クラウド化でシステム運用担当者は業務量が減る?

2014年4月11日(金)
株式会社アールワークス

クラウド化でシステム運用担当者は業務量が減る?

これらクラウドサービスのメリットは、システム運用担当者にとっての福音となるだろうか?

前述したように、パブリックとプライベートの両クラウドのメリットにはコストダウンが含まれているが、第2章の「5つの大間違い」でも述べたように、これはあくまでもサービスやシステムインフラを利用するためにかかる費用の圧縮であり、システム運用担当者の労働時間の圧縮と直接的な因果関係はない。言い換えると、クラウドの導入には、運用担当者の業務量を減らすような効果は期待できない、ということである。

この点については、「いや、クラウド化によってハードウェア障害に対する対応がなくなったり、自動拡張機能によってシステムリソースを管理する必要もなくなる。だからシステム運用担当者の負荷は減るのではないか?」といった反対意見もあると思う。だがそうではない。それらは、システム運用担当者が担うべき「システム運用」の、ほんの一部に過ぎないからだ。

それでは、クラウド化によってもなくなることのない「システム運用」とは、何を指すのだろうか。

運用対象の「システム」

「システム」という言葉は便利な言葉で、ITシステムと言えば、およそコンピューターを使って構築し稼働するものすべてを指すことになるため、誰がそれを管理するのかが不明瞭で、結局は情報システム部門で、その多くの役割を担うことになる。

だが、本当にそれでよいのだろうか。

資産管理を行うのは資産管理部門の仕事であって、資産情報をシステムへ登録するのは、システム運用担当者の仕事ではないのだ。「新しい社員が入社したので新人がスケジュール管理システムを使えるよう、ユーザー登録する」これは、本来、人事部門の仕事ではなかっただろうか。

このようなアプリケーションやサービス自体は、確かにITシステムの一部ではあるが、システム運用担当者の領分ではない。それでは、システム運用担当者の担当範囲はどこまでなのだろうか。

図2を見ていただきたい。運用担当者が担当すべき「システム」は、サーバーやネットワーク機器などのハードウェアやOS、ミドルウェア※2、それらを繋ぐネットワークを指す。それよりも上の層のサービス自体の運営や管理は、そのサービスを利用する部門の役割となる。ただし、あらゆる業務がそうであるように、システム運用担当者がアプリケーションやサービスなど、担当外のことを知る必要がないということではない。当然、自分の担当範囲と他者の担当範囲は重なる部分が必要で、そういった人物こそが大きく役割を果たす場面も多い。

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図2:システム運用担当者の担当範囲

※2 ミドルウェア:Windowsであればメール(Exchange)やデータベース(Microsoft SQLServer)、ディレクトリーサービス(Active Directory)であり、LinuxであればHTTPサービス(Apache)やデータベース(Oracle)、ドメイン情報管理システム(BIND)などを指す。

「運用」とは

「運用」と聞くと、「社内システム利用上のサポート窓口」「システム維持に関わる日常の定常作業」「障害時の対応」といった項目が思い浮かぶ。これらは、確かに従来から「運用」と呼ばれてきた項目ではあるが、運用の本質を表しているわけではない。

端的に言ってしまえば、

運用とは「企業のビジネス規模に応じたサービスが提供できるよう、システムのライフサイクルを管理すること」

である。

著者
株式会社アールワークス
1985年に株式会社アステックとして創業。2000年10月の株式会社アールワークス設立を経て、2005年6月より現在の1社体制に移行。同時に、社名を(株)アールワークス(Rworks, Inc.)に変更。
設立以来、IDC事業やITマネージドサービスを行い、そこで培ったネットワークインフラの運用ノウハウや、さまざまなソフトウェアを開発した技術力を結集し、現在、ITシステムのリモート運用サービスをはじめとして、インフラ構築、ハウジングやホスティングサービス、SaaS/ASP型のシステム監視基盤の提供を行う。単純なオペレーターではない技術提供をベースにした24時間365日の統合的なフルマネージドサービスを提供している。

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