)質の高いソーシャル・キャピタル
(仕事が循環するネットワークや仕事を超えてつながるような多様なネットワークを保有)
筆者たちが行ったインタビュー調査から、変革型フリーランスは上記3つの資産をバランスよく持っていることがわかりました(図1。筆者たちは「成長のトライアングルモデル」と呼んでいます)。
「どのような仕事をしていきたいのか」というビジョンを原動力に更なるスキルアップに努め、自身のビジョンが新たなネットワーク形成につながるなど、成長のトライアングルモデルの 3つの柱は相互に良い影響を与え、作用し合いながら成長していくのです。
では、これらを前提に、ビジネス系職種で変革型フリーランスとして活躍するために会社員時代に心がけておきたいことを挙げていきましょう。
1:自分の「コア」を見極める
まず、自分の「コア」となるスキルや経験を意識しながらキャリア構築を考えましょう。前述したように、変革型フリーランスとして活躍している人たちは10年以上の会社員経験を有している人が中心です。会社員として働く以上、基本的に異動や転勤等のキャリア構築にあたっての主導権は会社が握っています。しかし、すべてを会社に預けるのではなく、社員でも戦略的に自らのキャリアを切り拓く姿勢を大切にしてください。その際に意識したいのが自分にとってのコアとなるスキル・経験です。
例えば、医療機器メーカーに入社して最初は法人営業を担当し、そのうち人事部で採用を担当するようになった人がいるとします。その場合、「営業」と「人事」どちらを自分のコアにしていきたいのかを意識しながら次の一手を打ちます。もし人事のほうを自身のコアにしたいのであれば、現在担当している採用の実務だけでなく、採用計画の立案部分にも関わりたいと上司に話すなどしてコアを強化していきます。
2:キャリアをタテ・ヨコ両方から深掘り展開する
自分のコアを見極めたら、次はそのコアとなるスキル・経験をタテ・ヨコ双方から深掘り展開してみてください。タテというのは、その職種の業務プロセスの中でより広い範囲を経験してみる、ということです。
例えば「マーケティング」と一口に言っても商品・サービスを立案するにあたっての市場調査、調査データの集計・分析、新商品・サービスのコンセプト設計、仕様設計、プロモーション等さまざまな仕事があります。
主にリサーチャーとして市場調査や調査データの集計・分析をすることが多かったという人は、調査設計や商品・サービスのプランニング等の企画業務を経験することをおすすめします。
実際に変革型フリーランスとして活躍する人たちは企画やマネジメント業務に従事する人たちが中心です。一方で、マーケティング領域で経験を積んできた人が、できあがった商品・サービスの認知を広めるために商品PRや社外広報の仕事を経験してみるのも一案です。
こうしてコアとなるスキル・経験を中心にタテ・ヨコ双方向にキャリアを深めることで、自分ならではのオリジナルキャリアが創られ、フリーランスになった際にクライアントから見たときのあなた自身の魅力につながります。
3:仕事の「再現性」を手に入れる
クライアント企業によって同じマーケティングの仕事でも、求める内容やゴールは異なります。フリーランスはそれぞれのクライアントのニーズを的確にくみ取り、アウトプットを安定的に出すことが求められます。つまり仕事の「再現性」が求められるわけです。
複数企業での勤務を経てフリーランスになった人材は、この再現性が高いように感じます。特に大企業だけでなく、中小・ベンチャー企業での経験も持つ人はコアスキルだけでなく、混沌とした状況の中でも成果を挙げる「馬力」のようなものを感じさせます。
最近は多くの企業で副業・兼業解禁の動きが出てきているので、会社に勤めながらでも副業・兼業で自らの腕試しをしやすくなりましたね。もちろん、報酬をもらう形ではなくプロボノ(仕事で培ったスキルや経験を活かしてボランティアとして社会貢献すること)としてNGO・NPO等で自身のスキルを発揮するのも良いと思います。いずれにしても、同一の環境だけでなく多様なシチュエーションで自身のスキル・経験を活かす経験を積み、仕事の再現性を獲得していきましょう。
4:タイムマネジメントを意識する
フリーランスという働き方の特徴の一つは、働く時間・場所の自由度が高いことです。ビジネス系フリーランスも同様に、打ち合わせや会議があるときはクライアント先に出社しますが、それ以外はリモートワークという働き方が一般的です。そうした自由さの中で成果を出していくには自身を律し、しっかりと時間管理を行うスキルが求められます。納期や業務ボリュームが異なる複数案件を同時に担当することもあるからです。
将来的にビジネス系フリーランスとして働くことを考えている方は、ぜひ会社員時代からタイムマネジメントを意識した生活を送ることをおすすめします。納期や締め切りを守ることはもちろん、毎日残業が当たり前という人は週1回でも残業なしで退社する日を作ってみるのも良いですね。
5:プラスアルファの提案・改善を大切にする
変革型フリーランスとして活躍するためには、仕事完遂能力や課題ヒアリング力等の確固としたヒューマン・キャピタルが必要という話をしました。これらは会社員時代から日ごろの業務を通じて磨かれるものです。
