第13回:クライアントのOSとしてLinuxを検証する (2/3)

オープンソースの適用可能性を示す
オープンソースの適用可能性を示す

第13回:クライアントのOSとしてLinuxを検証する
著者:イーシステム  芝 国雄   2006/7/19
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5%に満たないクライアントOSとしての利用

   前項の状況とは異なり、図4のようにクライアントPCにLinuxを使っているユーザーは非常に少ない。その内訳を見てみると、5割がある特定の業務用に、約4割がシステム開発に使用している。使っていないユーザーは、その約8割が当面導入する意向がないとしており、Linuxのクライアント市場への普及はまだまだ先のことになりそうだ。
社内クライアントPCのOSとしてのLinux利用者の有無出典:Linuxオープンソース白書2006(インプレス/矢野経済研究所、2005-2006)
図4:社内クライアントPCのOSとしてのLinux利用者の有無
出典:Linuxオープンソース白書2006(インプレス/矢野経済研究所、2005-2006)

   サーバ側に比べて、クライアント側でLinuxの普及が遅れている理由は、OSの機能に不足があるからではない。「導入事例が少ないこと」や、「管理できる人材がいないこと」、「問題が起きた時にサポートが得られない」といった不安感があるからだろう。

   また、Linuxに対応しているアプリケーションが、Windowsのそれに比べると少ないことは事実だ。それでも、WordやExcel、PowerPoint、メールとインターネットといった、決まった業務システムを使うだけであれば、OSがLinuxであっても十分使えると言える。

   レッドハット社のWebサイトに、バンドルされているソフトのリストがあるので参照してほしい。

Red Hat Enterprise Linux WS v.4アプリケーションリスト
http://www.jp.redhat.com/software/rhel/rhel4app_list/rhel4_ws.html

   さらに、Windowsは業務システムで使われ始めて十数年経過しているので、その使い勝手に慣れたユーザーは、Linuxの操作性に初めは不便を感じるかも知れない。だが筆者は、LinuxもWindowsと同じGUIで操作ができるのだから、慣れるまでにそれほど多くの時間はかからないと見ている。

   事実、実際にLinuxとその上で稼働するソフトを使ってみるとまったく問題ないことが分かる。

   たとえば、レッドハットの「Enterprise Linux WS」のバージョン4には、IEを代替するブラウザとして「Firefox」が同梱されている。また、OutlookやOutlook Expressに代わるメールソフトとして「Thunderbird」が、Microsoftオフィスに代わるオフィス製品として「OpenOffice」があらかじめバンドルされていて、機能的にはまったく遜色ない。

   逆に、メールソフトのスパムメールのフィルタリング機能などは、とても優れている製品もある。Linux版のオフィス製品もマイクロソフトのWordやExcelとは100%ではないが、かなり高い互換性があるので、使用に際してほとんど問題ない。さらに、メールソフトの機能を有する「Evolution」や「mutt」、ブラウザ機能を有する「Lynx」など、何種類かのソフトがあらかじめバンドルされているので、好きなソフトを選択して使うこともできる。

最新のテクノロジではなく、少し古いITを使う方が問題が少ない!?

   Linuxが注目されはじめた1998年頃、当時、筆者は購入したばかりの最新のPCに、雑誌の付録で付いてきたLinuxをインストールしてみた。ところが、ディスプレイドライバがLinuxに対応していなかったので、モニタに表示されたのは解像度が800×600の画面だった。インターネットで、ドライバを探し回ったが見つからなかった。

   実は当時、そのドライバは世の中に存在していなかったのだ。仕方なく、少し前に購入したPCにインストールしてみたところ、1024×768の画面を表示できた。この時に、Linuxは最新のPCではなく、少し古いPCで使う方が問題が少ないと実感した。

   この点について、現在ではハードメーカがLinux対応のPCを販売しているので、当時のような心配はなくなっている。

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イーシステム株式会社 芝 国雄
著者プロフィール
イーシステム株式会社  芝 国雄
グプタ事業部 部長
1995年、日本グプタ(現イーシステム)入社。米グプタ社製品の統合開発ツールの「Team Developer」、RDBMSの「SQLBase」といった製品の日本語化をはじめ技術支援や販売、マーケティング業務に従事。主に、ユーザ企業のシステム開発の現場で、システムの設計に関わる事前調査や助言などの上流工程から、プログラミング時のトラブルシューティングまで、幅広く支援していた。2000年4月、携帯電話を活用したワイヤレスソリューション事業の立ち上げに従事。2001年、グプタ事業に専念し、現在に至る。


INDEX
第13回:クライアントのOSとしてLinuxを検証する
  約4割の企業や官公庁・自治体がLinuxサーバを導入済み
5%に満たないクライアントOSとしての利用
  導入のポイントはLinuxクライアントの管理
オープンソースの適用可能性を示す
第1回 ユーザ企業におけるOSS浸透のカギはメインフレーム世代のSE
第2回 DB管理ツールを例にOSSの現在の実力を診断する
第3回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その1
第4回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その2
第5回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その3
第6回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その4
第7回 PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その1
第8回 PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その2
第9回 PostgreSQL vs MySQL2つのDBMSを検証する(前編)
第10回 PostgreSQL vs MySQL2つのDBMSを検証する(後編)
第11回 OSSのプロがいなくても大丈夫!必要なソフトの情報はこうして探す(前編)
第12回 OSSのプロがいなくても大丈夫!必要なソフトの情報はこうして探す(後編)
第13回 クライアントのOSとしてLinuxを検証する
第14回 バッファオーバーフローとサーバ側のセキュリティ対策を考える

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