KubeCon+CloudNativeCon Europe 2026レポート 6

KubeCon Europe 2026:Anthropicのエンジニアが解説するMCPの未来とは?

KubeCon Europe 2026の併催イベントでAnthropicのエンジニアが登壇し、MCPの未来を解説したセッションを紹介する。

松下 康之 - Yasuyuki Matsushita

6:01

KubeCon Europe 2026の初日に併催された半日のミニカンファレンス「Agentics Day:MCP + Agents」から、AnthropicのDavid Soria Parra氏が行った「MCP in 2026 : Context is All You Need」というセッションを紹介する。動画は以下から参照可能だ。

●動画:Context is All You Need

生成AIを拡張するMCP(Model Context Protocol)の創設者であるAnthropicが解説するプレゼンテーションということで会場は満員の状態で始まった。約30分の時間を使って前半にはMCPが求められる背景を解説、後半はMCPが向かう未来を紹介するという内容だ。Parra氏はMCPのCo-Creatorというタイトルが示すようにMCPを解説するには最適な人物ということになる。

プレゼンテーションを行うDavid Soria Parra氏

プレゼンテーションを行うDavid Soria Parra氏

Parra氏はチャットボットからスタートした大規模言語モデルの活用は2023年から動き始め、2026年の現在はエージェントが実用の段階に来ていると説明。この動きの中心的な部分を担うのがMCPであり、Agentic AI Foundation(AAIF)がThe Linux Foundation配下で結成されたことによって加速されたと語った。

2023年からわずか3年でMCPによって大規模言語モデルが実用の段階に移行したと説明

2023年からわずか3年でMCPによって大規模言語モデルが実用の段階に移行したと説明

その上で現代のAIエージェントが求められている要素としてコードの実行や連続的な記憶、そして計画して推論することを繰り返す機能であると説明した。そしてより重要なのは、他のツールやシステムにアクセスする接続性であると強調した。

AIエージェントに求められる機能を列挙

AIエージェントに求められる機能を列挙

エージェントの接続性については専門的な領域に関する深い知識(Domain Knowledge)とコマンドラインからのアクセス、標準化されたプロトコルを定義したMCPによって実装されていると語った。

AIエージェントの接続性を可能にした3つの要素

AIエージェントの接続性を可能にした3つの要素

専門的な知識については、現在の大規模言語モデルはDockerやKubernetes、Git、GitHubなどについては非常に深く広範な知識を備えており、プログラマーが望む結果を正確に実行可能であると説明した。

クラウドネイティブなシステムに関する深い知識を持つ現代のLLM

クラウドネイティブなシステムに関する深い知識を持つ現代のLLM

コマンドラインからのアクセスについてはUnixの哲学をそのまま受け継いでツールが連携することを可能とし、これによってループやデータの受け渡しが容易になったことがポイントであると語った。

Unixの哲学に則ったコマンドラインの利用が可能に

Unixの哲学に則ったコマンドラインの利用が可能に

しかしながらコマンすドラインツールに関してはエンタープライズ企業がビジネスの本番環境で利用するためには大きなギャップがあることも解説。ここでは4つのポイントを挙げて解説を行った。Not Introspectableは観測可能ではないこと、Not Remoteはローカルでの実行に限定され、サーバーサイドで実行できないこと、No Standardized Authは認証が標準化されていないこと、そしてNo Governanceは管理者によって管理不能であること。以上の4点だ。特に認証については後半に詳しく解説を行い、エンタープライズ企業が想定する利用方法についても深く理解していることを見せた形になった。

CLIについての弱点を4つ挙げて解説

CLIについての弱点を4つ挙げて解説

MCPについても簡単に解説を行った。リモートでの実行を想定した実装であること、標準的なプロトコルを作り上げたこと、エンタープライズが必要とするゲートウェイや認証の方法を想定していること、そしてエクステンションによって拡張可能であることなどがMCPの創設者によって解説されたことになる。

