第2回:DB管理ツールを例にOSSの現在の実力を診断する (2/3)

オープンソースの適用可能性を示す
オープンソースの適用可能性を示す

第2回:DB管理ツールを例にOSSの現在の実力を診断する
著者:ユヒーロ  伊藤 寛之   2006/3/20
前のページ  1  2   3  次のページ
DBMS管理ツールの評価は機能や価格・手離れで判断

   複数のOSSを組み合わせてDBMS管理ツールを作るとしても、それはどのような製品を目指せばよいのか。

   システム運用監視にとって決定打となる統一的な方法論は、未だ確立されていない。それでも大手ユーザ企業であれば、大金をはたいて高価な管理・監視ツールを導入し、そのための専属エンジニアを教育すれば、安定したシステム運用監視への解決の糸口はある。

   では、それだけの潤沢な資金がない企業はどうすればいいのか。筆者はこれまでの経験から、真に求められる運用監視ツールのあるべき姿を次のように定義した。

  1. 価格が安い
  2. 導入が容易
  3. Webシステムとの親和性が高い
  4. 手離れが良い
  5. 必要十分な機能を備えている
  6. 複数のDBMSに対応している
  7. 障害の履歴管理機能を備えている
  8. 既存の技術を組み込めるだけの柔軟性を持ち合わせている
  9. 個々のアプリケーションの監視に対して、独自のカスタマイズができる
  10. 運用監視ツール自身が安定して稼働する

表2:監視ツールのあるべき姿


   以下にそれぞれを補足しよう。いうまでもないが、価格は重要なポイントだ。大企業だけが優れた運用監視ツールの恩恵にあずかれればよいわけではない。重要なのは、すべての企業にとって、運用監視ツールを導入するかどうかの選択肢となりうる価格であることだ。そして導入にあたっては、運用監視ツール自身のインストールや、その後の設定が簡単でなければならない。

   現在、大半のDBMSはWebシステムに接続されている。そのため運用監視ツールは、Webシステムとの高い親和性が要求される。

   手離れのよさも大事なポイントだ。理想的な運用監視ツールは、サポートのいらないシステムであることだ。少なくとも、引継ぎ等で再教育が必要なシステムであるべきではない。

   構築や運用が楽でも、機能が不足していては本末転倒だ。可用性やセキュリティ、パフォーマンスの監視機能は必須だ。また、商用とオープンソース、どちらのDBMSも監視できなければならない。一度起きた障害が再発する可能性を踏まえ、それら障害の履歴管理機能も必要だろう。

   そして、システムの発展や技術の進化、追加要件への対応などのため、新しい技術を併用または取り入れられる柔軟性を持たなければならない。

   DBの運用監視は、単一的な監視メニューだけではなく、それを利用するアプリケーションからの監視も必要となる。そうした個々のアプリケーションの監視に対して、独自にカスタマイズできることも望ましい。

   こうした条件を備えた上で、運用監視ツール自身が安定して動作しなければいけない(図2)。

HA機能とデーモン群の関係
図2:HA機能とデーモン群の関係


OSSベースのDB管理ツールは

   すでに実用段階に入ったこうした要件に鑑みながら開発されたWeb-DB群運用管理支援ツールが「HiTo!」だ。


オープンソースの技術を集約し、DB管理に必要な性能を達成

   ITベンダー固有の技術や製品と比較すると、オープンソースのソフトは「技術やパフォーマンスで見劣りがするのではないか?」という声を耳にする。はたしてそうなの。「HiTo!」はオープンソースソフトをベースに開発されているが、その内容は決して商用DB管理ツールにひけをとるものではない。以下、同製品の具体的な特徴を紹介しよう。


MySQL、PostgreSQLに対応

   従来のオープンソース系システムの運用監視では、種々のツールを組み合わせたり、スクリプトを作り込んでいた。だがLinuxプラットフォーム上に構築されるシステムが増えている昨今、各エンジニアのノウハウや暗黙知を頼みにした、個別の作り込みによる運用監視手法では、業務規模の拡大に応えられなくなってきた。そうした背景からHiTo!ではMySQLとPostgreSQLに対応することとした。


セキュリティ対策機能を強化

   強力なログ監視機能が、不正アクセスを確実に記録・通知する。フィルタリング機能も協力で、様々なパターンをフィルタとして設定し、不正アクセスを検知する。Windows Server上のバイナリログに対しても、同様に監視・フィルタリングが可能だ。

   ログファイルは、常にバックアップを保存。対象ファイルの増加を検知するたびに、増分を取得・保存する仕組みだ。ログファイルが改竄・消去されたとしても、直前のログファイルからバックトレースが可能だ。

   NetSNMPやsnortなど、既存のネットワーク管理・監視のOSSを一括管理することもできる(図3)。

Hi!To!の処理フロー
図3:Hi!To!の処理フロー
(画像をクリックすると別ウィンドウに拡大図を表示します)

前のページ  1  2   3  次のページ

株式会社ユヒーロ 伊藤 寛之
著者プロフィール
株式会社ユヒーロ  伊藤 寛之
2000年慶應大学環境情報学科卒業。大学1年の頃よりオープンソースソフトウェアを利用したシステムの設計、開発、運用に携わる。中堅SI企業に入社後、テクニカルサポート、DB管理者の両面よりサイベースを学ぶ。その時の経験を元に、データベース監視ツール「HiTo!」を開発。同製品の事業化を目指しユヒーロを設立した。2005年よりOSSAJ会員。


INDEX
第2回:DB管理ツールを例にOSSの現在の実力を診断する
  企業情報システムの命題
DBMS管理ツールの評価は機能や価格・手離れで判断
  独自UIによる統合管理環境
オープンソースの適用可能性を示す
第1回 ユーザ企業におけるOSS浸透のカギはメインフレーム世代のSE
第2回 DB管理ツールを例にOSSの現在の実力を診断する
第3回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その1
第4回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その2
第5回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その3
第6回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その4
第7回 PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その1
第8回 PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その2
第9回 PostgreSQL vs MySQL2つのDBMSを検証する(前編)
第10回 PostgreSQL vs MySQL2つのDBMSを検証する(後編)
第11回 OSSのプロがいなくても大丈夫!必要なソフトの情報はこうして探す(前編)
第12回 OSSのプロがいなくても大丈夫!必要なソフトの情報はこうして探す(後編)
第13回 クライアントのOSとしてLinuxを検証する
第14回 バッファオーバーフローとサーバ側のセキュリティ対策を考える

人気記事トップ10

人気記事ランキングをもっと見る