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オープンソースの適用可能性を示す
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第3回:OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その1
著者:ニユートーキヨー  湯澤 一比古   2006/3/29
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セルベッサとは?

   「セルベッサ」と聞いてピンとくる読者はどれだけいるだろうか。

   セルベッサは、ニユートーキヨーが発表したオープンソースの食材受発注業務アプリケーションだ。テンアートニが受託開発し、1999年に完成。同年末にオープンソースソフト(OSS)として公開した。

   発表からしばらくは、「せっかくお金をかけて開発したソフトを、なぜオープンソースにしたのか?」と、かなり質問を受けた。当時は、「経営者に『布教は良いがお布施は貰うな』といわれたからです」「開発者のモラルアップと、その後のメンテナンスコストを考えて」などと答えていた。ところが今になって、理由を納得してもらえる、もっと簡単な方法があったことに気付いた。「魔法のお鍋」をプレゼントすればよかったのだ。


オープンソースでビジネスは本当に成立しないのか?

   魔法のお鍋とは、エリック・レイモンドのオープンソースに関するレポート3部作、「伽藍とバザール」「ノウアスフィアの開墾」の最後を飾る1冊だ。「いくら食べても食べ物が減らない魔法のお鍋」の昔話から、このレポートの題名を決めたという。

   このレポートは、オープンソースに関する「まとめ」になっており、ビジネスとオープンソースは決して相反するものではなく、十分に協調できるという、重要な提言になっている。

   筆者のオープンソースに対する考え方の大部分は、このレポートからの借り物のような気がする。ITを深く理解していなかった一介のユーザ企業のシステム担当者が、このような場所に記事を書くようになったのも、このレポートなくしてはありえなかっただろう。

   オープンソースは元々、プログラムソースの「自由」を主張する考え方や、それを具現化したソフト製品から生まれた。これは、リチャード・ストールマンの主張とアイデアが育てた世界だ。それ故に、オープンソースはストールマン自身が「フリーソフトウェア」と呼んでいる思想から派生した一派といえる。

   彼の主張は非常に先鋭的で、魅力「ソフトはすべて公共財となるべきだ」という。それゆえに、誰でも自由に使え、研究でき、修正可能で、配れるという4つの自由を保証しなければならないというのだ(図1)。

フリーソフトの4条件
図1:フリーソフトの4条件

   彼は、この4つを保証するライセンスまで、実際に作り上げている。誇り高く悪名高き「GPL」がそれだ。実際、ビジネスや金儲けには使えそうもないものだ。

   それでもレイモンドは、これでオープンソースをビジネスにできると主張した。そればかりか、オープンソースは「良い事」なのだから、普及のためにビジネスを育てなければならないと断言した。

   彼は、オープンソースのビジネスモデルを9つに整理している。筆者がこの必要性に気付くきっかけになった、重要な内容だ。

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株式会社ニユートーキヨー 湯澤 一比古
著者プロフィール
株式会社ニユートーキヨー  湯澤 一比古
財務部情報システム室 室長。53年東京生まれ。
75年にニユートーキヨーに入社。8年弱のウエイター経験を経て、システム担当に就任。ニユートーキヨーが「セルベッサ」をオープンソースとして発表した時に、システム担当者として初めてOSSに触れる。現在、同社のシステム室長。OSCARアライアンス、OSSAJなど、複数のオープンソース推進団体に参加。セルベッサ以外にも「ガラガラドア」や「オルット」などのオープンソースシステムを手がけている。


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第3回:OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その1
セルベッサとは?
  オープンソースに対する疑問と回答
  ネットスケープに見る目玉商品/市場位置の確保モデル