信頼をスケールさせるDevRelの仕事 DevRelCon Tokyo 2018開催
7月15日に、DevRel(開発者マーケティング)に関するカンファレンス「DevRelCon Tokyo 2018」が開催された。
ここでは前回の記事に続き、4つの基調講演から、IBMの大西彰氏とGitHubのDon Goodman-Wilson氏による講演をそれぞれレポートする。
新規プロジェクトの苦労とそれに耐える回復力
IBMの大西彰氏は、「Envisioning the future with resilience from unknown to great achievement」と題し、「世界初」の新規プロジェクトを進めるときの苦労、特にコミュニケーションについて、IBMや前職のMicrosoftでの経験をまじえて語った。
想定される場面は、新興技術のプロジェクトに任命されたときだ。世界を変える機会でもあるが、失敗するかもしれない。サンプルコードも事例もない。「夢を追いつつ精力的であることが求められる」と大西氏は言う。
まずはリリース日や、どんな技術を使うか、パートナーは誰か、といったゴールを設定する。この段階ではきちんとした計画を作るのではなく、まだアイデアの段階だ。「これは想像するだけでリスクがないので、簡単だ」と大西氏は語る。
続いてパートナーを探す。「これは重大なプロセス」と大西氏。開発やマーケティングのチーム、内部のエキスパート、外部のビジネスパートナーなどを集める。
このとき「あなたは孤独ではないが、プロジェクトのさまざまなことを管理する必要がある」と語る。新しい技術を、サンプルコードやドキュメントなしで使えるようにしなくてはならない。「クレイジーな状況だが、王道はない。回復力(resilience)のためにはトライアル&エラーが必要となる」(大西氏)。
「世界初」を狙う場合、プロジェクトはトップシークレットになる。そのためには、まず自分自身が秘密を守れなければならない。さらに外部とNDAを結ぶ場合は、「コアメンバーは、会社の側に立って、フェイス・トゥ・フェイスで会話し、忍者のように行動することが求められる」と大西氏は説明した。
NDAを結ぶ場合以外でも、たとえば米国本社と現場の間で調整役になることが求められる。「現場で言ったことと、それを本社に伝えることは、同じ言葉ではなくてフィルターする必要がある。その逆も同じ」と大西氏は語る。たとえばネガティブな反応や、事情の違いによる言葉などをダイレクトに返すと、破綻してしまうという。
また時間(時差)の管理もある。大西氏の経験では、2015年のプロジェクトでは夜中に2時間ごとに起き、メールをチェックして返事していて大変だったという。
変更管理についても回復力が必要だと説明された。良い話と悪い話がミーティングや変更ごとに起こり、バックアッププランもロールバックプランもない、そこでテストに多くの時間を使うという。
最後にリリースに向けて。「心身の健康が重要だ。最後の3~5日はとてもとても大変なので」と大西氏は語る。ここでは、処理すべきタスクの管理を負担の軽い方法でする必要がある。「おすすめは、残りの項目と完了した項目をコアメンバーにメールすること」(大西氏)。
こうしてリリース日がやってくる。この段階ではもはやできることはなく、様子を見ているだけだ。そしてプロジェクトが成功すれば、忍者ではなく日常の役割に戻る。
まとめとして大西氏は「1つ1つは難しくないが、回復力が重要」という点を強調した。