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事例から学ぶBCMの本質

第4回:ハリケーン・カトリーナ災害から学ぶ〜小売企業の対応事例

著者:みずほ情報総研  多田 浩之   2007/2/23
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ハリケーン・カトリーナ危機に対するBCMに成功した米国企業

   「第3回:ハリケーン・カトリーナ災害から学ぶ〜ホテル会社の対応事例」では、スターウッドホテルの事例を紹介しました。今回は、ウォルマートのハリケーン・カトリーナ災害に対するBCMの成功事例について解説します。

   なお、これから述べる事例は、これまでと同様に、上院の聴聞会のビデオ・資料およびその他公開情報に基づき、筆者の判断で整理したものであることをあらかじめお断りしておきます。

ウォルマートが被ったハリケーン・カトリーナによる被害

   ウォルマートは、アーカンソー州ベントヴィレに本社を持つ、世界最大の小売企業です。同社は、大規模ディスカウントストアあるいはスーパーマーケットとして国際的に展開しており、世界で6,000以上の店舗(米国内では3,800以上)を運営し、従業員数も310万人(2006年12月現在)に達しています。

   同社は、171の店舗が被災し、また2箇所の配送センターが全壊、3万4,000人以上の従業員が被災するなど、大きな被害を受けました(表1)。

  被害の概要
被害状況
  • 171の店舗(ニューオリンズ市内の12店舗を含む)が被災(停電、浸水など)。うち、63%の店舗が損壊(一部損壊を含む)。
  • 全米10箇所にある配送センターのうち、2つのセンターが全壊。
  • 従業員3万4,000人以上が被災。
復旧
  • ハリケーン・カトリーナ再上陸後(注1)48時間で、被災した店舗の66%を復旧。
  • ハリケーン・カトリーナ再上陸後6日間で、被災した店舗の83%を復旧し、営業再開。
  • ハリケーン・カトリーナ再上陸後1ヶ月間で、被災した171店舗のうち、161店舗の営業再開。

※注1: ハリケーン・カトリーナは、最初にフロリダ半島に上陸し、その後メキシコ湾に抜けてルイジアナ州南部に上陸した。再上陸後のメキシコ湾沿岸地域の被害が甚大であった。

表1:ハリケーン・カトリーナによるウォルマートの被害状況
(上院聴聞会のビデオ・資料、その他公開資料を参考にみずほ情報総研作成)

   しかし、同社はハリケーン・カトリーナがフロリダ半島に上陸する2日前から予防的な対策を実施し、十分な準備を行っていたため、応急対策、救援・業務用物資の配送、復旧活動などを迅速かつ効果的に行うことができました。

   このためハリケーン・カトリーナが再上陸した後、48時間で被災した店舗の66%を復旧させることに成功し、再上陸後6日間で被災した店舗の83%が復旧し、営業を再開することができました。

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みずほ情報総研株式会社 多田 浩之
著者プロフィール
みずほ情報総研株式会社
多田 浩之

情報・コミュニケーション部 シニアマネジャー
1984年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)大学院工学研究科修了、富士総合研究所(現みずほ情報総研)に入社。専門は非常時通信、危機管理および産業インフラリスク解析。現在、ICTを活用した産学連携安全安心プラットフォーム共同研究に携わる。中央防災会議「災害教訓の継承に関する専門調査会」下の小委員会・分科会委員、内閣府「消費者教育ポータルサイト研究会」委員などを歴任。


INDEX
第4回:ハリケーン・カトリーナ災害から学ぶ〜小売企業の対応事例
ハリケーン・カトリーナ危機に対するBCMに成功した米国企業
  ウォルマートのBCMの基本方針とその対応
  ウォルマートがハリケーン・カトリーナ危機において実施した具体的な応急対策・対応の例