リスクを先読みしたプロジェクト管理
リスク管理を意識しながら、設計~テスト・フェーズを進める
プロジェクトが進むにつれて、さまざまな問題・課題が発生します。機能要件などのユーザーと共有する課題だけでなく、開発プロジェクト内で発生する問題・課題もあります。これらを含め、プロジェクトで発生する問題・課題を、課題管理として一元管理します。
課題が一元管理できていない場合、設計担当メンバー間で認識が異なってしまうリスクがあります。こうして、手戻り作業が発生します。特に設計フェーズでは、機能要件に意識が集中しがちですが、サーバー設計やデータ移行設計なども、このタイミングで並行して進む可能性があります。注意が必要です。
SI Object Browser PMのようなプロジェクト管理ツールを導入している場合は、リスク管理と同様に、課題管理として、影響度や発生確率、対応難易度、対応期限などを設定します。
図3: SI Object Browser PMの課題管理画面(クリックで拡大) |
課題管理で注意すべき点は、対応者と対応期限を明確にすることと、対応期限を定期的にチェックすることです。SI Object Browser PMでは、課題管理機能が進ちょく報告管理と連動しているため、発生課題数と課題残数の情報は、進ちょく報告画面で確認できます。
「明確な対応期限がない」という理由で「ASAP」(As Soon As Possible、できるだけ早く)としておくのは、あまりお勧めできません。対応期限がないと、手を付けません。「気付いた時には、後フェーズに影響が出る状態になっていた」ということがないよう、「対応期限が明確になっていないこと自体がリスクである」という意識を持つべきです。
ユーザーと積極的にコミュニケーションの機会を作り、情報を共有することも重要です。当たり前ですが、議事録を必ず作成し、ユーザーとの会議の中で、議事録と課題管理を共有しましょう。課題によっては、ユーザーに仕様を決めてもらうこともあります。
プロジェクトを進める中で、仕様変更や追加要件が絶対にないとは言い切れません。仕様変更や追加要件に対して、できるだけ早く要件をヒアリングできる情報共有の場があると、全体のスケジュールに影響が出ないように調整することも可能です。
プロジェクトの開始時に洗い出したリスク管理を定期的に確認することも大切です。個々のリスクはスケジュールとヒモ付けられており、チェックすべき項目が明確になっているはずです。リスクが回避されているかどうかを確認し、回避されていなければ、さらなる回避策を検討・実施します。ここでリスクを回避しておかないと、2次リスクが発生し、全体のスケジュールに影響が出てしまいます。
最後に
設計~テスト・フェーズでは、メンバーの作業負荷が増えます。仕事をしやすい環境を作り出すためにも、メンバーのメンタル面の支援を常に心がけましょう。
プロジェクトを進めることとは直接関係ないように感じますが、メンタル面でのケアにおいても、上司・部下を問わず、コミュニケーションを積極的に行うことが重要です。メンバーが不安に感じている部分があれば、社内調整などを行うことで、少しでも健全な環境を作り出すことを意識すべきです。
プロジェクト・リーダーは、常にリスクを考えながら作業を進めなければならない、精神的にもきつい立場です。しかし、プロジェクトが無事にリリースできたときに、ユーザーやメンバーの喜びを共有できることは、素晴らしいものです。
今回のリスク管理の解説、加えて、第1回や第2回の解説によって、読者のプロジェクトが円滑に進むと幸いです。