IT業界の未経験者が考える、人の繋がりと自身の覚悟で切り開いたエンジニア道とは
はじめに
人との繋がりには「運」という要素が多分に絡んでいるのかも知れません。ただ、その運にどう気づくか、どう活用するのかは、自分次第だと思います。私は現在某大手通信会社へ出向し、お客様である大手メーカーのインフラ構築に従事しています。
今でこそインフラ構築の仕事に携わっていますが、元々はネットワークの仕組みを勉強したり、PCを組み立てたりした経験はなく、また今の仕事に関係するような趣味や特技も持ち合わせていませんでした。
私の両親は共働きで寿司屋を営んでいたので、家は自宅兼お店でした。そのため、小さいときから無意識に「将来の仕事は飲食業界で接客業だ」と思っていました。しかし、高校を卒業し、アルバイトを探していたときに大きな転機が訪れました。
ネットワーク・インフラの仕事に就いた第一歩
居酒屋のアルバイト仲間と何となく「何か良い仕事はないか」という話をしていたのですが、「知人にコールセンターで働いている人がいるからやってみたらどう?」と言われました。当時、コールセンターの仕事は全くイメージのわかない職種でしたが、話を聞いて「ぜひやってみたい!」と思い、知人の紹介で派遣会社に登録して応募しました。エンジニア業界に入るきっかけは、そんなふとしたことからでした。
コールセンターでの仕事は、インターネット回線の接続設定や無線接続設定のサポート、故障診断の窓口でした。幸い、この仕事には研修期間が設けられており、未経験でも研修を通じて知識を得て自身のスキルアップを図り、専門スキルを身につけて、さまざまなプロジェクトで重宝されるエンジニアを目指していこうと考えました。
2ヶ月間の研修を終え、最後に対話力や応対効率を確認するテストがありました。当時の通信サービスで主流だったPHSや初期の携帯電話はガラケーしか触れたことのなかった私にとって、全てが未知の世界でした。
研修当初は、ルーターがどのようなものかを全く知りませんでしたし、ましてや無線の接続設定などは理解するまで多くの時間を要しました。その他にも、IPアドレス、プロバイダ、ドメインなど、知らない専門用語がたくさん出てきました。そこで専門書を買って、LANの仕組みから無線、SSIDや暗号化、チャネルの仕組み、WANやプロバイダについて学びました。これらの技術があって初めてインターネットに接続できることを研修時に知ったのです。
現在であれば、IT関連の仕事をしていなくても、上記の内容を大まかに理解されている方もいらっしゃると思います。しかし当時はブロードバンドのインターネット接続サービス拡大の過渡期にあり、専門的な知識を学ぶに当たって、自信や楽しみよりも不安のほうが大きかったことを覚えています。
ただ、ここであきらめるという選択肢はなく「はじめはみんな初心者だし、何とかなる」と自分に言い聞かせ、とにかく無心でインプットを続けて、プロバイダやIPアドレスなど、ネットワークの基礎を理解できるようになりました。
慣れてくると自信や楽しさが生まれてきて、研修の終了直前には「研修で教わった内容はそのままお客様が電話で助けを求めてくるようなことなので、正確に、かつ相手が分かりやすくアウトプットしよう」とイメージできるようになりました。そして接客業の経験を活かせたのか、テストの電話応対ロールプレイでは、難なくお客様への案内を完了でき、無事に合格となりました。
お客様に寄り添った丁寧な応対をしている、と評価をいただいた際は、前職の経験が活きたこともあり嬉しかったですし、人との対話ややり取りは、働いていく上で重要な要素だと改めて感じました。
一方で、1つだけ未だに忘れられない恥ずかしい話があります。それまで、コールセンターにあるデスクトップPCを触ったことがなかったので、「電源をつけて初期設定をするように」と言われた際に、電源のつけ方さえもわからず、隣の席の方に電源のつけ方を教わったことは、10年以上が経っても鮮明に覚えています。
SVとなり研修をするようになった過程
無事にコールセンターで就業できるようになったものの、実際にお客様対応をするようになってからも日々勉強の連続でした。研修では基本的なインターネット接続の仕組みは理解できましたが、実際の応対には、提供する会社のインフラの仕組み、プロバイダごとの特徴、つながらなくなったときの切り分けなど、様々な仕組みを理解する必要がありました。
また、インプットした情報をお客様向けにわかりやすくアウトプットするため、継続的に自身のスキルを高めていく必要がありました。ときには明らかに自分よりもスキルが高いお客様への対応で頭を悩ませる日もありました。インプットが不完全で知識が追いつかず、お客様からお叱りを受けることもありましたし、「上司に変わって欲しい」と言われたこともありました。
