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ITコスト評価インデックスとITコストベンチマーキング
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第4回:ユーザ企業がIT投資を評価するポイント
著者:日本情報システム・ユーザー協会   2006/5/17
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IT投資評価ポイント

   2004年度にJUASはIT投資評価モデルを検証し、具体的なIT投資評価ポイントの分析整理を進めた。IT投資評価は、IT投資を行う前の「事前評価」とIT投資完了後の実用を通じた「事後評価」が必要となる。ここでは、IT投資評価は、事前評価でも事後評価でも同じ視点/ポイントで行えるとの見方である。

   今年度は各社でのJUAS−IT投資評価モデル上の視点がどのように適用されているかを分析した上で、表1〜4に示す「企業IT投資戦略の評価」に評価ポイントを整理した。


企業/事業戦略上での評価

   IT投資が企業・事業戦略とマッチしていることは、IT投資の前提条件であり、特にKPIやCSFの視点を設定し評価することを進めている企業がある。

企業IT投資戦略の評価 1/引用:EMシステムコンサルティング
表1:企業IT投資戦略の評価 1
引用:EMシステムコンサルティング
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   多くの企業では企業/事業戦略上の視点からIT投資を評価することを検討中ではあるが、具体的な評価まで踏み込んで活用していない。いずれにしろ、経営戦略/方針、事業戦略/方針上での貢献度を評価ポイントとして各社は設定する必要がある。

   特に、事業戦略/事業計画上では直接的な効果を計数で提示して、投資効果を追求できる仕組みを企画、設計することが重要である。


情報付加価値形成上での評価

   データ処理のスピード、制度、品質を保つためにIT投資がなされることは当然であるが、意識的に情報付加価値形成を狙ったIT化投資が進められているとは理解されていない。また、実施例が乏しく、検討対象外と見る傾向が強い。

   これは、ITインフラ機能により実現される局面が多いために、意識的に情報付加価値の存在を認識しないで過ごしてきたためと思われる。

   しかし、企業情報システムの根幹は情報付加価値を形成することであり、情報システムの設計段階で情報付加価値を作り込むメカニズムを考案できない設計者は設計者とは呼べないなどの雰囲気作りが必要である。情報付加価値を作り込むメカニズムを考案し設計することこそ、情報システム部門の貢献、存在価値がある。アプリケーションプログラムの仕様の作成はプログラマの仕事であり、情報システム部門の仕事ではない。

   情報蓄積検索を通じたコミュニティ形成などで本格的な情報価値形成の場の促進をはかることが望まれる。ビジネスナレッジの蓄積をベースにして情報獲得へのナビゲーション機能の開発を通じて本質的な情報付加価値形成のシステム設計ができることを期待する。


システム資産価値上での評価

   IT投資の成果として優良なシステム資産が形成されているかの評価であり、基本的な企業情報システム資産としてアプリケーションプログラム、データベース、ITインフラの機能/性能とともに自社の経営/事業の仕組み上での業務処理の情報システム化、業務処理データのDB化、ITインフラ投資額の残存価値などを評価する。しかし各社で実施例が乏しく、検討対象外と見る傾向が強い。

   情報システム部門から見ると自己評価を行うことがポイントであり、IT資産形成の責任部門である情報システム部門は積極的にこの評価を行い、IT健全性(ヘルシー)の維持を訴え、企業内での貢献度を可視化する努力が必要である。

   特に、CIOは自社のシステム資産を評価してはじめて、経営/事業戦略を支援するIT戦略を論じることが可能であるはずであり、砂上楼閣的なIT戦略として見透かされないようにすることが肝要である。

   現在、情報システム部門が経営者から必要悪の存在に見られるケースが発生しているとすれば、それは自業自得であると反省し、企業に貢献できる基盤形成に力を入れながら、新しい企業価値を生むためのIT戦略展開を進めることが重要である。

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社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
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日本情報システム・ユーザー協会
社団法人 日本情報システム・ユーザー協会
ユーザーの立場からの産業情報化の推進を目的とし、大手ユーザー企業を中心に、約250社の会員を擁し、経営とITに関する様々なテーマや、立場に応じた40以上の委員会、研究会、研究プロジェクトを実施し、毎年、各種調査・研究報告書の刊行や、提言を行っている。1962年、日本データ・プロセシング協会として創立、1992年社団法人日本情報システム・ユーザー協会として、全面的に拡充改組。
http://www.juas.or.jp/

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第4回:ユーザ企業がIT投資を評価するポイント
IT投資評価ポイント
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