競技部門1位のチームメンバーが解説する、ETロボコンの攻略ポイント(前編)
3. 活動
2012年度は「ET West杯に向けた活動」と「地区大会に向けた活動」で期間を区切って活動しました。初参加のメンバーが比較的多く、ET West杯を目標に掲げることで早い時期に走行体の特徴を実感してもらいたかったためです。また、走行可能な走行体をいったん作り終えることで、地区大会に向けて気づいた点を改善するという狙いもありました。
最初から地区大会を目指すのではなく、ET West杯までに一度実装完了させる方針で作業を進めました。走行体が走行可能となっていることで安心感が得られました。また、実際に動かして気づいた点を、次の開発へフィードバックできるというメリットもありました。
3.1. ET West杯に向けた活動(4月~5月)
3.1.1. 昨年度の優秀チームモデルを査読
ETロボコンは「競技部門」と「モデル部門」の2部門構成となっており、両部門の成績の平均により総合順位が決定します。よって、実機を走行させる「競技部門」だけでなく「モデル部門」も軽視できません。2012年度の活動は、優秀チームモデルの査読から始めました。
ETロボコンに参加すると、各チームに「昨年度の優秀チームモデル」が配布されます。前述の通り、2012年度は初参加のメンバーも多く、「どのような内容のモデルを求められているか?」を知ってもらう必要がありました。そのため、まずは「いわゆる良いモデル」を見てもらうことにしました。
「なんとなくモデルを眺めるだけで終わってしまわないか?」と危惧していたものの、メンバーからは下記のような意見が上がり、活発な議論ができました。
- このモデルはクラス構造がシンプルでわかりやすい。→わかりやすい構造とはどのようなものか?
- こんな要素技術があると本番も安心だ。→安心して本番に臨むためにはどのような要素技術が必要か?
- このチームは見せ方が上手い。→見せ方だけだろうか?見やすいのには理由があるのでは?
議論を通して、「最終的にどのような成果物を作成するのか」という認識を共有できたように思います。早い時期に認識共有できたことで、どのような検証・設計が必要となるのかを事前に知ることができ、モデル作成時に慌てずに済みました。
査読で気づいた点を残さずフィードバックしたモデル図。しかし、CS大会の評価はB+でした。まだまだ、内容・見せ方共に工夫が必要なのだと痛感しました。
3.1.2. LEGO MindStorm NXTでのプログラミングを経験
初めてETロボコンに参加した人が最初に「喜び」を得られる機会は、「コードを書いてみて、走行体が動いた瞬間」ではないでしょうか?
そこで、我々のチームは4月の時点で「コーディング」に着手しました。「モデルもないのに何をコーディングするのか?」と思われるかもしれませんが、今回は「昨年度のモデル」をベースとし、初参加のメンバーにコーディングしてもらいました。
ETロボコン2012の競技規約は前年度(ETロボコン2011)と類似しており、競技規約が発表となった時点でETロボコン2011のクラスを流用する想定でした。そのため、流用部分の実装を初参加のメンバーに経験してもらうことにしたのです。また、昨年度の実装言語はJavaであったため、2012年度の実装言語であるC++に変換する必要があります。このため、C++の言語仕様を理解することに繋がり、有意義な作業となりました。
チームメンバーのうち約半数はC++での実装経験がなく、最終的には有識者とのペアプログラミングに近い形態での作業となりました。この作業を通じて言語仕様を全員が理解し、効率良く開発を進めることができました。
審査員の方に「比較的良くできている」とコメント頂いた構造設計。実は前年度をベースとして作成したものです。
3.1.3. ET West杯への参加
関西地区でのイベントの一つに「ET West杯」があります。これはいわゆる「ローカル大会」で、毎年6月に大阪で開催される「ET West」のETロボコンブースで開催されます。我々のチームは、上記コーディングを経てC++で実装したコードで出場しました。
結果は7チーム中4位。実装がギリギリになってしまったことで、あまり事前調整ができていなかったことと、より高速走行が可能な「尻尾走行」(後述)を実装せずに臨んだことが原因で、満足できる走行とはなりませんでした。
しかし、大会を通じて得られたことがあります。それは大会当日の「緊張感」を経験できた、ということです。過去の大会に出場した方はご存知かと思いますが、地区大会、CS大会当日の調整時間は非常に短いです(関西地区大会では20分×2セット)。H/W異常やS/Wバグなどのトラブルが発生すると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。「初参加のメンバー達が、大会当日の緊張感を実感できたこと」が、ET West杯の一番の成果であったと言えるでしょう。