AjaxとCometで作るリアルタイムWeb
はじめに
Ajax+Cometは、WebSocketsが定着するまでのつなぎの技術という見方もあります。しかしながら、クライアントがシンプル、プロトコルを拡張しない、といったメリットもありますので概要を紹介します。
今回は実装までのソースを解説していくのではなく、Ajax+Cometアプリケーションでの在席状況確認の仕組みやシステム構成のポイントといった部分を中心に解説していきます。
Ajax+Cometアプリケーションの場合、クライアント側にはリクエストを投げる仕掛けのみを構築しますので、Cometを実現するWebサーバーのアプリケーションが双方向通信の実体になります。
図1:Ajax+Cometの構成(クリックで拡大) |
システムの構成
今回は、CometをJavaで実装するケースを想定しますので、jetttyのサーブレットの仕組みを解説することになります。
クライアント側の仕掛けは非常にシンプルですので、サーブレットの解説の前にクライアントのJavaScriptのコードを紹介します。これは、JSP等でサーバーサイドで動的に作成してもかまいません。
→サンプル一式は、会員限定特典としてダウンロードできます。記事末尾をご確認ください。
[リスト 01]Cometのクライアント側JavaScript()
- ※最新のブラウザ(IE8、Firefox3.6、Chrome9.0、Safari5)で動作可能(2011.3現在)
単にサービスに対して、サーバーの在席状態をリクエスト、リクエストのステータスが変わったら結果を取得して、再度リクエストを発行しているにすぎません。
これは、Cometが以下のような仕組みで動くためです。
図2:Ajax+Cometの仕組み(クリックで拡大) |
つまり、Cometではサーバーに「読込用リクエストにすぐにレスポンスを返さず、リクエストを保持する機能」と「書込用リクエストを受け付けたら読込用リクエストにレスポンスを返す機能」を持つサーブレットを作成することで双方向通信のリアルタイムWebを実装しているのです。
今回想定する実装に必要なものは、以下のWebサーバーと開発環境です。
統合開発環境はEclipse、WebサーバーはEclipseからjettyをダウンロードすることができます(Eclipse+Maven+jettyの開発環境構築は割愛します)。
- jetty-7
- Eclipse
※jettyの稼働およびComet開発にはJavaが必要です - JDK 6.0 Update 23
jettyはバージョン6でCometを、バージョン7でWebSocketsをサポートします。いずれの場合も、Eclipse+Maven(テンプレートWebapp)で開発するのが良いと思います。
- ※うまくいかない場合は、MavenでなくRun Jetty Runを使用して開発環境を作ってみてください。こちらもEclipseのWebサーバー連携を補助するプラグインです。
これらが今回の稼働環境となりますが、Cometの実装には非常に多くの方法がありますので、ポイントだけ抑えれば、この環境に限らずとも良いことが理解できると思います。そのポイントは、jettyでのCometの実態はjettyが提供するContinuationオブジェクト(キュー)で共有されるリクエストをタイマーで制御するという点です。次項「サーブレットの概要」を参照ください。
jettyに限らず、以下の2つの機能を持つ基盤をWebサーバーに用意することでCometは実装できます。
- 「リクエストに対するレスポンスを非同期で行い、リクエストのコネクションをアイドル状態にする」
- 「アイドル状態のコネクションが、特定のイベント(だれかの在席状態が変わった場合に発行されるイベント)で再開される」または「タイムアウトでアイドル状態のコネクションを破棄する」
このような基盤を持つWebサーバーはたくさんありますので、ソリューションに応じて選択してください。
『AjaxとCometで作るリアルタイムWeb』サンプルプログラム