ユーザーへの配慮を意識しよう
音にも気をつけよう
Flashは、視覚的な演出だけでなく、音も扱うことができます。ビジュアルと併せてエモーショナルな(情動に訴える)演出をする上で、音はとても効果的です。筆者の経験で、業務用音響機器(レコーディングスタジオやライブ会場で使うような音響機材)のWebサイトの制作ディレクションを請け負ったことがあるのですが、その際クライアントから、Flashを使ったナビゲーションメニューをどうしても採り入れたい、という要望がありました。
その理由ですが、メニューをFlashでインタラクティブに開く際に、デジタルミキサーのフェーダー(ボリューム調整つまみ)の動作音を効果音として出したい、という何ともマニアックなものでした。わかる人には、こういうギミックは「たまらない」のだそうで、これもエモーショナルなユーザーインターフェースの一例と言えるかもしれません(ただし、やりすぎは禁物ですが)。
このように音は、視覚的な演出をサポートし、よりエモーショナルにデザインする手段として、とても有効な場合があります。また、第2回(http://www.thinkit.co.jp/article/132/2/)の「コンバージョンに導く好例」で述べたように、ユーザー操作に対するフィードバックとして使っても効果的です。
ただし、音を扱う際には、次のことに注意する必要があります。
音を扱う上での留意事項
音を扱う上での留意事項は次の2つになります。
1つ目は、「無駄な音は使わない」です。
インターネットの黎明(れいめい)期(まだFlashがポピュラーではない時代)には、BGMが流れるWebページが多く存在しました。Flashを使ったWebサイトでも、クールな演出のために、ちょっとしたループ音をBGMとして流すケースが見られます。ユーザーのエモーションに訴えるために効果的な場合もあり、なかなか線引きは難しいところですが、あくまでもユーザーの目的達成の「手段」としてのWebサイトという観点で考えると、こういった音は往々にして無駄なだけのことが多いものです。さらに、ユーザーによっては、音そのものが邪魔になってしまう場合もあることに、留意するべきでしょう。
例えば職場でWebサイトを閲覧する場合など、音が出てしまうとユーザーにとって不都合(周りに迷惑)な場合があります。また、視覚障がい(失視)のあるユーザーが音声ブラウザやスクリーンリーダーなどの支援技術を使ってコンテンツを読み上げようとする場合、読み上げの音声がFlashの音と重なってしまい、肝心な情報をユーザーが取得できなくなる、というリスクも考えられます。デフォルト(単にユーザーが当該Webページを開いただけで、特に何のアクションも起こしていない状態)では、音を出さないようにするのが賢明だと思います。
2つ目は、「音の制御は、ユーザーに主導権を与える」です。
上記で述べたようにデフォルトでは音を出さないようにすることに加え、音に関する制御は、操作するユーザー側に主導権を与えるようにしましょう。例えば、ユーザーが何らかのアクション(クリックやドラッグといったマウス操作など)を起こしたときに初めて音が出るようにする、ユーザー自身が自由にボリュームを調整したりミュート(消音)したりできるように操作要素をわかりやすく/操作しやすく明示する、といった配慮が必要です。