第7回:PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その1 (2/3)

オープンソースの適用可能性を示す
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第7回:PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その1
著者:SRA OSS  石井 達夫   2006/5/11
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バージョン8.1では2フェーズ・コミットを実装

   最新版は、リリースされたばかりの8.1というバージョンだ。

   8.1では、2フェーズ・コミットが実装され、本格的な分散DBを構築できるようになる。加えて、マルチCPUでのパフォーマンス向上など、よりエンタープライズ向けの機能を備えている。

   では、PostgreSQLがどのようにIT企業で活用されるのかを実例を交えて見てみよう。


スタートアップ企業での利用

   立ち上げたばかりの企業では、投資リスクを最小限にしたい。投資コストの中には、様々なものが含まれるが、特に商用DBの導入には多大なコストがかかる。そのため、できればコストを抑制したいところだ。そこで、無償で利用できるPostgreSQLの出番となる。

   しかもPostgreSQLは商用利用も含めて、目的に制限がない。そのためDBMSが利益に直結するような使い方、例えばオンライン販売の管理などにも使える。

   DBは企業の要となるものだから、PostgreSQLには専用のハードを割り当てたいところだ。この点についても、特に高価なものは必要ない。DB規模が数GByte以内、ユーザ数が10人程度、営業時間内のトランザクション数が1万程度(1分に1トランザクション)ならば、メモリーを256〜512MB程度積んだPentium 4マシンで充分だ。

   OSはWindowsでも構わないが、できればLinuxにした方がよいだろう。同じハード・スペックならより高い性能がでるし、容易に管理できるからだ。ディストリビューションは問わないが、セキュリティ・アップデートを提供しているものを使った方がよいだろう。もちろん、FreeBSDやSolarisなどのUNIXでも大丈夫だ。

   ハードディスクも、それほど高価なものは必要ない。IDEやSATAのディスクでも充分だ。ただし、RAIDによる何らかのミラーリング構成をとることが望ましい。ソフトウェアRAIDでも問題ないが、ディスク交換時にシステム停止が必要になる。このあたりは予算との兼ね合いになる。

   DBの運用で、最重要課題はデータの保全だ。RAIDを使ってDBをデータ破壊から守ることはできる。だが、オペレーションミスによるデータ破壊に対しては、バックアップを日頃から取得しておく以外に対策はない。PostgreSQLでは、DB運用中にもバックアップできる「ホットバックアップ」機能を備えているので、これを活用したい。

   最近は、ディスク上にバックアップすることもある。その際には、できれば別マシン上のディスクを使うことが望ましい。同じディスク上では、DBのパフォーマンスが損なわれるだけでなく、ディスクが破壊された際に道連れになってしまう恐れがあるからだ。

   またバックアップとは別に、アーカイブ・ログも取るようにしておけば、データ破壊直前の状態までデータを戻せるようになるだけでなく、任意の時点のデータをリストアできる。そのため、オペレーションミスに対しても、ある程度対策できる。ただし、過信は禁物でバックアップはきちんと取得しておくべきだろう。


PostgreSQLを学ぶ際に情報には不自由しない

   以上は、PostgreSQLを導入するためのハード的な技術要件だ。次は、人的要件を説明したい。PostgreSQLを管理できるSEを、どうやって育てたらよいだろうか。

   Amazonで「PostgreSQL」で検索すると、多数の書籍がすぐに検索できる。これからもわかるように、PostgreSQLを学ぶための情報には不自由しない。またPostgreSQLユーザ会では、メーリングリストや各種セミナーを運営・実施しているので、それらに参加するのもよいだろう。コミュニティに参加しているという実感も得られるからだ。

   ただし、こうした自学自習は身近なところにPostgreSQL経験者がいる場合を除き、時間がかかるのも事実だ。時間が限られる場合は、商用サービスの併用をお勧めしたい。

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SRA OSS 石井 達夫
著者プロフィール
SRA OSS,Inc.  石井 達夫
SRAを経て、現在はSRA OSS,Incの日本支社長として、日本でのOSSビジネスを推進する立場にある。個人的にもPostgreSQLの開発、普及活動に取り組んでおり、名実ともにPostgreSQLを最強OSSDBにするのが夢。主な著書は「PostgreSQL完全攻略ガイド」など。

INDEX
第7回:PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その1
  当初のPostgreSQLは性能や安定性が不十分
バージョン8.1では2フェーズ・コミットを実装
  PostgreSQL技術者認定試験(PostgreSQLCE)
オープンソースの適用可能性を示す
第1回 ユーザ企業におけるOSS浸透のカギはメインフレーム世代のSE
第2回 DB管理ツールを例にOSSの現在の実力を診断する
第3回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その1
第4回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その2
第5回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その3
第6回 OSSはビジネスになるのか?「魔法のお鍋」を読み直す その4
第7回 PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その1
第8回 PostgreSQLを使い切るためのノウハウを徹底解説する その2
第9回 PostgreSQL vs MySQL2つのDBMSを検証する(前編)
第10回 PostgreSQL vs MySQL2つのDBMSを検証する(後編)
第11回 OSSのプロがいなくても大丈夫!必要なソフトの情報はこうして探す(前編)
第12回 OSSのプロがいなくても大丈夫!必要なソフトの情報はこうして探す(後編)
第13回 クライアントのOSとしてLinuxを検証する
第14回 バッファオーバーフローとサーバ側のセキュリティ対策を考える

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