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Solarisがオープンソースになる 〜 サンの戦略を読み解く
Solarisがオープンソースになる 〜 サンの戦略を読み解く

第1回:Solarisとオープンソース
著者:風穴 江   2005/6/16
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OpenSolarisがやってくる

   2005年1月、米サン・マイクロシステムズ社は、同社の主力OS製品である「Solaris 10」のソースコードをオープンソースライセンスで公開すると発表した。オープンソース化されたSolaris 10のソースコードは「OpenSolaris」と呼ばれ、2005年第2四半期末(2005年6月末)までに公開されることになっている。
編集局注: 本記事は2005年6月9日発売の「Solaris 10 完全攻略ガイド」(インプレス刊)に掲載されたものです。OpenSolarisは2005年6月14日(米国時間)に公開されました。

OpenSolarisのWebサイト(画像をクリックすると上記のサイトが別ウィンドウで開きます)
図1:OpenSolarisのWebサイト(http://www.opensolaris.org/)
(画像をクリックすると上記のサイトが別ウィンドウで開きます)



Solarisのオープンソース化とは?

   Solarisが「オープンソース」になるということは、単に、Solarisのソースコードが誰でも閲覧できるようになる、ということだけではない。

   そもそもサンは、2000年1月に発表したSolaris 8から、一般の開発者でも一定の条件に同意すればSolarisのソースコードを閲覧できる「Free Source Code Access」というデベロッパ向けサービスを提供してきている。従って、ソースコードの「閲覧」というだけでは、特に目新しいことは何もない。

   また、オープンソースという言葉から「無料で利用できる」という状態を真っ先に連想する人は、Solarisのオープンソース化を、Solarisが無償になることだと受け止めるかもしれない。しかしこれも誤解である。サンは、これもSolaris 8のころから、8プロセッサ以下のシステムでSolarisを使用することに関しては、エンドユーザーライセンスを無償としている(OSのCD-ROMメディア代は有償、またサポートサービスなどは別料金)。結局、「無償」という点についても今に始まったことではなく、今回の「オープンソース化」とは直接には関係がない。

   なお細かい話をすれば、Solaris 10では前述の「8プロセッサ以下のシステムに限って」という制限が撤廃されたので、8プロセッサよりも大規模なSMPシステムでSolarisを使用してきた人にとっては、「Solaris 10からエンドユーザーライセンスが無償になった」という実感はあるかもしれない。しかし、このことがオープンソース化と直接連動しているわけではないということに変わりはない。

   実際のところSolarisをインストールして使うだけのユーザーであれば、Solarisのオープンソース化は直接関係ない話であると言えるかもしれない。というのも、オープンソース化によって最も大きく変わるのは、Solarisの開発プロセスだからだ。


サンの狙い

   表面的には、「Solarisのオープンソース化」によって変わるのは、Solarisのソースコードライセンスだけだと言っていいだろう。新たに「CDDL(Common Development and Distribution License)」と呼ばれるオープンソースライセンスが適用されることになり、これまでは事実上「閲覧」することしか許されなかったものが、それに加えて、ソースコードの複製や改変、そして改変したものの再配布までも自由にできるようになる。

   もっとも当然ながら「できるようになる」ということと、それらが「実際に行なわれる」ということは別の話であり、改変が自由にできるようになったからといって、実際に改変する人が出てくるかどうかは、さらにさまざまな環境要因が影響するので一概には断言できない。しかし少なくとも、Solarisのソースコードライセンスをオープンソースライセンスに変更すること(=Solarisのオープンソース化)で、サンが何を目指そうとしているのかについては、同社自身が述べていることなどから、ある程度は明確にすることができる。


「オープンソース方式」の導入

   サンによると、Solarisをオープンソース化する狙いは、Solarisの開発に「オープンソース方式」を導入することにあるという。このことをサンは「Community Development Model」と呼んでいるが、要するに、開発作業をオープンにし、より多くの人がSolarisの開発に参加できるようにするということである。これによるメリットとして期待できることはいくつもある。

   まず単純に、開発に関わる「人的リソース」が増える可能性がある。これまでは、要望のような形で顧客からフィードバックを受けることはあっても、開発に関する実際の作業──アーキテクチャの設計や各機能の実装など──は、同社が単独で行なってきた。それが、Solarisをオープンソースソフトウェアとし、開発プロセスをオープンにすることで、「自社以外の開発者」にもSolarisの開発に直接参加してもらえるようになる。

   また、開発に関わる人間の数が増えれば増えるほど、確率的に、優秀な開発者の協力を得られる可能性も高まる。一般にオープンソースソフトウェアの場合、技術的に高度なスキルを発揮できる種類のソフトウェアであれば、それだけ多くの技術者の興味を引きつけることになり、結果として腕に覚えのある技術者が集まりやすい傾向にあるからだ。そしてOpenSolarisは、どちらかといえば、技術者の興味を引きつけやすい類のソフトウェアであることは間違いない。

   さらに、開発者の視点でソフトウェアを捉える人が増えるということは、潜在的なバグに気がつく可能性を持った人が増えるということでもあり、間接的にではあれ、開発の効率を向上させることに繋がっていくことも期待できる。


開発コスト

   もちろん、サン自身も言及しているように、Solarisの開発コストを抑えるという狙いもあるだろう。

   といっても、OpenSolarisの公開に合わせて、サンがSolaris開発部隊をリストラするというわけではないので(今のところ同社がそう明言している)、実際には、現在かかっている開発コストを削減できるという単純な話ではない。これはむしろ、通常の方法で開発体制を強化する場合にかかるであろうコストが、オープンソースという方法を導入することで低減される、あるいは、ほとんどかからないようになるという意味での「コスト抑制」だと理解すべきだろう。

   ただし、開発コミュニティの発展の仕方次第によっては、Solarisの開発にかかる総コストをサンが自分1人で負担する必要はなくなるため(=その開発コミュニティに参加する面々が共同で負うことになる)、長期的に見れば、サンのコスト負担が軽減される可能性はある。

   なおサンは「Solarisのオープンソース化は顧客からの要望によるもの」という言い方もしている。この場合の「顧客」というのは、エンドユーザーというよりも、主にはSolarisでシステム構築を行なっているシステムインテグレータなどのパートナー企業だという。

   そうした背景もあって、オープンソース化によって新しく増えるものとして期待される「Solarisの開発に関わる人」というのは、具体的には、システムインテグレータなどのパートナー企業の技術者がイメージされているようだ(もちろん、それだけに限定されるものではないが)。と同時に、マーケティング的には、OSの開発に参加する機会が開かれているという「メリット」によって、新たなシステムインテグレータパートナーの拡大を図りたいという意図もある。

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風穴 江
著者プロフィール
風穴 江
TechStyle編集長、コラムニスト。1990年から「月刊スーパーアスキー」誌(アスキー刊)の編集に参加。GNUプロジェクトなどの動向を担当していた関係から、Linuxは、それが公開された直後からウォッチし続けている。1998年にフリーランスジャーナリストとして独立。そのかたわら、日本で初めてのLinux専門情報誌「月刊Linux Japan」の編集長を務める。2002年3月には「TechStyle」を立ち上げ、編集長に就任。2003年8月から、オープンソースビジネスのための情報サービス「Open Source Business Review」を提供している。


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第1回:Solarisとオープンソース
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