新人社員が複数の部門システムに関わり学んだ運用の重要性

2014年5月8日(木)
株式会社アールワークス

システム運用を組み込んだキャリアパス

簡潔に言えば、まず各部門が利用するITサービスは各部門で管理する、ということだ。これまでITは、一括りにとらえられ、それをシステム運用部門へ集約したことで一定の成果を上げたが、ITは今や仕事に必須のツールであり、アシスタントと同義の身近な存在だ。

いったいどこの企業がアシスタントを集約し、アシスタント部門を作ろうと考えるだろうか。ITサービスは極めて有能なアシスタントであり、より身近に置くべきものなのだ。

これからの企業人がキャリアを積んでいくなかで、コンピューターサービスをいかに活用していくかは、将来に大きな影響を与える。

例として営業部門へ配属された新人Aが、部門に任されたシステム運用を経験するなかでどのように成長していくのかを述べてみる。

新人社員Aの奮闘

新人社員Aは、営業部門へ配属されてすぐに営業として必要な基礎教育を受けた。その際、どの企業でも実施していることだが、ITリテラシーも併せて教え込まれた。「社員Aを外へ営業に出てもよし」となるには、当然営業系システムの利用が必須だ。顧客管理や日々の営業活動の成果を記録していくシステムやスケジュール管理システムなど、様々なシステムを利用することになる。

自分が登録した顧客情報を、どのように活用しているのか、それが利益とどのように結びつくのか、などを日々繰り返し説明された。しかし、そうは言っても、「なぜ毎日情報を更新しなければならないのか」「このシステムには、手間ヒマかけているだけの価値があるのか」「営業は足で稼ぐものではないのか」。そんな疑問を持ちつつも、確実に営業成績を伸ばした新人社員Aは昇進し、メンバーを管理する立場となった。それに伴い、営業系システムの運用も任されることになった。

Aは、今まで利用してきたシステムがいかに企業利益にとって重要なものかを、本当の意味で理解した。「システム活用によって、より効率的に顧客情報が把握でき、各メンバーの動向もチェックできる」。

大きな武器を得たAは、チームを部門トップの営業成績を上げる集団へと成長させることに成功した。だが、システムをサイクルに従って運用しているうちに、徐々に疑念も降り積もっていった。「既存システムは、部門に必要な機能に対して、過分な部分があるようだ。アプリケーションは外注して作成した高価なものだが、日常的に活用できない機能も随所に見られる」。

Aが情報システム部門へ話を持ちかけると、本来他部門との連携を考慮して用意された機能だったが、やはり他でも活用されていない。システムベンダーによる調査の結果、これら活用されていない機能を搭載したシステム構成は、性能があり余っていることが判明した。Aは、着任から数年後、システム更改にあわせて、それらの問題点を部門長に訴えかけた結果、システム刷新を任されることとなった。当然、専門家である情報システム部門の協力を要請し、自身では気づけない問題の解消も図った。

思った通り、システムは大幅なコストダウンを実現しつつ、営業部門全体の業務効率をより向上させることになり、企業利益に大きく貢献した。Aは、その後もシステム運用を武器に成長を続け、各部門のシステム運用を歴任し、ある日情報システム部門長職への打診を持ちかけられた。各部門の運用や業務に精通する彼には適任であり、それは将来のCIO、そしてCEOへのステップでもあるのだ…。

システム運用部門を設置する理由

いささかシステム運用の効用を誇張したエピソードになっている点はご容赦いただくとして、重要なのは、

  1. サービス利用者自身が最もよく業務を理解しており、サービスの問題点も知っている。
  2. サービスの問題点の根本がどこにあるかを知るためには、システム運用を通じてシステムの利点や欠点を把握する必要がある。

ということだ。

このように、結局は利用者自身がシステムを運用するのが最も効率的なのだ。社員ひとりに数役も求められる現在、大きく外れた論理ではないハズだ。それでは、システム運用部門自体が不要ということなのだろうか。少なくとも、新入社員は各部門の業務を知らないのでシステム運用担当者としては不適格である、ということは言えそうだ。このためシステム運用部門自体が不要とは言えないのである。

ここで、システム運用担当者の役割にもう一度立ち返ってみよう。それは前述したが、

企業のビジネス規模に応じたサービスが提供できるよう、システムのライフサイクルを管理する

だった。これにキャリアパスを考慮したうえで少し付け加えると、

企業のビジネス規模に応じたサービスが提供できるよう、各部門業務を理解し、部門間のシステム連携をも考慮しながら、各システムのライフサイクルを管理する

となる。この追加した部分こそが、システム運用部門を設置する理由である。なぜならば、システム運用サイクルは、全体最適を考えることによって一層の効率化が可能となるからだ。

システムは違っても、「監視「対応」「分析」などすべての段階において、そのノウハウは共通するものがあり、それらを情報システム部門は全社横断的に蓄積する。こうした役割を知り、遂行するシステム運用部門において、日々の障害対応を行ったり、ユーザーアカウントを管理する業務が残るとしても、それは担当者の業務ではない。この業務は、外注に任せてもまったく問題ないものであり、そのための大規模な人員は不要だ。

システム運用担当者には、少なくとも一部門の業務とそのシステム運用に精通している人物を他部門より招聘し、徐々に他部門にもその手を広げさせていく。その中には、改めて他部門へ異動する人物もいるだろう。だが、より業務に精通し、成長を続けるそれらの社員のキャリアのゴールは、システム運用部門長や他部門の長ではなく、経営層にあることは間違いない。

著者
株式会社アールワークス
1985年に株式会社アステックとして創業。2000年10月の株式会社アールワークス設立を経て、2005年6月より現在の1社体制に移行。同時に、社名を(株)アールワークス(Rworks, Inc.)に変更。
設立以来、IDC事業やITマネージドサービスを行い、そこで培ったネットワークインフラの運用ノウハウや、さまざまなソフトウェアを開発した技術力を結集し、現在、ITシステムのリモート運用サービスをはじめとして、インフラ構築、ハウジングやホスティングサービス、SaaS/ASP型のシステム監視基盤の提供を行う。単純なオペレーターではない技術提供をベースにした24時間365日の統合的なフルマネージドサービスを提供している。

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