価格帯で棲み分けるUNIXとWindows
エンタープライズサーバOSと一口で言っても、さまざまな定義があるだろう。本稿では、企業システムのアプリケーションサーバ、データベースサー バ、あるいは業務系アプリケーションが稼働するサーバコンピュータで稼働するオペレーティングシステムと定義する。そうは言っても、大企業の基幹系システ ムを支えるハイエンドサーバコンピュータから、ワークグループで稼働する小規模なアプリケーションサーバまで、サーバコンピュータの規模や種類は千差万別 であり、一概に比較することは難しい。
そこで、サーバコンピュータを価格帯で見たOSの市場シェアのデータ(図1)を見てみよう。これは、ガートナージャパン株式会社が2003年に調査 した日本国内におけるエンタープライズサーバOSの市場シェアである。このデータを見ると、非常に興味深い現実がわかる。

図1:2003年国内サーバ市場価格帯別出荷金額OS別シェア
まずは、サーバコンピュータの価格が5000万円を超えるハイエンドサーバを見てみよう。OSのシェアがダントツなのが「その他」である。この「そ の他」とは、メインフレーム上で稼働するベンダー独自のOSにほかならない。海外ではすでに消えようとしているメインフレームだが、日本ではまだまだ健在 であることを証明した格好だ。
続いて、ミッドレンジクラスを見てみよう。市場シェアの半数以上を占めているのが「UNIX」である。元をたどれば1つのUNIXだが、現在はコン ピュータベンダーが自社のハードウェアに合わせて改良するとともに、独自の機能を豊富に盛り込んでいるため、各社のUNIXはまったく別モノになってし まっている。IBMの「AIX」、ヒューレットパッカードの「HP-UX」、サンマイクロシステムズの「Solaris」、そしてアップルコンピュータの 「Mac OS X」などは、すべてUNIXベースのOSである。市場シェアを見る限り、UNIXがいまだにコンピュータベンダーの“稼ぎ頭”であることがよくわかる。 (上記チャートでは「Mac OS」は「その他」に含まれている。)
そして、100万円台を境に70パーセントを超えるシェアを持つのが「Windows」である。かつては、ワークグループのファイルサーバとして手 軽に導入されてきたWindowsだが、インテルアーキテクチャ(IA)サーバの高性能化・低価格化に乗って、現在ではアプリケーションサーバ、データ ベースサーバなどの用途にも積極的に導入されている。
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このデータから見えるのは、“ハイエンドのメインフレーム”“ミドルレンジのUNIX”“エントリーのWindows”という棲み分けである。 ガートナージャパンのエンタープライズ・インフラストラクチャ担当主席アナリスト、亦賀忠明氏も、「コンピュータベンダーのほとんどは、ミッドレンジクラスはUNIX、エントリーはWindowsというポジションでビジネスをしています。このビジネスが一朝一夕で変わるはずはありません。2004年の調査もほとんど同じ傾向になると考えられます」と予測する。 |
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