アップルがApple Watchストアを作るべき理由
Rolexに加え、フランスのメディアが先月報じたところによれば、アップルがもうすぐ発売されるApple Watchのショップの建設を考えているかも知れないとのことだ
もちろんこれはアップルからの発表では無いが、これが本当の話だと信じられる理由がある。中でもアップルが宝石や高級品の真似をして、売り場環境に高級感をもたらしたいのだというのはその理由としてよく挙げられるものだ。
しかしもっと現実的な理由もある。それらの中にはスマートウォッチメーカーを目指すものにとって教訓となるものも含まれている。
どこまで高級感を出せるのか?
もし次に出るデバイスが携帯だとしたら、Apple Storeの傍目に付く所に並べられることはないだろう。アップルの看板商品であるiPhone 6/6 Plusもそうだ。細いケーブルで繋がれ、買い物客が見逃してしまうような所に置かれている。最新のiPad、iPodタッチ、Macbook Airなどと一緒に並べられている様は兵隊の整列を見ているかのようだ。
しかしアップルはApple Watchに同じ轍を踏ませたくないと考えているだろう。結局の所アップルはこの商品に大層な望みを託しているのだ。
アップルはこのガジェットを(iPhoneを連想させる)スマートウォッチというありふれた名前で呼ぶことを頑に拒んでいる。去年の9月、アップルはファッションジャーナリストや流行の仕掛け人を記者会見に招いた。Vogue Chinaの編集者たちは多くのアメリカの技術系レポーターたちが目にするよりも早く、Apple Watchを直に見ることになり、Apple Watchは表紙を飾ることになる。アメリカ国内ではSelf誌で最初に表紙を飾った。
なんとも華やかな事だ。もしアップルがスマートウォッチ(アップルがそれをなんと呼ぼうが)のショップをデザインしているのだとしたらどうだろう。アップルはガラスの展示ケースに入れ、商品の魅力を際立たせるあらゆることをやるだろう。
アップルにとってショップを作る動機は他にもある。盗難防止だ。カリフォルニアからノースカロライナその他、あらゆる所にあるApple Storeは強盗や店舗破りの被害にあってきた。中には車でApple Storeに突っ込んできた例もある。元NBAプレイヤーのレックス・チャップマンは14,000ドルを不正に手にし、アップルの従業員ですら不法行為に手を染める誘惑に勝てなかった。
アップルはこれらの件を大げさに扱わず被害の額についても明らかにしていないが、その総額は推して知るべしだろう(Apple Storeは世界中に山程あり、アメリカだけでも250店舗存在する)。ベイエリアのApple Storeに務める従業員のうち数名が、自分たちが働いているところでは頻繁に盗難を見かける事を打ち明けてくれた。その中にはただのヒッタクリから、Easy Pay セルフレジの偽物を使ったレックス・チャップマンの様な巧妙な詐欺まである。
これまでになく小さなデバイス(しかもその価格は350ドルから5000ドルまで)が店に並ぶとなれば、窃盗に対する誘惑は間違いなく高まるだろう。
Apple Watchが今あるApple Storeから完全に姿を消すことはないだろう。むしろ基本的なモデルはこれまでの様にディスプレイテーブルに並べられると思われる。そして高価なバージョンについてはバックヤードの保管室で管理されることになるのだろうが、それが18金バージョンのデバイスの展示する方法として素晴らしいとは思えない。
しかしおそらくカメラやアラーム、厳重なセキュリティで固められた宝石店のようなスタイルであれば、アップルは見た目に豪華な、しかしより安全が守られた形で、あらゆるバージョンのApple Watchを展示できるかも知れない。
全てのスマートウォッチメーカーがアップルを応援するべき理由とは
ある目的の為に新設された売場によって、アップルは普通のApple Storeの万引き率増加のリスクを取らずに、顧客に実機にふれてもらうことが可能になる。実機に触れるというのは決定的に大事なことだ。
アップルが最後に出した新ジャンルを開いたデバイスといえば、2010年のiPadだ。発売に先立って、これに批判的な人たちはこの「大きすぎるiPod」の意味を見出せなかった。しかしサイズに余裕があることで、開発者たちはユーザーインターフェイスを見直すことになり、小さなディスプレイでは叶わなかったユーザーエクスペリエンスを提供出来る様になった。
言い換えれば、実際に触ってみないと分からないこともあるということだ。Apple Watchについても同じことが言えるかもしれない。
結局iPadはその批判のほとんどを覆した。急速に売り上げを伸ばす様をみた他のスマートフォンメーカーたちもタブレットを製造する様になった。この大画面のモバイルデバイスの売り上げは後に落ち込む事になるが、今まさにこれまでになく小さな画面のデバイスを売り出そうとしているアップルにとって、iPadを発売した時の経験は貴重なものになっている。
アップルは既存のApple Storeでの顧客の興味深い習性に気づいたと見える。実際に手にとって見ないとそれを好きにならない人たちもいるということだ。評価の定まっていないデバイスの場合、この事はより当てはまる。
この事が、たとえ実店舗がこのデジタル時代において時代遅れだとは言えど、アマゾン、eBay、マイクロソフト、サムスンなどの企業にとっても必要なものになっている理由だ。アップルは他のものよりも直接販売の要領をよくつかんでおり、今回もまた、たった一つの製品をプロモートするために同じトリックを使おうとしているのだろう。
他の多くもこの流れに乗ることはできる。大衆がスマートウォッチに興味を抱いている中、多くの企業が何もしようとしていない。恐らくはiPadの時同様、前例を必要としているのだろうか。
事は考えているより難しいことなのかもしれない。去年の11月にAsusのZen WatchがBestBuyで売り出される時に地元の店舗に立ち寄ったが、店員は私の話を全く理解しないどころか、在庫表から商品を見つけることさえできなかった。
アップルがウォッチストアを造っているのであれば、初めて出す自社のウェアラブルが成功する確率を最大化したいというのも理由のひとつかもしれない。もしこれがうまく行けばアップルはまた新しいカテゴリの製品の人気を確立し、業界での認知度を上げることになるかもしれない。
成功かどうかを判断するのは難しいことでは無い。宝石店の様な販売スペースに長蛇の列ができるかどうかを見れば良い。
画像提供:各デバイス製造メーカーより
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※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。
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