クラウドはコスト削減だけでなくビジネスのパワーになる―AWS SUMMIT TOKYO 2012レポート
2日目のテーマは「Go Enterprise!」。初日の基調講演でも話題になったエンタープライズ分野での躍進ついて、こちらもゲストスピーカーの講演を中心にお伝えする。不動産・住宅総合サイトの「SUUMO」を運営する株式会社リクルートの川本広二氏が、AWSを活用したスマホサイト設計の事例を紹介した。
クラウドはビジネスにおける競争戦略上の強みになり得る
SUUMOのスマホサイトでは、テレビCMやテレビ番組などの影響による予測しづらいアクセス増に備え、自動でサーバーの稼働数を調整するオートスケールという技術を導入している。かつてのオンプレミスのようにピーク時にあわせて設計を見積もるのではなく、需要に連動してサーバーリソースをスケーリングさせることが可能になる。余剰分をなくしてコストを削減したり、高負荷によるサーバーダウン、ひいてはそれによって引き起こされる機会損失を未然に防ぐのが狙いだ。
図5:川本広二氏 (株式会社リクルート 住宅カンパニー MP統括部SUUMOネット推進部 部長) |
「ネットビジネスはスピードが命と言っても過言ではない。自社都合で準備していても市場は決して待ってはくれない。そういった点でもすぐにリソースを確保できるクラウドは今では必要不可欠な選択肢となっている」と川本氏は語る。
とはいえ、どうしても社内的な事情でクラウドの導入が困難な場合も多いだろう。同社では、一部をオンプレミスのまま残し、クラウドとのハイブリッドな環境を構築するのを現実的な解として提案したという。そうしたノウハウはすぐには得られない、まずはじめてみて少しずつ自社内での運用実績を蓄えていくことが重要になってくる。
最後に同氏は「クラウドはビジネスにおける競争戦略上の強みになり得る」と強調した。例えば同社では、リアルタイムでログを集計しその結果をサイトのパーソナライズエリアに即時反映している。いわゆるビッグデータ処理と呼ばれる分野だ。こうした最新の技術はクラウドサービスの進化なくしてはなかなか実現が難しかったと言えるだろう。「Webサービスは差別化が難しい。クラウドの強みを活かして革新的なサービスを打ち出していく必要がある」と講演を締めくくった。
2日間の取材を通して記者が強く感じたのは、これまではコスト削減といった言わば消極的な理由によるクラウド導入事例が多く見られたが、リクルートの事例のように、現在ではクラウドでなければ実現できないイノベイティブな分野への応用が増えてきている点である。クラウドという選択肢が今まで以上に存在感を増しているのは、もはや疑いようがない事実である。
(コンピューターテクノロジー編集部 鈴木教之)
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