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付録編:OpenOffice.org 2.0betaで作成した報告書
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本実証実験の実施報告書は、PDF文書としてIPAから公開されています。
この実施報告書は各社担当者の尽力により、本文だけで340ページを超える労作となりましたが、このとりまとめ作業がひと苦労だったのです。
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新しいモノ好きの血が騒ぐ
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学校はもう春休みに入り、プロジェクトもあとは報告書をまとめれば無事終了というある日の会議でのことでした。報告書の方向性と概要が決まり、あとは文章を書きはじめるだけといった段階で、話題は報告書を作成するアプリケーション話に移りました。
A氏「そういえば報告書は何で書くの?」
B氏「OSSの実証実験なんだし、Microsoft Wordって訳にはいかんでしょう」
C氏「じゃあ、OpenOffice.org Writerにしよう」
D氏「…ちょうど2.0のベータ版もでてることだし」
OpenOffice.org Writer 2.0のベータ版を使おうといいだしたのが誰だったかはわかりませんが、技術者集団の会議のため、新しいモノ好きのメンバーの血が騒いだのではないかと思いました。また、Star Officeを発売しているSun Microsystemsのメンバーがいるため、何かあっても色々と指導してくれるだろうというある種の安心感がありました。利用経験のあるメンバーが少なく、しかもベータ版ということで不安がありましたが、これが茨の道へ足を踏み入れた瞬間でした。
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OpenOffice.org 2.0betaの完成度が問題
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打合せ後にメンバーはすぐにOpenOffice.orgの最新版(1.9.79)をダウンロードして自分のPCにインストールしました。ところが残念なことに、この時点ではお世辞にも「ベータ版」とは言い難いほど完成度が低かったのです。
とにかく不安定であり、少し複雑な操作をするとアプリケーションが強制終了してしまいました。とくに図形関係の操作で頻繁に強制終了しましたが、スクロールをさせただけで強制終了したときもありました。また、挙げ句の果てにはファイルを開いただけで強制終了しました。このような問題があった後に、アプリケーションを再起動するとリカバリプロセスが走りますが、問題を修復するはずのこのプロセスも強制終了してしまうことすらありました。
他にも、ファイルを開くと挿入したはずの図が消えていたり、図とともに文章の一部がなくなっていることもありました。そのように不可思議な動作のオンパレードでしたが、一番ひどかったのはファイル読み書きの最中に強制終了し、ファイルの内容がすべて消えてしまうことでした。
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ベータテスターの苦悩
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苦悩のあまりに私自身も執筆中に何度奇声をあげたことかわかりませんが、報告書のとりまとめ中に各社の報告書執筆担当の方々とやり取りしたメールには、怨念のような雰囲気と疲労感すら漂っていたと思います。
OpenOffice.org 2.0のベータテストにかなりの貢献できたと思うくらい、予想以上に色々な不具合が頻発しましたが、私もSun Microsystemsの皆様を通じていくつかのバグ報告をさせてもらいました。
後になってから振り返ってみると、参加企業は皆名立たるIT企業でしたので、「LaTeXで原稿を作成し、管理はCVSで行います」とお願いしたとしても対応してくれたかもしれません。「適材適所のITツールを使うべし」という生産性を高める工夫の第一歩を忘れてOpenOffice.orgを利用したことは、報告書を作成するにあたり迂闊でした。ベータ版で業務を遂行した点が大きな誤りでしたが、先ごろ正式にリリースされた2.0版では今回悩まされた不具合はすべて修正されているようで、私たちの苦労も報われた気がします。
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著者プロフィール
株式会社三菱総合研究所 比屋根 一雄
情報技術研究部 主席研究員
1988年(株)三菱総合研究所入社。先端情報技術の研究開発および技術動向調査に従事。最近は「OSS技術者の人材評価調査」「日本のOSS開発者調査FLOSS-JP」「学校OSSデスクトップ実証実験」等、OSS政策やOSS技術者育成に関わる事業に携わる。著書に、「これからのIT革命」、「全予測情報革命」、「全予測先端技術」(いずれも共著)などがある。「オープンソースと政府」、週刊ITコラム「Take ITEasy」を主宰。
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