バックアップ運用がもたらす復旧への影響

2011年6月21日(火)
関 信彦

時間と費用のトレードオフ?

リストアの時間が復旧作業に大きな影響を与えることから、復旧に向けた仕組みを見直す必要が出てきます。リストアの時間がボトルネックだとしたら、このリストアの時間を短縮する、究極的にはリストアの時間をなくす方法は何が考えられるでしょう?(図3)

時間短縮となれば、メディアからの読み取りの速度が速いディスクベースのソリューションを考えられます。これらの多くは、従来のバックアップソフトを通じて、ディスクにバックアップされますので、リストアも、バックアップソフトを通じた操作の上で、しかるべきサーバーの元なり、サーバーが見に行くことができるストレージへ書き戻すことが前提になります。つまりは、時間短縮にはなるも、本質的にはリストアがなくならないので、データが増加していくに従いリストア時間も増加することは変わりがありません。

つぎに、リストアの時間をなくすとした場合、データの複製を持ち、いつでもその複製を使えるようにすることが実現できれば、究極的には書き戻しの必要がなくなりますので、リストア時間をなくすことができます。そのためには、高額なディスクとディスクのストレージリプリケーションのソリューションを用いて、遠隔地にデータを常時移し、有事の際に遠隔地でサイトを立ち上げる。費用、設備面でコストが掛かるが、業務とのトレードオフで選択の一つとはなります。

現状のバックアップ運用の仕組みの延長では、アーキテクチャ上リストアという作業をなくすことができず、また、リプリケーションを用いた対策となると費用面での問題もあり、対策の費用対効果という側面で選択は厳しいものになります。ただし、これら既出の仕組み以外にも柔軟に、しかもコスト的にも廉価に対応できるものがあります。

図3:リストアをする前提ではその時間がボトルネック

適切なソリューションの適用

私が属するFalconStorでは、CDP(Continuous Data Protection; 常時データ保護)ソリューションとして、FalconStor CDPを提供しています。FalconStor CDPは、復旧をいかに早めるかを目的としたディスクベースのシステム・データ保護ソリューションです。保護対象のシステムと同じサイトに設置することで、ローカルでのシステム・データの保護はもちろんのこと、遠隔地にこのソリューションを設置し、ベストエフォートタイプの回線で結べば回線コストを低額に抑えながらの安価なリプリケーションシステムを構築できます。よって、ローカルと遠隔地にそれぞれ設置することで、ローカル側での復旧、遠隔地での復旧・業務再開に対応します。

詳細は次回にしますが、暫定復旧に向けてデータのリストアをするのではなく、常時ミラーディスクを特別な方法で更新をし、有事の際は、そのミラーディスクをサーバーにマウントするという手法によって、データ量がどんなに増加したとしても復旧に関わる時間は変わらずに一定の作業時間、10数分として見積もることができます。

仮に前ページのシンプルな想定で復旧の損出を試算してみるとどうでしょう。ざっくりと、システムや業務アプリケーションの再起動であったり、テストで消費したりする時間を、仮に3時間のままで、暫定復旧のためのリストアの時間がFalconStor CDPによって、1時間未満で、ほぼなくなったとしたら、「100億円×1/365日×3/24時間」の計算から約342万円となります。容量の増加に伴う時間変動はないので、復旧に向けた時間に影響を与える変動要素はなくなり、運用もかなりシンプルになります。

コスト的にも従来のストレージレプリケーションで代表されるような、高額なシステムの購入、運用費からなるTCO比較では約半額で導入が可能です。

次回は、このFalconStor CDPをもう少し紹介していきます。

【参考文献】

伊藤毅 「ITへの落し込み BCPを自社の情報システムにどう落し込むか」
『ビジネスをとめるな!事業継続実践ハンドブック』 日経BP社 (2009)

ファルコンストア・ジャパン
外資サーバベンダーとソフトベンダーにてシステムアナリスト、プロダクトマネージャ、プロダクトマーケティングという職域で日本のITビジネスに長年携わる。2009年9月より現職。現在、BCPをはじめとした昨今のニーズに合った新しいデータ保護(バックアップ&リカバリ)の市場開拓、マーケティング業務に携わる。
http://www.falconstor.co.jp/

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