自動運転車が人の仕事を奪う?いや、トランプ大統領は雇用創出の機会と捉えている。
高度に自動化された乗り物(Highly Automated Vehicles、以下HAV)は社会にさまざまな利益をもたらすが、これにより失業者が生まれるという懸念もある。先日、McGuireWoods社で自動運転車部門の主席を務めるElliot Katz氏に、HAVの配備とそれにまつわる失業の問題、そして米国政府がこれについてどう取り組むべきか話を聞いた。
ReadWrite(以下RW):社会に多くの利益をもたらすにも関わらず、自動運転車が労働者にもたらすインパクトを人々は懸念しています。これについて何か意見はありますか?
Elliot Katz(EK):HAVは交通事故や渋滞の緩和、大気汚染の改善、移動時間を仕事や家族に使えるようになるなど、新しい仕事を作り出します。しかしながらあなたが言うようにHAVによって職を失う人が出るという懸念を労組や政府が抱いているのも事実です。例えば運輸長官のElaine Chao氏などはこの件を深刻に捉えています。
RW:こういった懸念は的を射たものだと思いますか?
EK:自動運転車の普及やその他のテクノロジーの進歩は新たな職を生み出し、適切な政策と政府の対応があればHAVの広まりはより高いレベルの雇用を生み出すものだと考えています。
問題なのはHAVが広まる事で仕事を失うことではありません。きちんとした職業トレーニングを受けていない人が、HAVの普及によって生まれるより質の高い仕事に就くためのスキルを身につけられないかもしれないことが問題なのです。
RW:ドライバーがいなくなる将来に向け、政府は起こりうる失業問題に何か予防的アクションを取っているのでしょうか?
EK:これといって無いですね。数少ない対応の一つとしては、やり方が非常に問題なのですが、配備できるHAVの種類や台数に制限を設けたというのがあります。HAVが人から職を奪う事を恐れたためです。例を挙げると1万ポンドの重量制限を課し、自動化されたトラックの配備を制限する法令が提出されています。
RW:そうした政府の動きがなぜ問題なのでしょう?
EK:増加傾向にある交通事故を抑制するためにはあらゆる類のHAVの導入が必要だからです。去年米国で発生した交通事故は4万件とみられており、また国家道路交通安全局の見積もりではHAVならこういった事故の95%は防げていたと言われていることから 、道路を走るHAVに重量や種類による制限を設けることは受け入れられない選択です。
政府の適切な対応によって回避できる雇用のリスクのためにHAVの展開に制限を設けることは、より多くの命を救うことになるという利点を失うのみならず失業問題に向き合うことにもなっていないのです。商務省によると米国の労働者の中で、HAVの登場による影響を受けるであろう人は1500万人以上いるといいます。よって失業問題に今向き合うことは非常に重要なのです。単にHAVの展開に制限を設けることで短期的解決を図ったところで、HAVが将来一般的なものになるという流れが避けられない以上、問題の本質的な解決にはなりません。また人々もやがて車を自分で運転しなくなるため、それまでに政府は対策を行わなければなりません。
RW:こうした潜在的問題に対し、政府はどのような手を打つべきだと考えますか?
EK:政府は職業トレーニングプログラムを用意し、HAVの登場で生み出される新しい職業に人々が対応できるスキルを身につけさせるべきだと考えます。
RW:それは可能でしょうか?
EK: 可能です。トランプ大統領は7月に、投資の積み増しや業界主導のプログラムなどを通じて連邦政府が労働者育成を促進するための大統領令にサインしました。自動運転車が広まることで新しい雇用の機会が生まれるため、今回の大統領令はより高いレベルの雇用をもたらすトレーニングの実現する完璧なチャンスといえます。
RW: 政府が今すぐアクションを取ることが大事だと考える理由はなんでしょうか?
EK:トランプ大統領は海外に仕事を回していると噂される企業を繰り返し批判してきました。もし米国の労働者の教育のために何もアクションを起こさないのであれば、大統領が雇用を奪う自動運転車にその矛先を向けるのは時間の問題でしょう。HAVが社会にもたらすポジティブな影響は大きなものであり、HAVの普及を阻んではいけないのです。
ほんの週数間前、インドの交通・高速道路相は、インドで自動運転車を許可しないと明言した。テクノロジーが人から職を奪うと考えたのがまさにその理由です。これまでに述べたことからも、私はこれは間違えたアプローチであると考えています。とりわけ悲しいことにインドでは2015年に15万件の交通事故が起きてます。私は米国で同じことが起こって欲しいとは思いませんし、人の命を救う自動運転車が同じように米国で制約を課せられるのを望みません。
Elliot Katz氏はMcGuireWoods社の自動運転車部門の主席を務めており、その役割から自動車メーカーやテクノロジー企業、ライドシェアリング会社の他、自動運転車や交通エコシステムに関する自治体の法的問題などに対してコンサルティングを行なっている。HAVの社会的・経済的重要性からこれを推奨する彼は、米国や世界中の自動運転車イベントで頻繁にスピーチを行なっている。
ReadWrite編集部
[原文4]
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- IoTが汚染からインド市民を救う? 政府が掲げる「Made in India」構想へ募る危機感
- 第1回 ホロス2050未来会議「第1章 ホロス2050とは? /BECOMING」レポート
- スマートな会議室にホワイトボードは要らない
- サイバーセキュリティについての5つの予想
- 「ストーリーテリング」を使ってビジネスを有利に展開する方法
- IoTで音波通信を実現するChirp(2)
- VRトレーニングアプリが現実のものになるまで
- 「動画コンテンツ」には200億ドル規模のチャンスが眠る – IoTが市場にもたらす「チャンスとリスク」とは
- 世界9カ国26社の「femtech」プロダクトが一堂に。広がるfemtech市場の「いま」を知る ―Femtech Fes! レポート
- 世界経済フォーラムが第4次産業革命に向けセンターをオープン