例えば、何か完成物を上司に提出する際に「もう一工夫できないか?」「もうひとひねりできないか?」と常に考えてみる。上司からのダメ出しに「どうしたらもっと良くなるか?」と考えてみる。ちょっとしたことですが、そうした会社員時代の日ごろの心がけがフリーランスとしてのヒューマン・キャピタルの醸成につながっていきます。
6:人との「つながり力」を最大化する
変革型フリーランスは質の高いソーシャル・キャピタルを保有しています。ソーシャル・キャピタルには様々な定義がありますが、ここでは人と人との関係性と定義します。こうした人的つながりを会社員時代から構築することは十分可能です。
「フリーランス実態調査 2018」(ランサーズ株式会社)によれば、仕事を獲得するルートは知人の紹介を含む人脈と回答するフリーランスが約6割で最も多いのです。
変革型フリーランスも、情報交換したり、仕事が循環したりするような多様なネットワークを保有しているのが特徴です。
会社員時代からこうした多様な人とのつながりを意識することは非常に重要です。勉強会や交流会へ参加したり、趣味・ボランティア等を通じて行動量を増やしたり、多様なネットワークに触れてみてはいかがでしょうか。
7:日々の「発信」を習慣にする
多くのフリーランスが人を介して仕事を獲得している実情はお伝えした通りです。フリーランスは周囲に自分が得意なことやできること、興味・関心を知ってもらうことが仕事につながっていきます。
現代ではSNSをはじめさまざまなツールがあり、発信することはとても身近になってきています。ぜひ会社員時代から習慣化し、人とのつながりを育む力に変えていくと良いでしょう。自分のキャリアやコアとなる経験と絡めて会社員時代から発信を意識してみましょう。
8:「サバイバル資金」を見極め、貯める
フリーランスになるか迷う人にとって、一番のネックになるのが「お金」です。実際、前述のフリーランス実態調査によれば、自由な働き方の障壁として「収入の不安定さ」を挙げるフリーランスが45%で最も多いのです。
筆者たちがフリーランス希望の人たちにおすすめしているのは、まず自分が1カ月にいくら必要なのか「サバイバル資金」を見極めること。この金額が20万円という人もいれば30万円という人もいます。シングルか既婚か、子どもの有無によっても変わってくるでしょう。
フリーランスになってすぐに仕事が入ってくるとも限りません。会社員時代のうちに、仮に半年~1年程度発注がなくても生活に支障がない程度にはお金を貯めておいたほうが不安になりにくいと思います。ちなみに、フリーランスになって最初の年は前年の収入に応じて住民税を支払わなければいけませんので、その際の出費金額の大きさに驚いたという声も多いですね。
9:明確なビジョンを持つ
変革型フリーランスは明確なビジョン・モチベーションを持っているとお話ししました。Warisで実施した別の調査によれば、「幸福度が高くフリーランスとして活躍している人は、明確なビジョンを持っている」という結果も出ています。
つまり、何となくフリーランスになっても活躍はしにくいですし、幸福度も高くはなりにくい。なぜならフリーランスという働き方は自由度が高い分、自律性や自己責任も伴うため、決してすべての人に向くとは言えないからです。
会社員時代から「自分はどうなりたいか? どうありたいか?」「どういう仕事をしたいか?」等のビジョン・モチベーションを意識しながら仕事に臨む姿勢を身に着けたいですね。
10:計画を練って円満に卒業する
先のフリーランス実態調査によれば、過去・現在の取引先から仕事をもらっている人は約2割にのぼります。会社員を経てフリーランスになる場合、勤めていた会社から業務を請け負う形でフリーランス生活をスタートできると、収入の安定という側面からも理想的です。
会社の就業規則では1~2か月前に申し出れば退職手続きには問題ないケースが一般的ですが、できるだけ円満に「卒業」できるように余裕を見て3カ月~半年くらい前から上司に話をし始めることをおすすめします。退職時の面談で、退職後も業務委託という形で一部業務を継続させてもらえないか交渉しても良いと思います。
* * *
これまでたくさんのフリーランスの方と接してきましたが、フリーランスに向く人、向かない人がいることは事実です。すべての人がフリーランスになるべきとも思っていませんが、スキル・経験を活かして自由度高く能力発揮できるフリーランスは大変魅力的な働き方です。フリーランスとして求められることを正しく理解したうえで、チャレンジする方の参考となればうれしいです。
また、実は会社員からフリーランスになった人が再び会社員に戻る「逆流パターン」も生まれつつあります。会社員をしながらフリーランスとして業務を請け負う人も増えてきています。こうしたキャリアの「ボーダーレス化」がすすんでいるのが今という時代です。フリーランスになりたい方はもちろん、そうでない方も今回で解説したような自分で自分のキャリアを切り拓く感覚を大事にしていただきたいと思います。
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