LinuxCon Japan 2014 -アジア地域最大のLinuxカンファレンス-
平滑な運営方法で躍進するApache
Apache Software Foundation(ASF)よりエグゼクティブバイスプレジデントのリッチ・ボーエン氏が登壇し、ファウンデーションの紹介と運営方法を解説した。ASFはLFとは別のファウンデーションではあるが、LFといくつものコラボレーション実績がある協業ファウンデーションの1つである。
発足当初はApacheグループと呼ばれ、かつてイリノイ大学で中止されたウェブサーバーを作るプロジェクトに端を発している。当初は8名のメンバーであったが、現在では149の個別プロジェクトがあり、3,500人の開発者が携わっている。ファウンデーションの在籍メンバーは530名に上る。知名度の高いTomcat、SpamAssassinなど、これらはすべてApacheのプロジェクトではあるが、一般的にはASFで行っているとはあまり知られていない。その他のプロジェクトでは、CloudStackは日本からも多くの開発者が参加している。Hadoopはビックデータ分野ではとても重要なプロジェクトとなっている。
メンバーはすべて個人会員に限定しており、企業単位でのメンバーは採用していない。とても平滑なプロジェクト運用方法を採用し、テクニカルリードを立てず、投票によって進められる。また、役員はファウンデーション運営に専念しており、プロジェクトの内容などには関与しない。あくまで商標も含めた運営に専念するというような、LFとは異なる特徴を持っている。参加メリットについては「Apacheのライセンスは特にビジネスフレンドリーにできており、どの会社もApacheプロジェクトをベースに企業独自のビジネスが成立するようにしている」と強調する。実際には企業に所属し、社命で個人会員として活動しているケースも多いとのこと。
健全なコミュニティ運営の秘訣
一般的に知られているOSSコミュニティとはやや異なる運用方法を採用している背景には「ASFが発足した当初はオープンソースという言葉は存在していなかった」ことに起因すると氏は語り、コミュニティのガバナンスについては、ApacheWAYと呼ばれる緩やかな定義の上で活動を行い、ガバナンスを保っていると紹介した。
最も重要な点は「コミュニティ・ディベロップメント」とされ、すべてはメーリングリストなどを使って共有化し、コードにおいてもすべてのメンバーが触れることができる環境下に置かれる。意思決定は投票によって明確に行われている。コミュニティ内での役割についても「コード、ドキュメンテーション、テスト、サポート等の様々な役割があるが、重要度の優劣は存在しない」。
さらに「コードはプロジェクトにおいて中心的な要素ではあるが、コードよりもコミュニティを最重要なものと捉えている。コードだけに集中しコミュニティを破壊してしまっては他の開発者は去ってしまう」ためだ。この思想は、企業会員を排除すると同様に、企業の役職や学歴といったものは全く重視されず、あくまで「個人のプロジェクトへの貢献を重視する」一環した運営姿勢が現れているといえる。熟練のコミュニティーメンバーは新規のメンバーを牽引する役割も担っているとされる。最後に氏は「新規の参加者にも積極的にできるような健全なコミュニティは、より新しいアイディアや結果をもたらす」と締めくくった。
パネルディスカッション
基調講演最後の「Virtualization+OpenCloudPanelでは、フェルナンド ルイス・バスケス カオ氏(NTT)をモデレータに、パネリストにはダニエル・ヴィエイヤール氏(Red Hat)、ブルーノ・コルネック氏(HP)、デビッド・ナリー氏(Citrix)、ナイジェル・カーストン氏(Puppet Labs)を招き、クラウドと仮想化について下記に代表される様な活発な意見が飛び交った。
Q1(モデレータからの質問):
最近トピックでは「ハイパーバイザーは死んだ」といわれ、コンテナが圧倒的に有用で諸問題を一気に解消するともいわれいるが、その反面セキュリティの観点では危険ではないか?という意見も出ている。どの様に考えるか?
A1:クラウドは元々仮想化を前提しているが、様々なOSを一緒に使いケースではコンテナは使うことができない。違う環境や違う負荷が掛かる環境ではハイパーバイザーは有用だといえる。コンテナとハイパーバイザーは役割が違うのでハイパーバイザーのテクノロジーが消えることはないといえる。
2年前に出てきたDocker出現によってコンテナが注目されているが、コンテナ自体は決して新しいテクノロジーではなく、利便性から注目を集めていると思う。
マーケティングが上手くいってるということもあるが、使い勝手もよく、アプリケーションの観点を採ることで仮想化側からアプリケーション側に視点を持って来ているということが市場に受け入れられているともいえる。マスコミで取り上げられる様にDockerが市場を凌駕するとは考えられない。
Q2(オーディエンスからの質問):
マネージメントではスタックのマネージメント負荷が掛かってくる。そういったマネージメントについてコミュニティではどの様に考えているのか?
A2:最近ではソリューションを1つのベンダーから購入する場合、アプリケーションからIaaSまですべてがパッケージされているが、安定性はどうなのだろう。
標準化という取り組みはなされてきたが、標準化されたAPIというものはあるが、実際誰も使っていないと現状である。
今あるのはデファクトのスタンダードといるものはあるがPaaSのスタンダードは存在していない。構成管理ツールは使われているが、応急処置的に使われているだけに過ぎない。
標準化の是非についてパネル間でも議論が飛び交っていた。
Linuxの技術、手法、今を吸収する
初日基調講演のみの参加ではあったが、会期中は分科会などに分け、数多くの講演が展開されていた。会場内では企業からのブースも設置され、参加者はセッションの空き時間を活用して供される軽食を片手に議論を交わす光景が多く見受けられた。
来年の開催予定はまだ発表されていないが、企業内外問わず様々なプロジェクトにかかわる人は参加されることをおすすめしたい。
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