OpenSolarisを知ろう

2008年6月4日(水)
増月 孝信

OpenSolarisって何だ?

 6月特集「OS-1グランプリ」の毎週水曜日はOpenSolarisだ。今回の著者はSolarisの誕生以来ずっと、Solarisの開発、普及に心血を注いできた漢、増月 孝信氏だ。1人でも多くの人にSolarisの良さを伝えること、使ってもらうことを願って、あらゆる形でアピールを続いる。さぁ、増月氏どうぞ!

 2008年5月5日にサンフランシスコで開催された米国サン・マイクロシステムズ社(以下サン)主催のコミュニティイベント「CommunityOne(http://developers.sun.com/events/communityone/)」において、OpenSolaris 2008.05が発表されました。本連載の第1回はOpenSolarisをまだ体験したことが無い方を対象に、その概要や特徴について解説します。

 話の本題に行く前に、そもそも「OpenSolarisって何?」と思われている方もいらっしゃるでしょう。OpenSolarisはサンが開発したオペレーティングシステム(以下OS)です。このOSはUNIXをベースにさまざまな斬新な機能が盛り込まれており、世界中のソフトウェア技術者の関心を集めています。

 そして重要なポイントは、サンがこのOSをオープンソースソフトウェア(以下OSS)にしたことです。

 OpenSolarisプロジェクト(http://www.opensolaris.org)は2005年6月14日にスタートし、現在では103,000人を超えるコミュニティメンバー、67のユーザグループ、そして220を越すサブプロジェクトの規模に成長しつづけています。

OpenSolarisの特徴は?

 OSと聞くと、世の中にはLinuxやWindowsなどいろいろな種類が存在しているので、「OpenSolarisの特徴は?」といった疑問が出てくるのではないでしょうか?「OpenSolarisではじめる本格エンタープライズシステム構築(http://www.thinkit.co.jp/cert/article/0706/1/1/2.htm)」でも紹介しましたが、ここでは代表的な特徴を紹介していきましょう。

 1つ目は、マルチプラットフォーム(SPARCプロセッサとx86/x64プロセッサ)で動作し、マルチCPU、マルチコア、マルチスレッド対応していることです。ノートPCからSPARC64 VIプロセッサを64個搭載(128コア、256スレッド)するハイエンドサーバまで、スケーラブルなシステム構成が可能です。

 2つ目に、開発環境が業界標準仕様に準拠したAPI(Application Programing Interface)を実装しているので、移植性の高いアプリケーション開発が行えることです。

 3つ目が標準設定でさまざまなセキュリティ対策が考慮されていることです。また、基幹業務や商用サービスなど機密性の高い情報を扱うシステムを構築するために要求されるセキュリティ仕様に対応する、高度な機能(例えばセキュリティラベルによる Mandatory Access Control)も提供されています。

 4つ目がDTrace機能によって稼働中のシステムにて情報を採取(トレース)してパフォーマンス劣化や障害の原因分析が行えることです。実稼働しているシステムでサービスを停止することは難しいので、通常は問題が発生するとテスト環境を別に構築し、問題の切り分けや解析を行います。しかし、この作業はたくさんの時間と労力を要するので、DTraceによって作業効率が飛躍的に改善されることになります。

 5つ目が斬新な仮想技術である「Solarisコンテナ」も提供されていることです。この機能を使うと、1台のマシンに複数のOpenSolaris実行環境を構築し同時に稼働させることができるので、複数のサーバ上で稼働するサービスを統合させてシステム資源の利用率を向上させたり、さまざまなアプリケーションのテスト環境を統合して、1台のマシンを共有して行うことが可能です。

 6つ目が新規ファイルシステム「Solaris ZFS」(以下ZFS)です。ZFSは128ビットの大容量に対応したファイルシステムで、ストレージプールを用いて新規ハードディスクドライブの追加や容量拡張が、PCにメモリを追加するように簡単に行えます。また、ZFSはRAID-Zへの対応や、データブロックのチェックサムを持っているので、ハードディスクドライブ障害発生にも強いファイルシステムです

 さらにZFSは、スナップショットと呼ばれる機能を用いて、データのバックアップやロールバックによるレストアを高速に行うことができます。

 最後にあげるのが、OpenSolarisはアプリケーションのバイナリ互換性が非常に高いことから、OSのバージョンアップに伴うリスクを軽減できることです。

 では、OpenSolarisの特徴を押さえたら、いよいよOpenSolarisの新しいバイナリディストリビューションのOpenSolaris 2008.05について解説していきましょう。

サン・マイクロシステムズ株式会社
OpenSolaris エバンジェリスト。現在サンではコミュニティ&デベロッパーマーケティングを担当。Solarisとはその誕生から現在に至るまでずっと関わってきました。OpenSolarisを一人でも多くの人に使ってもらえることを切に願って日夜普及活動に力を注いでいます。

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