CEOが語る「Linuxのレッドハット」からの転換、HivemallがASFの育成プロジェクトに認定、ほか

2016年10月7日(金)
吉田 行男
レッドハットのカンファレンスにて、同社CEOらによる最新のビジネス概況や今後の方向性などが示された。

こんにちは、日立ソリューションズの吉田です。

10月に入って、OSS関連のセミナーが増えてきました。その中でもレッドハット社が開催した「Red Hat Forum」は、多くのセッションが満席になるなど大盛況でした。

今週もOSSに関する注目すべきトピックを取り上げましたので、ゆっくりとご覧下さい。

「Linuxのレッドハット」からの転換、ホワイトハーストCEOが語る

レッドハット社は10月5日、東京でプライベートカンファレンス「Red Hat Forum」を開催しました。来日した米国レッドハット社長兼CEOのジム・ホワイトハースト氏と、同アプリケーションプラットフォーム担当SVP(上級副社長)のクレイグ・ムジラ氏が記者説明会に出席し、最新のビジネス概況や、デジタル変革(デジタルトランスフォーメーション)の時代に求められる業務アプリケーションプラットフォームのあり方、レッドハットが提供するソリューションなどを説明しました。 また、OpenStackエンジニア育成をめざした学生向けプログラムの国内提供の開始、HTML5モバイルアプリ開発基盤の提供における協業を発表しました。

(参照記事:http://ascii.jp/elem/000/001/244/1244848/

PostgreSQL 9.6登場

The PostgresSQL Global Development Groupは9月29日、「PostgreSQL 9.6.0」をリリースしました。「PostgreSQL 9.6」は、1月に公開された「PostgreSQL 9.5」に続く最新版で、パラレルクエリ、同期レプリケーション機能の改善、フレーズ検索、パフォーマンスと安定性の向上などが実現されており、スケールアップとスケールアウトの双方を実現したバージョンとされています。特に注目されるのは、いくつかのクエリがパラレルクエリに対応した点で、これにより、従来は単一のコアしか使うことのできなかった処理が、複数のコアを同時に利用できるようになりました。

(参照記事:http://news.mynavi.jp/news/2016/10/03/248/

日本発OSSで初の快挙 ASFが認めた機械学習ライブラリ「Hivemall」

分散データ処理ソフトの「Hadoop」「Spark」用の機械学習ライブラリ「Hivemall」が9月13日、米国Apache Software Foundation(ASF)の「Incubator(育成)」プロジェクトに認定されました。「Hivemall」は、産業総合研究所(産総研)に所属していた油井誠氏が開発を始め、2013年10月にOSSとして公開したプロジェクトです。Hadoop/Spark用のデータウェアハウス(DWH)エンジン「Hive」のUDF(ユーザー定義関数)として実装されています。Hadoop/Spark用の機械学習ライブラリには、「Python」や「Scala」に対応した「MLlib」や、「Java」に対応した「Mahout」等がありますが、「Hivemall」とこれらの機械学習ライブラリとの最大の違いは、「機械学習に関する全ての処理がSQLクエリで実行できるようになること」です。なお、油井氏は現在、日本人エンジニアがシリコンバレーで起業した米国Treasure Data社に所属しています。

(参照記事:http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/15/061500148/100300084/

Linuxカーネル4.8リリース、ファイルシステムの改善や各種ハードウェアサポートの強化などが行われる

Linus Torvalds氏は10月2日、Linuxカーネル4.8のリリースを発表しました。Raspberry Pi 3 SoCやMicrosoft Surface 3のタッチ画面のサポートなどが加わっています。ファイルシステムでは、メモリを使った一時ファイルシステムであるtmpfsファイルシステムを強化しました。また、Btrfs ENOSPC(データ領域不足)エラーも改善されています。XFSリバースマッピングもサポートしたほか、OrangeFSではカーネルサイドキャッシュング機能が加わりました。他にもセキュリティ関連やネットワーク関連で多くの改良が施されています。

(参照記事:https://mag.osdn.jp/16/10/04/163000

Dockerが「InfraKit」をオープンソースで公開。Docker用のクラウド環境を自動構築、自動修復

米国Docker社は10月4日、クラウドやオンプレミスにおけるDockerの環境を自動的に構築し、運用中に障害が発生しても自動修復してくれるツール「InfraKit」をオープンソースで公開しました。「InfraKit」はインフラの自動化をシンプルにするもので、インフラの状態を宣言し、アクティブモニタリングと自動調整機能を果たすプラガブルなコンポーネントなどから構成されています。同社は今年の6月に、AmazonクラウドやAzureでのDocker環境の構築を自動化するツール「Docker for AWS」「Docker for Azure」をベータ版として発表しています。今回オープンソース化が発表された「InfraKit」は、これらの発展系といえます。

(参照記事:http://www.publickey1.jp/blog/16/dockerinfrakitdocker.html

OPNFVが第3版となるColoradoをリリース

オープンソースでネットワーク仮想化プラットフォームの実現をめざすOPNFVプロジェクトは、9月26日に3番目のリリースとなる「OPNFV Colorado」のリリースを発表しました。OPNFVは、ネットワーク仮想化技術によって新しい製品やサービスの導入を加速するプラットフォームを、オープンソースで実現することを目的としたプロジェクトで、テレコムキャリア、サービスオペレータ、ベンダーを含む50社以上が正式メンバーとして参加しています。

ColoradoリリースにはOpenStack Mitaka、OpenDaylight Berylliumなどが組み込まれ、新たにSFC、IPv6、L2/L3 VPN、ARMアーキテクチャ、障害範囲特定などのサポートが追加されました。さらに、セキュリティ強化によって、Core Infrastructure Initiative(CII)Badge を取得しています。OPNFVは基盤となる NFV Infrastructure(NFVI)およびVirtualised Infrastructure Management(VIM)に注力してきました。最近は転送ソリューション(FD.ioやODP、white-box hardware)や、Management and Network Orchestration(MANO)もカバーされ、ソリューションとして充実していくことが予想されています。

(参照記事:https://www.opnfv.org/news-faq/press-release/2016/09/open-source-nfv-project-delivers-third-platform-release-introduces-0

編集後記

イベントに行くといろいろな人に会うことができます。今週は、10年ぶりくらいに会えた方や病気で長期お休みしていた方が職場に復帰されるといったことがあり、懐かしさとともに人との出会いを大切にしなければいけないということを改めて感じました。

2000年頃からメーカー系SIerにて、Linux/OSSのビジネス推進、技術検証を実施、OSS全般の活用を目指したビジネスの立ち上げに従事。また、社内のみならず、講演執筆活動を社外でも積極的にOSSの普及活動を実施してきた。2019年より独立し、オープンソースの活用支援やコンプライアンス管理の社内フローの構築支援を実施している。

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