SMB市場におけるITシステムの導入実態総論
SMB市場におけるITシステムの調査目的
ここ最近のIT業界で最も注目を集めているマーケットが、中堅・中小企業(以下、SMB)である。10数年前のオフコン全盛時代に比べ、SMBのITリテラシーは飛躍的に向上している。ITに要する金額もそれ相応に予算化しつつある。
その中でベンダーとしてもSMBを本格的にターゲットとし、導入がスムーズに進むようにハードウェア/ソフトウェアに関わらず様々な戦略を打ち出している。
ノーク・リサーチでは、年商規模で5億円以上500億円未満に当たる企業をSMBと定義し、その企業を対象とした調査結果を基に、SMBのIT導入実態を明らかにしていく。
そしてノーク・リサーチは、2005年9月に中堅・中小企業(SMB)のITアプリケーションの導入・利用実態調査を実施した。調査の対象は、年商5億円以上500億円未満の中堅中小企業で、有効回答数は708件。
本連載では、とりわけ「ERP(Enterprise Resource Planning)」「SCM(Supply Chain Management)」「CRM(Customer Relationship Management)」をはじめとする新ITシステムの導入実態にフォーカスする。
ご承知の通りとは思うが、これらは企業戦略に関わるようなITシステムであり、互いに有機的に絡み合っていて、正しい導入がなされれば「計画 → 調達 → 生産 → 販売 → 物流 → 保守/品質向上」といった一連の業務サイクルを無駄なく効率的に形成することが可能となる。
そのポイントを端的に示せば、表1のようになる。
- SCMによる工程管理の上でのコスト削減、在庫の減少
- ERPによる各生産拠点と本社・支社とのリアルタイムな情報共有、一元管理
- CRMによる効率的な営業、品質向上
正しい手順・段階・活用を踏めば、俗な表現だが「ITで儲ける」ことを可能にならしめるものである。
以降で解説するが、SMBではインフラ面・セキュリティ面での情報武装はほぼ完了している。ただ、上記の戦略系ITの導入は一向に導入が進まないのが現状だ。
そこで、第1回目の今回は総論としてSMBにおけるサーバ周辺の全般的なITシステムの導入実態を調査結果にそって紹介していく。
SMBは効果がすぐ見えるITを導入する傾向
ノーク・リサーチが、2005年9月に行ったITアプリケーションの導入実態調査によると、ここ1年間に導入したITシステムの導入目的は、「社内 情報の有効活用のため」が39.4%、「営業効率向上のため」が38.3%であり、この2つの目的が突出し、「経費削減のため」が25.0%と続く。逆に 「売上の拡大のため」が10.0%、「経営全般の見直し」が7.7%と低かった(図1)。
SMBは、自社の既存の情報資産を有効活用して営業に役立ち、導入後速やかにその効果が見えやすいITシステムの導入に積極的なのである。またルーチンワークをITによって省エネ化し、人件費などの経費の削減を実現しようとしている。
逆に経営全般の見直しをはかり、売上拡大につなげるといった企業戦略的なIT導入には消極的である。実は、こういったSMBにおけるIT導入の2極 化傾向は、詳細なデータは割愛させてもらうがここ10年変化がない。つまり「戦略的なIT」は進んでいないということだ。