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  ReadWrite Japan

「ペット自動エサやり機」の失敗からIoT開発者たちは何を学ぶのか

2016年8月19日(金)
ReadWrite Japan

ペットの自動エサやり機サービスを提供しているPetnetシステム障害の件で、ここ数日、米国内ソーシャルメディアやニュースサイトはざわついている。コネクテッドデバイスの「信頼性」に疑問が投げかけられているのだ。

事の発端は、水曜日のPetnetからのメール(引用)に腹を立てたオーナーのツイート(右下画像)である。

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「定期的、あるいは遠隔地からの給餌に支障をきたすこともあります。問題の際はご自身でペットの給餌を行っていただくようお願いいたします。」

Petnetは「ペットの健康管理のためのセンサー技術、学習アルゴリズムおよび処理能力」をサービスとして提供しており、連携アプリを通じてエサやりのスケジュールをカスタマイズし、オーナーはエサやりの際やエサの残量が無くなってきたときにアラートを受けることができる。飼い主の帰宅が遅くなったり、早朝に起きるのを避けたり、休暇に出かけるときなどのケースを想定して作られたものだ。飼い主が怒り狂ったのも理解できる。

PetnetのCEO カルロス・ヘレラ氏によると、Googleからレンタルしていたthe third-party server serviceが10時間ほどダウンしており、冗長化がなされていなかったとのことだ。さらにPetNetは、緊急時のワークアラウンドを用意するつもりだったとThe Gurdianは報じている。ヘレラ氏が言うには、今回の障害で影響を受けたのは顧客の10%であり、サービスダウン中もエサやり器は設定されていたスケジュールで機能するはずだとのことだ。しかし、実際のところユーザは遠隔からのエサやりやスケジュールの変更を行えない状態であったという。

「コネクテッドペット」の登場

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ウェアラブルやコネクテッドデバイスが当たり前の時代において、コネクテッドペットの存在は真新しいものではないだろう。飼い主はペットの健康状態や何を欲しているかについて、より詳しく知ることができるようになっている。

かつてのエサやり機はデジタル化されたものに取って代わられ、単にエサと水を定期的に与えるだけでなく、ブランドによってはその消費量をチェックして残りが少なくなれば通知を出したり、ペットの写真や動画を撮ったり、携帯やノートPCを使っての会話や、画像認識技術を使ってペットのことを見分けたりもできるようになった。なかには、RFIDタグを使ってペットがエサを横取りするのを防ぐ機能をもつものまである。

市場にはペット関連の製品が溢れかえっており、この記事を書いている時点でKickstarterには150以上の投資を求めるプロジェクトが存在する。しかし、今週の技術的障害で、ペットたちが危機にさらされる可能性にあまりにも目が向けられていなかったことがあらわになってしまった。

Petnetの失敗から学べること

「バカのインターネット」という言葉を耳にしてからだいぶたつが、Twitterでは多くの人々が今回の件についてこの言葉を当てはめている。インターネットの接続性やWiFi、家の停電から再起動が必要になるケースなど、コネクテッドデバイスのハードウェア設計で起こりうる障害について考えておくことは必須である。これらのケースは想定されておくべきことであり、システム障害の可能性、あるいはインターネットの接続性の失敗についても、最悪のケースを設計段階で考えておき、いざというときはバックアップしておいたスケジュールをローカルで参照できるようにするなどの備えがなければならなかったはずだ。

これは書いておくべきことだと思うが、たしかにPetnetは妥当な時間内に彼らのサーバの問題を解決できたかもしれないが、その一方で、飼い主たちのストレスを過小評価することはできない。IoT反対派にとっては、家でエサをもらえずに惨めな思いをしている子猫や子犬の写真を投稿するうってつけの機会ともいえる。TwitterやFacebookの更新、メールでのサポートで人を安心させることは難しいだろう。しかしながら、Petnetが顧客に直接コンタクトし、システムは復旧したということを伝えたのは評価されるべき点である。

今回、顧客にとってもっとも教訓になったことは、購入したコネクテッドデバイスの規約、特にリスクに関する部分をよく読むべきという点である。規約にはサービスに関する妙な制限事項が記載されており、事実上Petnetはサービス障害の影響について何の責任も負わないことになっている(青フィルター部分該当):

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また、自動エサやり機が今後も製品として成立するのかということ自体も別の問題として上がってきている。複数種のペットを飼う家庭ではそれぞれに与えるものが異なり、これに対応している製品はほとんど無い。さらにペットとの日常生活におけるこれまで通りの問題もある。

オーナーにとってエサはペットのしつけに有効な手段だろう。猫のようにいわゆるしつけの効かない動物などは尚更かもしれない。ただ、基本的に動物は人にお世話される必要があり、犬の場合はさらに遊びと運動も必要だ。今回のコネクテッドデバイスの障害は、ペットとの関わり方を見直す機会となるだろう。そして、エサやり機だけではない、我々の生活必需品となるIoT製品の開発者に「考えるべきこと」の示唆を与えたはずだ。

ReadWrite[日本版] 編集部
[原文4]

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