WDLCが「MakeCode×micro:bit100プロジェクト」を開始、プログラミング教育必修化へ向けた支援を強化
2018年6月13日、東京の赤坂インターシティコンファレンス the AIRに於いて、WDLC(ウィンドウズデジタルライフスタイルコンソーシアム)主催による「MakeCode×micro:bit 100プロジェクト」発表会が開催された。
本プロジェクトは、2020年度より小学校教育においてプログラミングが必修化されるなど、官民でプログラミングへの注目の高まりを受けた学校のプログラミング教育を応援するものだ。
プログラミング教育支援としてスタート
発表会の冒頭で、WDLC会長の梅田 成二氏よりWDLCの取り組みについて説明があった。WDLCは2007年に誕生し、パソコンメーカーやコンテンツメーカー、量販店など114社が参加している業界団体だ。過去には「地デジ化」など、時代に合わせたテーマに取り組んできた。最近取り組んでいるテーマは日本の未来を支える子どもたちの支援で、「MyFirst PC」という子どもを持つ保護者向けのパソコン学習情報サイトなどを運営している(2016年7月より展開中)。
文部科学省が発表した新学習指導要領により、2020年に小学校でプログラミング教育が必修化、2021年に中学校でプログラミング教育を拡充、2022年に高校でプログラミング教育が必修科目になることが決定した。そこで、「学校や家庭でのプログラミング教育支援として、MakeCode×micro:bitによるプログラミング学習コンテンツ制作を考えた」という(梅田氏)。
具体的には、プログラミング教育授業用にmicro:bitとサンプルコード30個を提供する。WDLCサイトを通じて提供することで、学校や家庭で活用してもらうことを想定しているという。プログラミング教育授業案のほか、楽しく学べるコンテンツの実施事例を継続的に増やしていく予定だ。
既に、千葉大学教育学部附属小学校で4年生がマイコンボード「micro:bit」で「お化けライト」を作るテスト授業などを行っている。小学校理科の学習内容を見ると、4年生で「電気のはたらき」を学び、6年生で「電気の利用」を学ぶ。その単元でプログラミング教育を取り入れた格好だ。
従来の単元目標から発展目標へと変更することで、「電気を制御するプログラムを作成して見出した問題を興味・関心を持って追求したり、ものづくりをしたりする活動を通してコンピュータによって電気を制御することの見方や考え方を養う」としたという。
プログラミング結果を体感できる「micro:bit」
「Microsoft MakeCode」は、Microsoft社が提供するオープンソースのプログラミング学習環境だ。Webベースで、指令が書かれたブロックを組み合わせるビジュアルプログラミングを採用している。「JavaScriptによるプログラミングにも切り替えられるため、小学校から大学生、社会人まで使える」と、WDLC事務局の春日井 良隆氏は強調する。
千葉大学教育学部附属小学校で行った授業は次のとおりだ。子どもたちは「暗くなったらmicro:bitにお化けアイコンを表示する」という課題を与えられる。「『暗くなったら』だから『明るさ』ブロックを使うのかな」などと、子どもたち自身で考えさせて進めていく。プログラミングの実行結果は画面上でもシミュレーションできるが、「ダウンロード」をクリックすればプログラムをがmicro:bitにダウンロードされ、実機で実行結果を確認できる。
「micro:bitは物理的にフィードバックがあるところが良い。自分のプログラミングによって実際にどうなるか体感できる」と春日井氏。この授業で新しい発想が生まれたり、発想を実現するための論理的思考が身に付いたり、6年生の「電気の利用」に向けての素地づくりができたという。また、「micro:bitは加速度や光、温度を感知するセンサー類やLEDを内蔵しているため、理科、算数の他、音楽や技術などの科目にも活かせる」。
WDLCは今後、小学校100校にmicro:bitを寄贈し、小学校からは授業レポートやサンプルコードを提供してもらう予定だ。レポートなどは、その他の学校のケーススタディ、授業キットとして活用できるようにする。6月20日より受付を開始し、事務局にて提供対象学校を選定後(7/6)、各学校にmicro:bitを納品予定(7/20)としている。「先生方に夏休みの間に研究してもらいたいと思いこのタイミングで発表した」(梅田氏)という。
「未来の学びコンソーシアム」の後援も
本プロジェクトの開始に伴い、WDLCは「未来の学びコンソーシアム」に賛同すると共に「未来の学びコンソーシアム」にプロジェクトの後援を受けることになった。
未来の学びコンソーシアムは、文部科学省、総務省、経済産業省が次期学習指導要領におけるプログラミング教育の実施に向けて学校や企業などと連携し、プログラミング教育の普及・推進を図るために設立した団体だ。本発表会でも、未来の学びコンソーシアムから文部科学省、総務省、経済産業省の各代表が言葉を寄せた。
文部科学省 大臣官房審議官(初等中等教育局担当)の白間 竜一郎氏は「当プロジェクトはタイムリーなプロジェクトであり、ありがたく感じている。全国の子どもが楽しいという経験を通して機運が高まることを期待し、先生たちにも事例の提供により後押しとなることを期待している」と語った。また「全国の小学校でパソコンを整備するために、本年度から各自治体における予算化を目指す」とした。
総務省 情報流通行政局 情報流通振興課情報活用支援室長の田村 卓也氏は、現在の日本が人口減少、少子化、高齢化などの課題を抱えていることを指摘。総人口に占める高齢者が今後増えていくのに対して、本年から地域の高齢者が地域ICTクラブの整備などを進めている。「世代を超えた経験の共有を進めるほか、連携しながらICT教育を推進したい」と語った。
経済産業省 経済産業政策局参事官(併)産業人材政策担当参事官室長の伊藤 禎則氏(※「禎」のへんは「示」)は、現在の第4次産業革命でAIなどとどのように向き合っていくのかが課題だが、AIを利用して付加価値を上げることができる人間とそれが難しい人間に分かれてしまう事実を指摘。「AIを利用して付加価値を上げるためには教育が必要」とした。
おわりに
発表会の終了後には、Make Codeとmicro:bitが体験できるブースが用意されていた。Make Codeで組んだプログラムをダウンロードして実行すると、micro:bitが光る様を体験できる。集まった記者たちも、実際に光らせては歓声 を上げていた。
従来のプログラミングのように、画面上で実行結果を確認するのではなく、実際にあるものが光ったりする方が特に小さい 子どもには成果がわかりやすい。結果が目に見えることで、子どもたちのプログラミングに対するモチベーションにつながることは間違いない だろう。小学生にぴったりの教材であることを強く感じた。
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