それでも「お客様は困っているから電話をしてきているのであり、自分はそれに応える仕事をしている」という自覚は常に持ち続けました。「未経験の自分がお客様の立場だったとして、どのように案内されたらうれしいのか、どうしたらすべてのお客様に満足してもらえるのか」という思いを胸に日々研鑽し、ご案内をし続けました。
その姿勢が評価されたのかは分かりませんが、コールセンターに勤めて約半年でオペレーターのエスカレーションを受けるチューターとなり、さらにそこから約半年でSVになることができました。SVになってからも勉強の日々が続きましたが、引き続きエスカレーションを受けたり上席対応をしたり、新規採用オペレーターの研修担当を受け持ったりしました。
新たな窓口の立ち上げメンバーへの選出と
さらなる転機
コールセンターで働き続けて約6年が経過した頃に、中小企業のお客様向けの有料サービスとして、お客様のPCへリモート接続し、プリンターやOfficeソフト、様々なメーカーのルーターなどをサポートする窓口が作られることになりました。その窓口のメンバーとして私を含めたSVが何名か選出されました。
コールセンター内での異動のためマイナーチェンジかもしれませんが、6年間所属した窓口を離れることになり、自分にとっては新たな環境へのチャレンジでした。もともとプライベートではコンピュータ関係はほとんど触っていなかったので、プリンターやルーター、ソフトウェア等も他社メーカーのものには、ほぼ触れたことがありませんでした。
しかし、ここではもう迷いはありませんでした。コールセンターでの6年間の経験を通じてネットワークの基本的な仕組みは理解していたので、常に「基本の徹底」と「傾向と対策」を意識して臨めば、どんな問題でも対応できる自信がありました。ここでさらなるスキルアップが図れたのですが、ちょっとした転機が訪れます。約1年半後に、この窓口を別の地域へ移転するという話になったのですが、移転先では同様の仕事ができなと分かったのです。
パソナテックへの入社から
現在に至るまで
上記の話が来た際は本当に悩みましたが、そんなときにもう1つの大きな繋がりが活路を与えてくれました。当時コールセンターへ出向していたパソナテックの社員が「どうするか悩んでいるなら、パソナテックで働いてみたらどうか?」と話を持ち掛けてくれたのです。そんな話をいただけるのであればぜひと、そのお誘いをありがたくお受けしました。
きっかけは些細な繋がりでしたが、人との繋がりをどう活かすか、結局は普段の行いや気持ち次第なのだと痛感しました。その後パソナテックに派遣社員として入社し、某通信会社の系列会社に出向して回線調整の現場で勤務することになりました。コールセンターで回線の仕組みは嫌というほど学んできたので、その調整業務はお手の物でした。ただ、ここでも「基本の徹底」と「傾向と対策」は忘れず、かつ大胆に仕事ができています。そして、現在はパソナテックで正社員として働いています。元々特別な資格やスキルは持っていませんでしたが、エンジニアとして活躍できているのは、人とのつながり、そして新しいことに挑戦したいという気持ちが大きいからだと感じています。
回線調査の仕事は満期を迎え、現在は別の某大手通信会社に出向し、クライアントの大手メーカーにインフラエンジニアとして様々な対応を行っています。職場では統括として現場をまとめ、日々の定常業務に当たっています。ソフトウェアの更改プロジェクトの開発サポートはもちろん、出向先が提供しているネットワークの更改について、お客様や出向先企業にとって最適な方法の検討なども行っています。
これらのプロジェクトは現在進行形で続いており、まだ数年先はどうなるか分かりませんが、ネットワークの構築および維持するにあたり、さらに様々なシーンへ参画し、超万能よろず屋エンジニアとして「横山がいるから成り立っている」と言われるように今後も邁進して行きたいと思います。
おわりに
私は未経験者でありながら、些細なきっかけから今ではエンジニアとして働いていますが、現在でも着実にできることが増え続けていると実感できています。「飲食業界しか経験がないから」「製造業出身ですけど」などと仕切りを作らずに、まずは小さな一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
この記事をお読みいただき、「自分も新たな道を切り開こう」と思っていただける方が少しでもいらっしゃれば幸いです。
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