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SLAによるITマネジメントのあり方
第6回:SLMの目指すべき姿
著者:
アイ・ティ・アール 金谷 敏尊
2007/5/11
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BSMのロードマップ
BSMは、ITインフラ管理の周辺的な機能ではない。むしろ、様々な管理機能を連携させて実現すべきITインフラ管理の実装形態である。米ITリサーチ会社のForrester Researchでは、BSMの構築にあたっては以下の6つの要素が礎となると見ている。
BSMの構築に必要な要素
詳細
IT資産管理
IT資産管理を整備して、ITインフラを形成している様々なコンポーネント(サーバ、ルータ、クライアントなど)の実態を把握する
ITIL
ITILによって、社内ITサービスの提供プロセスを確立し、標準化ならびに最適化を実践する
SLM
SLMを通じて、提供している社内向けサービスが一定のサービスレベルを確保しているかどうかをIT部門が判断する。これには、エンドユーザが体験するレスポンスタイムの評価なども含まれる
自動検出機能
自動検出とは、アプリケーションとITインフラの自動マッピングを行うことを指し、これによりビジネスプロセスとインフラコンポーネントを紐付ける
構成管理データベース(CMDB)
CMDBには、各種IT資産、アプリケーション、サービス、およびそれらの動的なリンクに関する情報を集約し、格納する
ビジネスプロセスマッピング
BSMを完全なものとするには、ビジネスプロセスマッピング機能が不可欠である。これにより、BSMシステムで行うパフォーマンス測定の基準を、ビジネス用語で定義することができる
表1:BSMの構築に必要な要素
求められる段階的なインフラ整備
Forrester Research社では、売上高10億ドル以上の大企業においてBSMシステムが成熟する過程をS字型カーブであらわしている(図2)。ここでの大企業におけるBSMの導入率については、2005年の推定値と2008年および2010年の予測値を示している。
図2:BSMの確立に向けたITインフラ整備度の予測
出典:Forrester Research
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)
これらのデータを元に、BSMの導入は以下の5段階を経て進んでいくと考えられる。
段階
状態
概要
第1段階
混沌
ITマネジメントの正式なプロセスはまだ限られたものしか確立されていない。そのためIT運用におけるコミュニケーションキャップが多く、SLAの遵守状況をリアルタイムで確認する手立てもない
第2段階
受動的
基本的なIT資産の棚卸しはプロジェクト単位で実行され、ITILのプロセスも基礎的なもの(インシデント管理など)だけが導入されている
第3段階
安定
事業部門に対しどのようなITサービスを提供すべきかが把握され、インストール、移行、変更などの運用プロセスに関する基本サービスの提供方法が確立されている。サービス提供の最適化にはITILが用いられ、ITILのプロセスに則った構成管理が行われている。
第4段階
能動的
ビジネスサービスのフレームワークが実装されている。またITILの枠を超え、ビジネスニーズにIT運用が対応するためのあるべき姿について、IT部門が真に理解する方向に向かっている
第5段階
成熟
様々な事態を予測可能な状態といえる。この段階では、すべてのIT活動(投資、プロジェクト、運用、メンテナンスなど)が可視化できるダッシュボード機能、IT作業の要求を集約して割り当てる機能、ビジネスのニーズにしたがってリソースを最適配置することで、IT不良資産を排除する機能といった様々なツールやプロセスが導入されることとなる
表2:BSMの導入段階
BSMの進捗状況を示すS字型カーブは、各段階を順次進んでいくように描かれているが、実際にはビジネスの要件に応じて、複数の段階が同時並行で進むことも多いと考えられる。このため、BSMの導入においては、各プロジェクトで導入する技術や組織変更(変更予定も含む)についてプロジェクト間で充分な意思疎通を行い、調整をはかることが望まれる。
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著者プロフィール
株式会社アイ・ティ・アール
金谷 敏尊
シニア・アナリスト
青山学院大学を卒業後、マーケティング会社の統括マネージャとして調査プロジェクトを多数企画・運営。同時にオペレーションセンターの顧客管理システム、CTIなどの設計・開発・運用に従事する。1999年にアイ・ティ・アールに入社、アナリストとしてシステム・マネジメント、データセンター、アウトソーシング、セキュリティ分野の分析を担当する。著書「IT内部統制実践構築法」ソフトリサーチセンター刊。
INDEX
第6回:SLMの目指すべき姿
進化するSLM
BSMのロードマップ
管理ツールの将来像