はじめに
2026年2月21日(土)。私(田中悠介)は、愛知県屈指の名門である東海高等学校・中学校が主催する国内最大級の土曜市民公開講座「サタデープログラム(通称:サタプロ)」に登壇した。
過去には現役の内閣総理大臣も教壇に立ってきたこの舞台。本番直前、全60講座の中で「応募数240名(1位)」という驚異的な結果を告げられた。私はあえて予定していた通常のAI講演の資料を直前で全面的に変えた。普通のAIの話をしても面白くないからだ。
私が彼らに提示したテーマは『ChatGPTに“使われる人”か、“使いこなす人”か。その差を解説』である 。当日のスライドを交えながら、私が240名の聴講者に突きつけた「綺麗事なしの実戦知」を公開する。
【参照】「サタデープログラムホームページ」(東海高校・中学 サタデープログラム生徒実行委員会 2026/02/21)
思考設計の型:「ありがとう」を捨て、AIを「バグらせる」
今回の登壇講座のサブテーマは、「AIのバグらせ方」であった。
サタデープログラムは東海中高の生徒だけでなく、小学生から一般の社会人、シニア層まで誰でも参加できる市民公開講座である。世代もバックグラウンドもバラバラな240名の聴講者で埋め尽くされた熱気あふれる会場で、私は生成AIの「綺麗事」を一切捨て去ることから始めた。
生成AIの根本的な仕組みは「連想ゲーム」である。ユーザーの入力内容と、AIが学習している膨大なデータから確率を計算し、もっともらしい出力を行っているに過ぎない。 だからこそ、AIに対して「いいね」や「ありがとう」といったポジティブな言葉を入れれば、アウトプットは無難に安定する。しかし、それでは単なる「便利ツール」止まりだ。
私が彼らに伝えたのは、意図的にAIのアウトプットを「バグらせる」思考設計である。 ここで言う「バグらせる」とは、システム上のエラーを起こすことではない。AIが安全牌として出してくる「平均的で無難な回答」の枠(リミッター)を意図的に破壊し、人間の想像を超えるクリエイティブなアイデアや、常識外れの解決策(=限界突破)を引き出すことを定義としている。スライドでは、そのための「3つの仕組み」を解説した。
仕組み①:意図的に誘導する
魔法のことばとして「多角的に」や「あらゆる角度で」といった指示を入れる。さらに突き抜けるなら「全知全能の神になって」「地球上で発生する最大値で」といった極端な設定を付与し、視座を強制的に引き上げる。
仕組み②:ひたすらダメ出しをする
例えば「東京大学に現役合格する方法を考えて」と指示する際、「普通の受験勉強は死ぬほどやりたくないからダメね」「楽して成績上がりたい」「親のコネもない」と、あえて厳しい制約を次々とぶつけるのだ。
仕組み③:別のAIにぶつける
AIが出した多角的な内容を、さらに別のAIに多角的に出させる。AIは使い方次第で、カオスも利益も100倍にする力を持っている。
【参照】「The PoC Graveyard: The 100x Rule of Factory AI(Yusuke Tanaka 2026/01/28)」
AIは単なる業務の時短ツールではない。使い方(型)次第で、カオスも利益も100倍にする「未知の可能性を持った思考の拡張装置」なのだ。このスライドを提示し、実例を見せた瞬間、240名が身を乗り出し、会場中で一斉にスマホのシャッター音が鳴り響いた。それはまさに、新たな可能性に気づいた人々の熱狂の音だった。
「AIの組織化」時代。人間に残される武器は『実践的知能(PI)』
講座の後半では、これから彼らが飛び込む「少し先の未来」のリアルを突きつけた。
これからは「AIの組織化」が進んでいく 。AIがAIに指示を出し 、AIが出したアウトプットを別のAIが検査し 、機微な内容はAI同士で判断して実行するようになる。この世界において、最終的な「重要な意思決定」を行うのが人間の役割となる。
では、その意思決定を下すために、人間は何を鍛えるべきか。 私は「実践的知能(Practical Intelligence = PI)」という概念を提示した。
従来の論理的知能(IQ)や、単なる知識(EQを含む)だけでは、もはやAIには勝てない。私が数式の中で「赤字の能力を鍛えていくことを考えた方が良い」と強く語りかけたのは、以下の3つの要素である。
- CQ:創造的知能(Creativity Intelligence)
- AQ:環境への適応力(Adaptability Intelligence)
- TQ:技術的知能(Technical Intelligence)
これらこそが、AIという強大なパートナーを乗りこなし、人間が圧倒的な価値を生み出すための源泉となるのだ。
未知の問題を創造的に解決し(CQ)、激変する環境に適応し(AQ)、最新のテクノロジーを理解し使いこなす(TQ)。これらこそが、AIという強大なパートナーを乗りこなし、人間が圧倒的な価値を生み出すための源泉となるのだ。
AIの予測した未来は、努力で変えられる
講演の最後に、私は全知全能の神(AI)に「田中自身の5年後の未来像」を聞いた結果を共有した。 AIが導き出した私の到達地点は「中国の清華大学 人文社会科学学院」であった。
世界大学ランキングにおいて、東大が26位、京大が61位であるのに対し、清華大学は12位という圧倒的なトップティアである。一見すると突拍子もないこの斜め上の回答に対して、私が多様な世代の240名に送った最後のメッセージはこうだ。
「AIの予測した未来は、自分の努力で変えられます」
【参照】「World University Rankings2026」
東海エリアには、間違いなく強烈な「現場力」の土壌がある。大人がビジネスの最前線で泥臭く戦い、その実践知を、次代を担う若者たちへと惜しみなくインストールしていく。これこそが、日本が世界で勝つための最強の「OJT教育」の姿である。
この発表は、音声および撮影を可能にしていたこともあり、スライドを変えるごとに撮影をされていた。それだけ、貪欲に学ぼうと考えている人物が多いということの現れだと思う。
TechGALAの5,500名の熱狂から、サタプロの240名の熱気へ。我々東海AI連合の実戦戦略は、教育の現場からすでに力強く動き出している。
このような素敵な登壇の機会をくれた東海中学・東海高等学校に感謝したい。
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