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アジャイル開発
今こそ再考するアジャイル開発

第4回:アジャイル開発導入のポイント

著者:日本コンピューター・システム   新保 康夫
アッズーリ   濱 勝巳  2006/10/2
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導入が難しい理由

   前回は、アジャイル開発のメリットについて説明しました。今回は、実際にアジャイル開発を導入する上でのポイントを説明します。

   一般的にアジャイル開発の導入は難しいといわれます。それは何故でしょうか。まずは、何故アジャイル開発の導入が進まない理由についていくつか考えてみましょう。

プロセスの違い

   まず、アジャイル開発と従来の開発では、プロセスへの考え方が大きく違っています。従来の開発プロセスがソフトウェア開発の進め方を設計したものに対して、アジャイル開発はソフトウェア開発プロジェクトの進め方を設計したものという点です。

   アジャイル開発が計画ゲームやバックログ、振り返りのようなプラクティスで構成されており、設計や実装というような工程が見えないことから導入が難しいと感じるのかもしれません。アジャイル開発を実施するだけではソフトウェアを開発できません。この考え方の違いを理解されていないことがアジャイル開発の導入を困難にしています。


導入者の誤り

   次に、アジャイル開発をプロジェクトマネージャではなく開発者が使おうとしているために導入が難しいといわれます。アジャイル開発はプロセスですので、プロジェクトを運営/管理するプロジェクトマネージャが設計し、利用するためのツールです。

   プロセスの設計を担っていない開発者が導入しようとしても難しいのは当然のことです。アジャイル開発は、プロセスの設計を担っているプロジェクトマネージャなどが導入することではじめて機能させることができます。


導入の注意点

   以上のことから、アジャイル開発の導入が困難な理由はわかっていただけたと思います。それでは、アジャイル開発を実際に導入する場合にどのような点に注意したらよいのか考えてみます。


プロジェクトの目的

   アジャイル開発を導入する前に最初に考えなければならないことは、実施するプロジェクトでアジャイル開発をプロセスとして本当に導入する必要があるのかということです。

   アジャイル開発以外のプロセスであってもプロジェクトを成功に導けるのであれば、不慣れなアジャイル開発をわざわざ導入する必要はありません。プロジェクトの成功が何かということを把握し、アジャイル開発をプロジェクトに導入することで、今まで以上の価値を得られるか、否かを考える必要があるでしょう。

   プロジェクトの成功の条件は1つだけで定義できるものではありません。成功の条件には色々なものが考えられます。たとえば、バグのない品質の高いソフトウェアを納品することは成功の基準の1つになりますし、当初計画されていた予算や時期の中でソフトウェアを開発して納品するということも1つの基準となります。

   プロジェクトによっては、プロジェクトに従事した人が満足するということも1つの成功基準となるのではないでしょうか。プロジェクトの成功基準は、プロジェクトやステークホルダによって異なります。

   以上のことを踏まえ、チームやプロジェクトマネージャはどのようなプロセスを導入すればプロジェクトを成功に導けるかを考え、その中でアジャイル開発が最適と考えた場合に導入してください。ただやみくもにアジャイル開発を導入しても、効果は得られないのでしょう。

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日本コンピューター・システム株式会社  新保 康夫
著者プロフィール
日本コンピューター・システム株式会社
新保 康夫(しんぼ やすを)

本部企画室 コンサルタント、ITコーディネータ/ITCインストラクタ、システム監査技術者。
1975年 日本コンピューター・システムに入社。システム開発に従事し、プロジェクトマネージャを経て現在、コンサルタント業務に従事する。コンポーネントベース開発やアジャイル開発にも関与する。
「ソフトウェアプロセスレベルを向上させるCMMI活用術〜ソフトウェア開発の品格」をThinkITにて掲載。

有限会社アッズーリ  取締役社長  濱  勝巳
有限会社アッズーリ
濱  勝巳(はま  かつみ)

(有)アッズーリ 取締役社長。メーカ系ソフトウェア会社でファームウェアのプログラマを経て、フリーのエンジニアとして独立し、1999年に有限会社アッズーリを設立。オブジェクト指向、アジャイルプロセスを利用したエンタープライズアプリケーションを開発に従事し、現在は経営やプロジェクトマネジメントの視点でアジャイルプロセスを見つめ、情報システムベンダのあるべき姿を追求している。2003年よりアジャイルプロセス協議会副会長。


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