MCPの特徴を解説。エンタープライズ企業が求める機能を想定していることがわかる

MCPの特徴を解説。エンタープライズ企業が求める機能を想定していることがわかる

MCPが持つツールをオンデマンドで検索して利用可能にする機能(Tool Search)については、MCP以前は可能なツールをすべてコンテキストとして大規模言語モデルに渡すことが悪い方法論であることを振り返り、Tool Searchがレイテンシーや品質の面からも良い選択肢であることを強調した。

オンデマンドで必要なツールをロードする機能を解説

オンデマンドで必要なツールをロードする機能を解説

他にも大規模言語モデルがプログラムコードを記述し、実行できる仕様になっていることが重要であることなども解説し、プログラマーのアシスタントとして有効に活用するヒントを提示した。

ここで技術的な側面を離れてMCPがオープンソースとして開発されていることに言及。AAIFのメンバーであるAnthropicやOpenAI、Blockなどの強力なAIベンダーがコミュニティとして参加することで、月間9000万回以上のダウンロードや15,000以上のMCPサーバーが公開されたことを紹介。Anthropicが開発してオープンソース化したMCPの認知と利用が指数的に伸びていることを指摘した。

MCPのダウンロード数やMCPサーバーの数などを紹介

MCPのダウンロード数やMCPサーバーの数などを紹介

2025年には多くの新機能がリリースされたとして、2025年3月から11月の間にリリースされた機能を紹介。最後のExtensionについてはMCP自体を改造しなくても機能拡張を可能にしたとしてエンタープライズがカスタマイズする余地を拡げたことになる。

2025年におけるMCPの進化を紹介

2025年におけるMCPの進化を紹介

MCPを使ったアプリケーションについても解説を行い、OpenAIと協力して開発したインタラクティブなユーザーインターフェースを可能にする機能を紹介。ここではShopifyが開発したと説明されているExcalidrawを紹介。ExcalidrawについてはFacebookのフロントエンドエンジニアであるVjeuxことChristopher Chedeau氏が公式ページに解説を行っているが、手書き風の図を描くビジュアルエディタであり、オープンソースとして公開されている。アプリケーション内部から呼び出すことで組み込めるようになっていることが特徴だ。

●参考:Excalidraw公式ページ:https://docs.excalidraw.com/

MCPのユーザーインターフェースに組み込めるアプリケーションインターフェースを紹介

MCPのユーザーインターフェースに組み込めるアプリケーションインターフェースを紹介

ここではデモとしてRaspberry Pi 5の構成図を手書き風に描画するタスクを生成AIに依頼、Excalidrawを使って図式化するというデモを紹介した。

Excalidrawを使ってRaspberry Pi 5の構成図を生成するデモ

Excalidrawを使ってRaspberry Pi 5の構成図を生成するデモ

最後のパートとして今後の開発計画を紹介。ここではスケーラビリティやロードバランサーに対応したセッション、リトライやセッションの失効の実装、コミュニティ内部のガバナンスの強化、そしてエンタープライズ向けの機能強化などを挙げていた。

2026年の開発計画を紹介

2026年の開発計画を紹介

その中でも前半で認証に関する問題点を紹介したことを受けてCross App Access(XAA)について説明を行った。

さまざまなMCPサーバーとの認証を個別に行うのではなくSSO的に行うCross App Access

さまざまなMCPサーバーとの認証を個別に行うのではなくSSO的に行うCross App Access

ユーザーからのリクエストを受けて複数のMCPサーバーにアクセスを行う際に個別に認証を行うのではなく、シングルサインオン(SSO)として1度の認証で複数のサーバーにアクセスを可能にする機能がCross App Access(XAA)である。この機能が実装されることでエンタープライズ企業がMCPを経由してさまざまなサービスをスムーズに利用可能になることが想定されている。

AnthropicのMCPの創設者が解説を行ったプレゼンテーションとして注目されたセッションだったが、30分という短い時間の中で現状と問題点、将来計画などをよどみなく語った内容となった。MCPのオープンソースコミュニティについてもガバナンスが不足していることを認識しつつも、KubeConに参加している多くのエンジニアに対して参加を促すことを忘れていなかった。エンタープライズが求める機能についても十分に認識している点は重要だ。引き続き注目していきたい。

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