連載 :
  ReadWrite Japan

クラウド競争はユーザーに利するも、開発者には悩みの種

2015年7月14日(火)
ReadWrite Japan

アマゾンは先月、Amazon Cloud Driveのサービスに対する新たなAndroidおよびiOSのソフトウェア開発キットをリリースした。開発者は初めてアマゾンのクラウド・ストレージへのダイレクトなアクセスをアプリへ導入できるようになる。これによって、ユーザーはアマゾンのアカウントにログインせずとも、いつでも格納したデータにアクセスすることができる。

アマゾンは開発者に対し、長きにわたってファイル・ストレージ・サービスそのものを提供してきた。例えばその中の一つ、Dropboxは、クラウドに保存されたファイルに独自のインターフェースを構築してきた。Amazon Cloud Driveはそのようなサービスとは異なる。これは消費者向けのサービスだ。つまり、この開発キットの提供により、開発者はAmazon Cloud Driveを利用する消費者へアクセスできるようになるということだ。

これまで、アマゾンは4つのAndroidアプリと1つのiOSアプリに新しいモバイルソフトウェア開発キットが組み込まれたと述べている。その内訳は、A+ Gallery、PhotoTime、TextMaker HD Basic、PlanMaker HD Basic、そしてPresentations HD Basicだ。さらに3つのiOSアプリ―FiLMiC Pro、Vizzywig、Cleenが、「まもなく」Amazon Cloud Driveをサポートする予定だという。

しかし、ユーザーがクラウド・ストレージにはどれでも互換性があるのが当たり前だと考えるようになれば、多くのアプリがAmazon Cloudをサポートするようになるだろう。

MTMwOTg1NDUxODQ1NjIxMDEw

悩ましいクラウドの取捨選択

アマゾンの新しいソフトウェア開発キットによって、ユーザーにはデータ保存先のクラウドに関して、より多くの選択肢が与えられる。これは良いニュースだ。より多くのアプリが、より多くのストレージ・サービスをサポートするようになれば、ユーザーは、互換性に関してあれこれ考える必要はない。開発者は、様々なストレージ・サービスをできるだけ多くサポートするようになるだろう。そしてクラウドの選択肢が少ないがために、ユーザーがアプリ利用を敬遠することを避けようとするはずだ。

しかし、これによって、どのストレージ・サービスをサポートし、どれを除外するか、あるいは単純に全てのクラウドをサポートするのかを選ばなければならず、開発者の仕事がさらに困難になるのは悪いニュースだ。クラウドにデータを格納する際に、Microsoft OneDrive、Box、Dropbox、Google Drive、アップルのiCloud、そしてAmazon Cloudと、有り余るほどの選択肢があり、どれにしようかとぜいたくな気分を味わえるのは、素晴らしいことだ。しかし、多すぎてすべてを利用することはないのも事実だ。

私を例に挙げよう。私はDropboxを使用しているため、Windows PCで空っぽのOneDriveフォルダーを見ると罪悪感を覚える。OneDriveは素晴らしいかもしれないが、iOSとAndroidでMicrosoft Officeが以前からDropboxをサポートしているので、2つのクラウド・サービスにファイルを保存する理由はなかったのだ。

文句なしに素晴らしいストレージが自分のパソコンで使われないままなのは恥ずかしいことのように思える。だが、あまりにも多くのサービスを使いすぎると、ひどく面倒なことになってしまう。ハード・ドライブ上のローカル・フォルダは言うには及ばないが、私はDropboxとGoogle Driveとでファイルを分けて保存している。さらに一つ追加しても、煩雑になるだけだ。

MTIxNDI3Mjk1NTM3MzY2NTQx

したがって、ユーザーがクラウド・ストレージを選ぶのに苦心しているとすれば、同じように開発者がどんな困難を抱えることになるか想像してみてほしい。

アマゾンが自社のクラウド・サービスに対して扉を開いたのは、既にそれを利用しているユーザーにとっては大きなメリットだ。しかし、どのような場合でも、選択肢がありすぎると災いとなる。開発者がサービスをサポートするごとに、アプリ開発には時間、コスト、複雑さが加わっていく。ある特定のサービスを利用するユーザーがあまりにも少なかった場合、アプリが失敗する可能性もある。つまり、努力が無駄になってしまうこともありえるのだ。

一方、人気クラウド・サービスを全部サポートしていない開発者は、既にどのクラウドを使うか決めている私のようなユーザーを失望させることになるだろう。そして、多くのユーザーを獲得するには、主だったものならばもちろん、可能なものはできるだけ多くサポートするのが開発者の義務だ。

選択肢があるというのは、概して良いことだ。しかし、良い選択肢が多すぎる時もある。あまりにも似たような選択肢が多すぎると、ドングリの背比べということになりかねない。

画像提供:
トップ画像:Olivier Noirhomme on Flickr
Amazon Cloud画像:Amazon
Dropbox:Dropbox

Brian P. Rubin
[原文]

※本記事はReadWrite Japanからの転載です。転載元はこちらをご覧ください。

※本ニュース記事はReadWrite Japanから提供を受けて配信しています。

連載バックナンバー

Think ITメルマガ会員登録受付中

Think ITでは、技術情報が詰まったメールマガジン「Think IT Weekly」の配信サービスを提供しています。メルマガ会員登録を済ませれば、メルマガだけでなく、さまざまな限定特典を入手できるようになります。

Think ITメルマガ会員のサービス内容を見る

他にもこの記事が読まれています