Azureを採用した3社が事例を披露、de:code 2018プレスラウンドテーブル
5月22日〜23日に開催された、日本マイクロソフトの技術者向けカンファレンス「de:code 2018」。会場では、基調講演にも登壇したJulia Liuson氏(Corporate Vice President, Developer Division)を囲むプレスラウンドテーブルが開かれた。
このプレスラウンドテーブルでは、Azureを採用したクラウドネイティブアプリケーションの事例が、株式会社イノベーション、株式会社オルターブース、クラウドキャスト株式会社の3社によってそれぞれ披露された。
マーケティングオートメーションサービスをAWSからAzureに移行
株式会社イノベーションは、法人向けインターネットマーケティング支援の会社だ。法人営業のプロセスの前半としてオウンドメディア事業を、後半としてセールスクラウド事業を展開している。今回の事例となったのは、セールスクラウド事業のマーケティングオートメーションサービス「List Finder」だ。
List Finderは、これまでAWS上で動いていたが、Azureに全面移行中だという。「今のAzureは3〜4年前と別物になっていると感じる」と、同社の矢ヶ崎哲宏氏はコメントした。
List Finderではその性質上、アクセス計測のトラフィックがスパイクし、増減が激しい。それに対しては、Azure Functionsを採用し、さらにAzure Service Busで緩衝しているという。
アプリケーション本体はすべてコンテナベースにし、WebApp for Containerで動かしている。コードはGitHubで管理し、そこからCircleCIによるCI/CDで、Azure Container Registryに登録し、自動的にステージング環境にデプロイ。リリースしてOKとなったら、Blue/Green deploymentによりプロダクション環境と入れかえる。
今後については、AKS(Azure Kubernetes Service)の活用や、コグニティブサービスの積極利用、開発環境とプロダクション環境の差異をなくすこと、Webでなくコードで操作するInfrastructure as Codeを進めることなどを矢ヶ崎氏は語った。
.NET CoreでマイクロサービスとAzure Functionsを活用
株式会社オルターブースは、「クラウドを最大限に活用し社会課題を解決するテクノロジーカンパニー」をビジョンにしていると、同社の松村優大氏は説明した。その手段としてAzureを活用し、Microsoft Partner of The Year 2017を受賞しているという。
その一つである、素材の配合を好みに合わせて調合してオリジナルソースを作るフードテックサービス「{ MySauce (Factory); }」では、.NET Coreを使ったマイクロサービスとして構成されていることが紹介された。
松村氏は、AzureやMSを使ってよかったことを説明。Azureについては、PaaSでサービス継続性が向上することや、Azure FunctionsやLogic Appsでマイクロサービスを実現することを挙げた。また、Visual Studio Team Servicesについては、CI/CDパイプラインを手軽に構築できることを挙げた。さらに、.NET Coreについては、効率よく高品質なアプリケーションを開発可能として、.NET Coreのパイオニアを目指すと語った。
また、Microsoftへの要望も松村氏は語った。Azure SDKやAzure FunctionsにおけるPHPの拡充、Azure上でSSL証明書の発行や管理ができるマネージドSaaSや、Azure Resouce Templateの充実を希望した。
さらに、基調講演でもデモされたVisual Studio Live Shareについて「とてもすばらしい」と期待を寄せた。
経費精算サービスをダウンタイムなしでAzureへ移行
株式会社クラウドキャストは、中小企業のB2Bを対象に、フィンテックなどのサービスを提供している。
代表プロダクトはクラウド経費精算サービスの「staple」で、Good Design Award 2007受賞を受賞している。stapleでは、交通系ICカードによる精算や、領収書のスマートフォン撮影による精算などをサポートしている。
同社の星川高志氏はMicrosoft出身で、「実は、MS Expenseが使いづらかったのがきっかけでstapleを開発した」という。ちなみにLiuson氏も「Microsoft社内ハッカソンでは、毎回MS Expense対抗ソフトが出てくる」と言って笑った。
Microsoftプラットフォームの利用としては、まずICカードデータ変換や、タイムスタンプサービスにAzureを使っている。また、社内人事情報の取り込みにAzure ADを利用。カレンダー連携のためにOffice 365を利用している。
特に、交通系ICカードデータ変換のstapleリーダーはAzureに完全移行した。Dockerコンテナの採用により、数時間でダウンタイムなしに移行できたという。なお、移行を機に、もともとRailsで書いていたものをWindowsプラットフォームに変えたという。
Azureの特徴としては「日本での強みは営業支援」と星川氏は述べた。またMicrosoftへの要望としては、フィンテックへの投資を期待したいと語った。
互いに興味を持ったところは?
筆者は3者に対し、それぞれ互いの話で興味を持ったところ、見習いたいところを聞いてみた。
イノベーションの矢ヶ崎氏は自社について「まだAzureを使うというところまで」と分析。ほかの事例の、開発ツールとクラウドの融合を参考にしたいと語った。
オルターブースの松村氏は、コグニティブサービスによるデータ解析を見習いたいと語った。
クラウドキャストの星川氏は、まだAzureの一部の機能しか使っていないとして、「新規機能の利用を考えたい」と語った。
連載バックナンバー
Think ITメルマガ会員登録受付中
全文検索エンジンによるおすすめ記事
- de:code 2018が開催。基調講演はクラウド、開発ツール、MRが語られる
- Microsoftはオープンソースで企業のデジタルトランスフォーメーションを支える ーConnect(); Japan 2017
- MR・AI・量子コンピューティングが重要テクノロジー 〜Microsoft Tech Summit 2017レポート
- de:code 2019開催。自動運転車からMicrosoft 365、Azure、HoloLens 2までの基調講演まとめ
- バズワードではないDX、3大クラウドベンダーのビッグデータ分析サービス
- サーバーレスな事例が次々登場―ServerlessConf Tokyo 2016レポート
- より包括的な視点での対応を可能にする、クラウド セキュリティの最新ソリューションを紹介
- 【Azure Database座談会】識者が語るMySQL/PostgreSQLマネージドサービスのメリットとは
- JuliaをVS Codeから利用するエクステンションを紹介
- DXの実現にはビジネスとITとの連動が必須 ― 日本マイクロソフトがBizDevOpsラウンドテーブルを開催