教育現場におけるオープンソース実証実験 4

クラスルームPC管理ソフトウェア

クラスルームPC管理ソフトウェアの概要   つくば市の実証実験では5校に約180台のLinux PCを導入しました。これだけの台数のLinux PCを管理することは、教員にとって大きな負担です。Windows PCであっても数10台のPC管理は大変であり、IT担当教員の負担となっています。そこで、

比屋根 一雄

2005年9月16日 20:00

クラスルームPC管理ソフトウェアの概要

   つくば市の実証実験では5校に約180台のLinux PCを導入しました。これだけの台数のLinux PCを管理することは、教員にとって大きな負担です。Windows PCであっても数10台のPC管理は大変であり、IT担当教員の負担となっています。そこで、リモート操作を得意とするUNIX系の利点を生かし、数10 台のLinux PCをまとめて管理する「クラスルームPC管理ソフトウェア」を開発し、実際に導入して有効性を検証しました。


学校におけるPC管理の問題点

   学校におけるコンピュータの計画的整備は、「e-Japan戦略」などで政府の重点課題となり、2005年度末の数値目標として、コンピュータ教室 に42台、普通教室に各2台、特別教室などに6台があげられています。これは各学年3クラスの小学校で84台、各学年5クラスの中学校で78台のコン ピュータを導入する必要があるということになります。

   しかし現実には、小学校で30.8台、中学校で46.5台が、2004年度末の導入実績です(注)。今後、IT活用教育の重要性がさらに認識されるにつれ、設置台数が急増すると予想されます。

※注: 文部科学省「学校における情報教育の実態等に関する調査結果」2005年8月

   IT担当教員にとって、PC管理は大きな負荷になっています。現在でも20台から40台のPC管理に、 夜遅くまで残って作業している教員は数多くいます。PC管理は教員本来の業務ではないのですが、現実はただでさえ忙しい教員の作業を増やすことになってし まっています。

   PC管理とは、例えば以下のような作業です。

  • ソフトウェアのアップデート
  • 新しいソフトウェアやプリンタドライバのインストール
  • 児童生徒が誤操作やいたずらで壊したデスクトップのリカバリ
  • ネットワークに接続できなくなった際のトラブル解決

表1:PC管理の作業内容

   今後、50台あるいは100台のコンピュータを導入すれば、台数に比例して作業時間も増えてゆきます。すでに限界に達している学校も多いのではないでしょうか。

   実際、つくば市でも毎月2〜6台のPCの動作が不安定になり、Windows PCの復旧に1週間のうち2〜3時間をかけているという学校がありました。特に、児童生徒の誤操作やいたずらでデスクトップを壊したり、ネットワーク設定 を触って接続できなくなることが多いようです。

PC管理の3方式

   多数のPCを管理する方式には、直接管理方式、パッケージ集中管理方式、コピー管理方式の3つがあります。

管理方式 管理ソフト 説明
直接管理方式 利用しない方式 個別のPCごとにそれぞれ管理する従来の方式
パッケージ集中管理方式 多くの市販PC管理
ソフトウェア
管理ツールを用いて個々のソフトウェア単位に管理する方式
コピー管理方式 一部の市販PC管理
ソフトウェア
クラスルーム管理
ソフトウェア
ハードディスク全体を一括管理する方式
表2:PCの管理方法

   直接管理方式は、従来のように1台1台個別に管理する方式です。現在の学校ではこの方式であり、台数が増えると管理の負荷は大幅に増大します。

   パッケージ集中管理方式は、PC管理ソフトウェアを使って、各PCにソフトウェアやアップデートを一斉配信する方式です。ソフトウェアの導入・更新 は、必要なパッケージのみ行うので、システム更新に要する時間は短くてすみます。また、管理はソフトウェアパッケージ単位に行われるので、利用者がPCを カスタマイズすることができ、企業ユースに向いています。

   ただし、アイコン追加や細かい設定を行いたい場合には、パッケージを作成して配布する必要があるので、管理者に比較的高度なスキルが要求されます。

   コピー管理方式は、1台の参照PCのハードディスク全体のイメージを、各PCに配布する方式です。参照PCは通常のクライアントPCであるため、管 理者は比較的容易に、ソフトウェアの更新や環境の細かい調整を行うことができます。ただし、全ディスクをコピーするために、更新に長時間を要するという欠 点があります。また、各PCの利用者が個別にPCをカスタマイズすることはできません。

   学校に高度なITスキルを要求することは難しく、また個別のPCのカスタマイズは不要であるため、本実証実験ではコピー管理方式を採用しました。

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