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連載 [第8回] :
  月刊Linux Foundationウォッチ

再注目されているHyperledgerをテーマに、Linux Foundationが「Hyperledger Tokyo Meetup」をオンライン開催【前編】

2021年5月28日(金)
吉田 行男

こんにちは、吉田です。今回から2回にわたって、5月12日(水)にオンライン開催された「Hyperledger Tokyo Meetup」について、その内容を紹介していきます。

「Hyperledgerプロジェクト」とは

Meetupのレポートをする前に「Hyperledgerプロジェクト」について、もう少し詳しく紹介したいと思います。2015年12月17日、米国のThe Linux Foundation(以下、LF)はブロックチェーン技術の普及に向けて、新たな共同研究プロジェクトである「Hyperledgerプロジェクト」を発表しました。

このプロジェクトは、さまざまな業種におけるブロックチェーン技術の高度化を進めるオープンソースプロジェクトです。参加企業は250を超え、米IBM、米Intel、米Accenture、日立製作所、富士通などのIT企業だけではなく、米JPMorganや米CMEグループなどの金融機関、仏エアバス社や独ダイムラー社などの製造業など、幅広い分野から参画しています。

また、このプロジェクトでは、ビジネスユースのブロックチェーン技術を用いたシステム構築を目的として、オープンソースによる分散元帳フレームワークの開発や実証実験などのさまざまなアプローチをしています。下記の6種類のフレームワークと4種類の基盤/サービス開発用の部品、5種類のブロックチェーン基盤を使うためのツール、業界限定のプロジェクトおよびプロジェクト化前の「Hyperledger Labs」と呼ばれるIncubationが含まれています。

ここから、6種類のフレームワークについて簡単に紹介します。

  • Hyperledger Besu
    ブロックチェーン企業「ConsenSys」のプロトコルエンジニアリングチーム「PegaSys」がJavaで実装したイーサリアムクライアントです。Ethereumのパブリックネットワークやテストネット、プライベートネットワークへ接続できます。
  • Hyperledger Burrow
    EVM(Ethereum Virtual Machine)の仕様を満たすように作られた、パーミッション型のスマートコントラクト実行基盤です。TendermintアルゴリズムによるBFT(Byzantine Fault Tolerance)コンセンサスを採用しています。
  • Hyperledger Fabric
    IBMが進めるブロックチェーンで、モジュール式のアーキテクチャを持つアプリケーションやソリューションを開発するための基盤となることを目的としたフレームワークです。現状で最も普及しています。
  • Hyperledger Indy
    分散型IDのためのフレームワークおよびライブラリです。ブロックチェーン(分散型台帳)ベースのデジタルIDを提供するためのツールやライブラリ、再利用可能なコンポーネントを提供することで、管理ドメインやアプリケーション、サイロ間での相互運用性を担保しています。
  • Hyperledger Iroha
    日本のブロックチェーン企業「ソラミツ株式会社」などが開発を主導したモバイル向けのフレームワークです。多くのユーザーを抱える企業や金融機関が、ユーザー向けのデジタルアセット、ID、シリアル化されたデータを管理するツールとして開発されています。
  • Hyperledger Sawtooth
    米Intelが主導するプロジェクトで、汎用性と拡張性を念頭において設計されたブロックチェーンフレームワークです。稼働中のネットワークでもコンセンサスアルゴリズムを動的に変更できるという特徴があります。また、アプリケーション層とコアシステムが分離されているため、アプリ開発者はコアシステムの設計を知る必要がなく、任意の言語を使用してアプリに最適なビジネスルールを定義できます。

「Hyperledgerプロジェクト」におけるさまざまなアプローチ

「Hyperledger Tokyo Meetup」とは

「Hyperledger Tokyo Meetup」は、Hyperledgerプロジェクトとは非公式の関係ですが、Hyperledgerに関連する企業の技術者やブロックチェーンテクノロジーに情熱を注ぐメンバーで構成されている集まりで、Hyperledgerに関する話題で熱く盛り上がっているコミュニティです。

今回は5月12日(水)にオンラインで開催されました。ここでは、本Meetupで最初の講演となった、アクセンチュア株式会社のセウェカリ シタル氏による「ブロックチェーンの実用化に向けたネットワーク・スケーリング」の詳細を紹介します。

ブロックチェーンの実用化に向けた
ネットワーク・スケーリング

概念実証であるPoC(Proof of Concept)から価値実証であるPoV(Proof of Value)に向けて市場が動き出している中で、多くの企業がブロックチェーン導入に際して様々な問題を抱えています。PoCで構築したシステムは再利用できる資産やツールが少なく、毎回イチから構築する必要があります。

DLT(Distributed Ledger Technology:分散台帳技術)ソリューションを拡張しようとすると、まだまだ多大な労力と費用が発生します。特定の技術にロックインされることにも懸念があり、プラットフォームの選定も次から次へと新しいものが出てくることを考えると特定のプラットフォームに決めてしまうことに非常にリスクを感じています。また、標準的な事例となるべきものも存在しません。

このような問題を解決するために、アクセンチュア社が「Blockchain Automation Framework(BAF)」を開発し、Hyperledger Labsにコントリビュートしています。BAFアーキテクチャを検討するに当たり、以下のような原則を設定しました。

  1. DLTのリファレンスアーキテクチャ2.0の非機能要件や原則に準拠する
  2. Hyperledgerに貢献できるようにApache 2.0ライセンスで公開されているオープンソースコンポーネントを利用する
  3. ツールやコンポーネントを選択するときに特定のインフラやクラウドにロックインしないようにKubernetes上で稼働するように設計する
  4. エンタープライズで利用してもらうために異なるコンポーネントをプラグインできるようにインタフェースを提供する
  5. 鍵などの認証情報は、設定ファイルや環境変数に保存しないようセキュリティに配慮する
  6. アクセンチュア内部の専門家と連携してツールを選択する

BAFは、Apache 2.0で公開されているHyperledger Labsのプロジェクトで、OSS化してからすでに2年が経過しています。開発には、4つの外部組織に所属する32名ものコントリビュータが参加・活動しています。現在、6つのDLTプラットフォームをサポートしており、80%以上の開発時間を削減できています。すでに実稼働している顧客もいるようです。

このように、エンタープライズの現場でブロックチェーンを活用したシステムが実稼働するためには、まだまだ多くの問題が発生しています。その背景にあるのは、ブロックチェーンの技術自体が発展途上であることも大きな要因だと思いますが、それを克服するためには、BAFのようなフレームワークを活用することで、ブロックチェーンの活用が広がっていくことに意義があると思います。BAFの機能もこれから充実していくと思いますので、大いに期待したいと思います。

今回は、このあたりにして、次回は、さらに本Meetupの講演内容を紹介していきます。

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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