UXPとビジネスUX
UXPとビジネスUX
現在、企業が成功するための必要条件として「豊富なユーザー体験(Rich User Experience)」が語られ始めています。ITを活用できない企業は成功しにくいですし、そのITを活かすためにはUXが重要です。UXが実現できていない企業のITは利便性に欠け、事業運営の障壁にもなりかねません。
IT分野の調査・アドバイザリー企業である米ガートナー社では、2009年にUXP(User eXperience Platform)というコンセプトを作り出しています。ガートナー社が定義しているUXPは、ユーザーとアプリ、プロセスまたは、他のユーザーが相互作用に必要な全ての技術としています。
UXPは、RIA技術、マッシュアップツール、モビリティ開発ツール、コンテンツ管理、 ポータル等の技術で成り立つと定義されています。ガートナー社では、現在まではどのベンダーも統合的ソリューションを提供できておらず、顧客サイドで様々なソリューションを購入し1つのUXPとして構築していると延べています。
そして、今後一層UXが普及していく中で、適正なコストでシステム全体をUX化してくためには単一のベンダー/ソリューションで統合的に提供されていることが、コストの面でもメンテナンスの点でも好ましいと言及しています。現在は個別のシステムでUXが実現されていますが、多くのシステムでUXが実現されていくと、UXPのような考え方が必要になってきます。今後の技術としてぜひご理解ください。
UXPは、モバイル環境においても様々な問題を統合的に解決すると考えられています。現在モバイル環境では、iOSにAndroid OS、WindowsOSなど、多様なプラットフォームに対応させるのに苦労されているエンジニアの方も多いと思いますが、UXPはこの課題も解決します。
UXP技術だけの話ではありません。優れたUXを提供するためにはデザイン的な分析、ユーザー中心のデザインと操作性とテスト能力が必要です。UXを実現するためにはエンジニアとUXデザイナーが綿密なUXプロジェクトの中で連携していかなければなりません。つまり、今までの主流な開発プロジェクトの運営方式ではUXの実現が難しいということになります。
UXプロジェクトの運営についてはこのコラムの第3回で述べますのでご期待ください。
トゥービーソフト社は、このUXPを企業の業務システムをターゲットにした概念「ビジネスUX(BUX)」を発表しました。コンシューマー向けUIと企業向けUIは確実に違うため、UXの企業向け概念として設計しました。
企業向けUIは、コンシューマー向けに比べ、よりデータ志向的です。また、グリッドやチャート等の数字データをよりよく表現するためにGUIコンポーネントをベースとするUIが基本となります。一方、コンシューマー向けUIは、Facebookやその他ポータルの例でも見られるようにText志向または、Youtubeのようにマルチメディア志向です。
企業向けUIでは、想定される利用者の行動パターンに合わせて、コンポーネント毎にUIを効果的かつスピーディーに(CPUやメモリなどのリソース消費量を少なく)動作させることが重要です。そのためには、メモリ管理やレンダリング、スクリプトパッシング方式等が、Text指向やマルチメディア指向のアーキテクチャとは違った設計思想でUXを具現化しなければなりません。
また、企業向けUI構成に必要なGUI基盤のフレームワークがしっかりと整備されていなければなりません。これは開発生産性やメンテナンスの容易性を向上させ、企業においてはコストを削減する重要なポイントです。さらに、これらの要件を簡単に実現できるRAD(Rapid Application Development)開発環境が提供できなければなりません。その開発環境がUXPを具現できる1つの開発ツールとして多様な機器やプラットフォームに対応できなければならないのは言うまでもありません。
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