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話題のMRデバイス「ホロレンズ」、エレベータ業界を変える

2016年11月13日(日)
ReadWrite Japan

ドイツのエッセンに本社を置く鉄鋼・工業製品メーカー ThyssenKrupp(ティッセンクルップ)は、同社が世界で展開しているエレベータサービスでMicrosoftの「HoloLens(ホロレンズ)」の使用を開始した。

現在の世界のエレベータサービス産業は年間440億ドル以上の産業であり、毎日、1200万台のエレベータが10億人以上を運んでいる。

特別なMRデバイスは、会社のサービス技術者の24000人以上がより安全、かつ、より効率的に仕事に取り組むことを実現し、都市と人々の暮らしをよりよいものにし続けている。

Microsoftのホロレンズは、Windows10が搭載された機能が一式揃った、初めての「装着型ホログラフィックコンピュータ」である。ワイヤレスで作動し、携帯やPCなどとの接続を必要としない。ホロレンズは現実世界にホログラムを投影し、新しい世界を見せてくれる。

ホロレンズを使うことで、サービス技術者は作業前にエレベータの問題箇所の可視化および特定をおこなえ、作業現場からリモートで技術的・専門的情報にアクセスすることができる。それは結果として、時間およびストレスの大きな削減につながっている。最初の実証実験ではすでに、サービスメンテナンスが最速4倍早くなったという結果を挙げている。

このソリューションは、すでに何千ものエレベータに導入されている業界初の予測的メンテナンスソリューション「MAX」の成功に続くものだ。MAXは接続されているエレベータからデータをリアルタイムで集め、そのデータをMicrosoftが推進している「インテリジェントクラウド」に保管することができる。

エレベータの主要な部品やシステムの寿命について複雑なアルゴリズムで算出され、どの部分がいつメンテナンスが必要になるかを割り出すことが可能だ。このMAXを使うことで、サービスエンジニアたちは、問題が起こる前にリアルタイムでアラートを受けることができ、顧客に対してより率先した対応をすることができる。これはエレベータが故障する前の定期メンテナンス作業やビル内での最小中断時間を含む。

このように、エンジニアはエレベータを休止することによる不満や不便をビルマネージャやユーザに感じさせずに済むだろう。

Microsoft Azure IoT部門のパートナーディレクター、サム・ジョージ氏は次のように言う。

「IoT化されたMAXの成功は、ThyssenKruppのビジネスだけでなく、100年の歴史がある業界そのものを変える第一歩となった。Microsoft Azure IoTによって実現される予測的メンテナンスにより、ThyssenKruppは世界中で1年あたり9500万時間多くのエレベータの稼働時間を確保することができた。業界を変えるソリューションを実現するためにThyssenKruppと、ともに再度協力できたことを誇りに思う。」

MAXによるクラウド接続されたエレベータが導入されている象徴的な建物には、One World Trade Centerも含まれる。このビルに入っているエレベータはウサイン・ボルトよりも早く動き、地上階から102階までわずか60秒で移動する。また、減速の際に生じるエネルギーを電力に変えることで、ビルのエネルギー消費を大幅に削減している。「MAX」と「HoloLens」の導入で、このビルは持続可能性と効率の新しい基準を提示している。

ThyssenKruppのCEO アンドレアス・シーレンベック氏は次のように言う。

「毎日10億人以上を運ぶエレベータというサービス産業は、都市の移動手段として重要な役割を担っている。我々はこの業界の変革をリードし、最新のテクノロジーを導入し、技術者たちがよりストレスなく、より楽しく仕事ができるような訓練やプロセスに注力していく。我々のゴールは効率を向上し、稼働時間を増やしメンテナンス時間を減らすことで、エレベータの持つ可能性を最大限まで引き出し機能させ、乗る人が極力安全で快適に移動できるようにすることだ。」

GeekWireによると、Microsoftの最高マーケティング責任者 クリス・カポセラ氏はThyssenKruppがHoloLensに興味を示したことに驚いたという。

「こういった需要があることを完全に見落としていた」とカポセラ氏は言った。「HoloLensを作ったチームの多くはXbox出身だ。アレックス・キップマンやクドー・ツノダもである。ということもあり、HoloLensをその延長線上で捉えていたのだ。だが、人に見せて回るに連れ、商業的な需要があるのだということに気づき驚くことになった。」

さまざまな人にデバイスを手にとってもらえる限り、HoloLensの商業的な活用はいくらでも考えられるだろう。技術の進歩とその実装を通じて、工事現場や工場、設計などの業界が変わろうとしている。

CATE LAWRENCE
[原文4]

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