コニカミノルタ、ベルリンで中小企業向けのプラットフォーム、Workplace Hubを発表
2017年3月23日、コニカミノルタはベルリンにおいて中小企業をターゲットとしたデジタルトランスフォーメーションのためのプラットフォーム、「ワークプレイスハブ(Workplace Hub)」を発表した。これは、コニカミノルタの強みであるデジタル複合機を単なるプリンターとして位置付けるのではなく、新しく開発されたWorkplace HubもしくはWorkplace Rack、Workplace Edgeと呼ばれる3種類のサーバーを中心に、データの共有やクラウドとの連携、ビッグデータ分析などをクラウド側だけではなくオンプレミスのサーバー側でも行うことによって、企業のクリエイティビティを高めようというコンセプトである。
ワークプレイスハブは、前述のWorkplace Hub、Workplace Edge、Workplace Rackと呼ばれる3種類のサーバーが中心となってオフィス内のデータの共有やアプリの集約、クラウドとの連携、ビッグデータ分析、機械学習などを行うためのプラットフォームとして提供されるという。プラットフォームとしての具体的な仕様は明らかになっていないが、HPEやMicrosoft、Canonicalなどがパートナーとして名前を連ねていることを考えると、クラウドはAzure、サーバーOSはUbuntu、そしてデータ管理などはHPEのソリューションではないかと想像される。他にもセキュリティのSOPHOS、データ分析のプラットフォームであるBraintribeなどが発表時のパートナーとして明らかになっていることから想像すると、各協業パートナーから提供されるコンポーネントをコニカミノルタが統合したソリューションとして提供されるものとみるべきだろう。
ベルリンで開催されたプレス向けイベントでは、ジェネレーションXやMicroserfsなどの著作で有名な作家であるダグラス・クープランド氏が登壇。「Work」をトピックの中心として現代の仕事のあり方、テクノロジーとの関わりについて講演を行った。
続いてHPE、Microsoftなどのパネリストが参加したパネルディスカッションが行われた。ここでも現代の仕事の進め方やコラボレーションなどについて意見が交わされた。ここでのディスカッションはクープランド氏の講演を受けて、いかに仕事をするか、何が阻害要因なのかを、各パネラーの立場から意見を出し合うというものであった。
パネルディスカッションの後に登壇したのは、コニカミノルタのCEO、山名昌衛氏だ。今までの抽象的というか観念的なワークスタイルから実際の製品に意識を向けて、ステージ上でスモークとともに新製品を露出させる演出で、新製品発表会としてプレゼンテーションを行った。
ただ具体的な機能面の紹介は、続いて登壇したデニス・カリー(Dennis Curry)氏に任せた形になった。ロンドンに拠点を置くビジネスイノベーションセンターに所属するカリー氏は、より具体的にワークプレイスハブが実現する機能を紹介した。
ここでも具体的なワークプレイスハブの詳細は語られず、製品発表会というよりはコンセプトの紹介であるというレベルの内容であった。
イベントとしては前半の仕事に関するセッションは抽象的ながらも現代の仕事への取り組みや、テクノロジーによる変容などをテーマに語られ、それを後半のワークプレイスハブの紹介につなげるという組み立てであった。ディスカッションの中に「コニカミノルタ」という名前よりもGoogleやMicrosoftの名前がはるかに多く登場するところは、ご愛嬌というところだろう。
イベント直後には、山名CEOへのインタビューが行われた。そこでは、CEO就任直後から5つの拠点にイノベーションセンターを設立したこと、それによって各地域に合わせたソリューション、製品開発が可能になったこと、ロンドンの拠点の責任者とし着任したデニス・カリー氏との会話の中でワークプレイスハブが構想されたこと、クラウドですべての処理を行うのではなくエッジ側でも処理を行うことが必要な理由はリアルタイム性にある、などの回答が得られた。
またビジネスモデルに関しても、すでに欧米では顧客から月額の利用料を直接徴収する形での課金モデルが出来上がっているため、その上にワークプレイスハブを載せる予定であるという。この発言からも、ハードウェア単体の売り切りに替えて、サブスクリプションモデルを採用することが見て取れる。ここで重要なのは「すべてをクラウドに持って行かれたら大変なことになる」という山名CEOの率直な感想が聞けたことだろう。クラウドコンピューティングの素晴らしさは認めた上で、使い方によってはオンプレミス側で処理する必要がある、そのためのプラットフォームとしてワークプレイスハブを位置付けているという部分だろう。
これらから推測すると、ワークプレイスハブのサーバーとしての機能は単なるデジタル複合機のホストだけではなく、ファイルサーバーの機能とある程度のデータ分析の処理まで担うことになるということだ。その際にポイントとなるのは、Braintribeのデータマネージメントプラットフォームかもしれない。Braintribeがどのような機能をワークプレイスハブ上で果たすのか詳細はまだ不明だが、このハードウェアがどの程度のプロセッサとOS、ミドルウェアなどを搭載するのか? によって後日明らかになると思われる。
また山名CEOはワークプレイスハブが単なるサーバーではなく「プラットフォーム」であること、すなわちハードウェアを中心としてその周りにエコシステムを構築することを目指していると明言した。つまりさまざまなクラウド連携サービスやアプリケーションがこの上に載ることで、顧客が望む機能を柔軟に素早く実現できることを目指すということだろう。特にコニカミノルタが強みを持つ医療関係の企業に向けたソリューションでは、医療に適したアプリケーションを垂直統合の形で搭載することを目指すという。「垂直統合」するということは、つまり業界に特化したアプリケーションと印刷・スキャナー機能を搭載することで、これまでバラバラに点在していたシステムを集約するという計画だと思われる。
ワークプレイスハブが単なるアプリケーションを搭載したサーバーではなくエコシステムとして成功できるかどうかは、今回発表されたパートナーであるHPEやMicrosoft、Canonical、SOPHOSだけではなく、他の機能を実現するパートナーのリクルーティングの状況にかかっていると言えよう。それがなければデジタル複合機から切り離された単なるファイルサーバーに成り果ててしまうことになる。
今回のイベントは、あくまでも製品発表というよりもコンセプトの発表であり、価格やビジネスモデルの詳細などは2017年秋と告知されたサーバーの出荷発表時に明らかになる予定だ。今回はあくまでもコンセプト発表であって、CeBITの直後というタイミングで近隣のベルリンで行ったというのが今回のイベントであったと総括したい。売り上げやパートナーの数の目標といった数値については、今秋となるサーバーの出荷時の発表を待つことになる。
デジタル複合機を中心とした印刷だけではビジネスが拡大しないことから、発想を転換させてアドホックなデータサービス、そしてクラウド連携、ビッグデータから機械学習までを載せるプラットフォーム及びエコシステムとしてワークプレイスハブが成長できるのか、引き続き注目していきたい。
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