RHCSによるThree Tiered LVS
RHCSによるThree Tiered LVS
ここまで説明したIPロードバランサとフェイルオーバークラスタを組み合わせることで、図4のようなThree Tiered LVSを構築することが可能です。インターネット側から見るとIPアドレスが1つだけ存在するように見えますが、実際にはそのIPアドレスは2台のLVS により維持されます。

図4:Three tiered LVS
また、Server Poolに置かれた実サーバからはバックエンドにあるデータベースのIPアドレスも1つのみ存在するように見えますが、こちらもCluster Managerによって構成された2台以上のノードによって維持されています。
冗長ハードウェア構成
こういった可用性を重視するシステムにおいては、個別のハードウェア構成に関しても十分な考慮が必要になります。
- 電源の冗長化
- 個別のホストのハードディスクのRAID化
- メモリのエラー訂正機能
- 2つのネットワークインターフェースで1つのIPアドレスを維持するボンディング
- ファイバチャネルカードの冗長化とファイバチャネルスイッチの採用
これらの項目のうち、ハードディスクのRAID化はOSによるソフトウェアRAIDが可能ですし、ボンディングの機能もRed Hat Enterprise Linuxに同梱されるbondingドライバによって提供されます。
実装が大きく変更されたCluster Manager
1つ前のバージョンであるRHCS3と比較すると、RHCS4ではCluster Managerの実装が大きく変更されています。構成する際に注意が必要な点を簡単にご紹介します。
Quorumパーティションの有無
RHCS3を含む一般的なクラスタソフトでは、各ノードの状態は共有ストレージ上のQuorumパーティションに保持されます。しかし先ほども説明 したように、RHCS4ではフェンスデバイスを用いてノードの状態を把握するため、Quorumパーティションが必要ありません。
カーネルモジュール
ロックの管理を行うDLM(Distributed Lock Manager)にはdlm-kernelパッケージ、クラスタ全体の管理を行うcmanにはcman-kernelパッケージが必要です。これらのパッ ケージはカーネルのバージョンに依存しますので、新しいカーネルを追加インストールする際には注意が必要です。
設定ファイルの同期
RHCS3ではクラスタの設定ファイルを修正する度に、ftpやscpなどで設定ファイルをもう一方のノードにコピーする必要がありました。それに対して、RHCS4ではccsdによって自動的に設定が同期されます。
また設定ファイルの世代管理も可能になっており、もし設定変更後にサービスに不具合が発生したとしても、1つ前のバージョンの設定ファイルを適用し直すことが可能です。
最後に
RHCSに関して寄せられるご質問のうち、構築費用について最も多く問い合わせを寄せられるので、以下に構成例を提示して、締めさせていただきます。なお、価格は2005年11月現在のものとなりますので、最新の価格については是非問い合わせください。
| 構成要素 | 製品名 | 税込価格 | 数量 | 小計 |
| LVS 2台 | Red Hat Enterprise Linux ES | \104,790 | 2 | \209,580 |
| Red Hat Cluster Suite | \71,400 | 2 | \142,800 | |
| 実サーバ4台 | Red Hat Enterprise Linux ES | \104,790 | 4 | \419,160 |
| 合計 | \771,540 | |||
表2:IPロードバランサ構成例
| 構成要素 | 製品名 | 税込価格 | 数量 | 小計 |
| ノード2台 | Red Hat Enterprise Linux ES | \104,790 | 2 | \209,580 |
| Red Hat Cluster Suite | \71,400 | 2 | \142,800 | |
| 合計 | \352,380 | |||
表3:Cluster Managerによる2ノード構成例