第6回:OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その4 (3/3)

オープンソースの適用可能性を示す
オープンソースの適用可能性を示す

第6回:OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その4
著者:ニユートーキヨー  湯澤 一比古   2006/4/24
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オープンソースと企業

   自社でオープンソースを運用することも、オープンソースのOSやミドルウエアを動作環境とするソフトの受託開発をしても、オープンソースを利用していることにはならない。ただ使っているだけだ。せっかく「利用してもかまいません」といわれているのに、使うだけというのはちょっともったいない。

   ソフトの共同開発では、開発に携わるすべての人が、ソースを読めるのが理想的だ。以前は、そんな環境を整えるのは至難の業だった。だが、インターネットの発達により、開発者がソースを共有して開発を進める環境も、随分と使いやすくなってきた。

   この環境の変化を取り入れて開発を進めるには、オープンソースの考え方を取り入れた方が有利だ。企業を越えたコラボレーションの可能性も広がり、1社単独での開発や、階層的に組織された下請け体質の開発では実現しなかった、優れたソフトができあがるだろう。

   海外では既に、オープンソースを開発する場合にシステムツールを提供したり、開発するシステムに適した「オープンソースライセンス」の作成について、コンサルティングをする会社もあるそうだ。

   ここまで見てきたように、オープンソースの開発手法は、ユーザ企業にとって十分にメリットがある。ぜひ一度、試してみてほしい。

   身近に小さなシステム開発プロジェクトがあるなら、まずそこに適用してみよう。うまくいったら、今度は規模を拡大して、数社での共同開発にするとよいだろう。

   ソフトハウス側も、発注企業と相談してオープンソース開発にしてみるのはどうだろう。魔法のお鍋で見たように、オープンソースは立派にビジネスとして成立するのだから。発注企業の担当者も、興味を示してくれるのではないだろうか。

参考文献・Webサイト

『オープンソースワールド』 :川崎和哉著、翔泳社刊(1999)
「伽藍とバザール」「ノウアスフィアの開墾」「魔法のお鍋」がこの本で読める。レイモンドの3部作は、下記のWebからも閲覧可能。
http://cruel.org/freeware/cathedral.html
http://cruel.org//freeware/noosphere.html
http://cruel.org/freeware/magicpot.html

『第三の波』アルビン・トフラー著、中央公論新社刊(1982)
『ビジネス・ケースブック3』 :『一橋ビジネスレビュー』編集部、東洋経済新報社刊(2004)
『オープンソースじゃなきゃ駄目』 :湯澤一比古著、イデア出版局刊(2005)

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株式会社ニユートーキヨー 湯澤 一比古
著者プロフィール
株式会社ニユートーキヨー  湯澤 一比古
財務部情報システム室 室長。53年東京生まれ。
75年にニユートーキヨーに入社。8年弱のウエイター経験を経て、システム担当に就任。ニユートーキヨーが「セルベッサ」をオープンソースとして発表した時に、システム担当者として初めてOSSに触れる。現在、同社のシステム室長。OSCARアライアンス、OSSAJなど、複数のオープンソース推進団体に参加。セルベッサ以外にも「ガラガラドア」や「オルット」などのオープンソースシステムを手がけている。


INDEX
第6回:OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その4
  前回より
  透明性の確保
オープンソースと企業
オープンソースの適用可能性を示す
第1回 ユーザ企業におけるOSS浸透のカギはメインフレーム世代のSE
第2回 DB管理ツールを例にOSSの現在の実力を診断する
第3回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その1
第4回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その2
第5回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その3
第6回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その4
第7回 PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その1
第8回 PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その2
第9回 PostgreSQL vs MySQL2つのDBMSを検証する(前編)
第10回 PostgreSQL vs MySQL2つのDBMSを検証する(後編)
第11回 OSSのプロがいなくても大丈夫!必要なソフトの情報はこうして探す(前編)
第12回 OSSのプロがいなくても大丈夫!必要なソフトの情報はこうして探す(後編)
第13回 クライアントのOSとしてLinuxを検証する
第14回 バッファオーバーフローとサーバ側のセキュリティ対策を考える

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