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| SLAの採用動向 | ||||||||||||||
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さてITサービス市場においてSLAが脚光を浴びることとなったのは、2000年前後のサーバホスティングや通信ネットワークの分野が発端であったと思われる。インターネットの浸透に伴い、クライアントサーバ型にかわってn階層アーキテクチャのWebインフラストラクチャが普及した。 これによりWeb関連市場が拡大し、大規模なインターネットバックボーンと堅牢なサーバ設置環境を備えるデータセンター事業者が台頭することになる。この時、差別化を狙った米国のデータセンター事業者が、自社のホスティングサービスに対してSLAを提示することで付加価値の向上をはかり、それが国内市場にも波及した。 家電製品に保証書が付くのはいまや当たり前のこととなっているが、その当時のITサービス市場においては挑戦的な試みであった。家電市場では、保証書が付いていると売れ行きがよかったため普及したが、データセンター市場のSLAも同じ効果を狙ったものだ。 ところで、ホスティングなどの分野がSLAの発端となったのは、これらのサービスがSLAに適合しやすいとの理由もある。SLAの提示により販売力の向上が期待できるのは確かだが、サービスレベルを保証する以上は当然ながら違反時の補償というリスクもつきまとう。従って、SLAはサービスレベルのコントロールが容易な分野に適用する方が、提供者にとって有利といえる。 個別のアウトソーシングよりも汎用性の高いサービスの方が、これまでの運用実績が蓄積されていることもあり、目標をコミットしやすいからだ。またアプリケーション層よりもインフラ層のサービス方がコントロールを効かせやすいことからもSLAに適している(図2)。 ![]() 図2:ITサービス市場に広がるSLA 出典:ITR 昨今では、個別に提供されるアウトソーシング分野でも、SLAを前提とした委託契約が多く見られるようになった。アウトソーシングベンダーに対象システムの運用経験がない場合は、SLAの本番化に1年程度の猶予を設けて、安定期に入り監視データが備わった段階でSLMを開始するのが一般的である。 |
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| 期待される効果 | ||||||||||||||
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以上のように、国内では企業のIT部門とベンダーとの間でSLAを締結する動きが活発化した。しかしSLMの要件は決してベンダーに対するサービスレベルの確保だけをいっているのではなく、IT部門がユーザ部門に対しても同様に振舞うことも求めている。適切なSLMを実行することは、企業経営におけるIT活用の質を向上させることにもつながるからだ。 これまでIT部門は、日増しに増大するユーザ要求と責任を取りたがらないベンダーとの間に立ち、翻弄させられることも少なくなかった。ベンダーとの間には依存・馴れ合いの関係になる傾向があり、適正な評価・改善の機会を見いだせないという問題も抱えていた。 これには、「ITサービスの水準を正確に表現する方法がなかったこと」や「それを保証する仕組みがなかったこと」が一因であったといえよう。ITサービスを目に見える形で記述し保証するSLAの活用は、こうした課題を解決する効果的な方法の1つである(図3)。 ![]() 図3:SLMによる改善効果 出典:ITR 情報システムが企業経営の根幹を担いつつある今、IT部門は自己の価値を積極的に訴求することで、ベンダーやユーザとの良好なパートナーシップを構築していくことが求められる。そのためには、依存や馴れ合いの関係から脱却し、提供するサービスに責任を持つことで独立・共存の関係を模索すべきであると考える。 IT部門がユーザから信頼を勝ち取ることを意図した時、SLMの導入を視野に施策を検討することは決して無駄ではない。そして両者の間に良好な関係性を築くことができれば、それはプラスの循環を招き、ITは一層企業経営に貢献することとなるであろう。 |
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