I/O仮想化の現在 3

仮想化によってストレージの重要性が増大(その2)

仮想化によってストレージの重要性が増大(その2)

マルチベンダー環境の大規模ストレージ統合

企業内やグループ企業間のシステムを統合するケースでは、IT機器はマルチベンダー環境になることが多くなります。こうしたケースでは、特に、ストレージの統合に頭を悩ませることになります。

現状のストレージ運用の問題点

  1. データが、部門/業務単位で、複数ベンダーのNASやFCストレージに分散
  2. ストレージごとにバックアップ手順がバラバラで、運用が煩雑
  3. 全体のディスク使用量には余裕があるが、個別のストレージの容量不足でディスクを増設
  4. シン・プロビジョニングを適用したいが、ストレージ単位で個別に対応

ストレージ統合の妨げとなる要因

  1. 導入時期が異なるので、リプレースのタイミングがバラバラで、統合し難い
  2. 異なるベンダー間のデータ移行が困難なので、同一ベンダー同士でリプレースせざるを得ない
  3. 1台のストレージへの統合は、性能要求の高いものに合わせざるを得ず、コストが増大

ベンダーごとに異なる管理ツールやバックアップ運用を一元化する機能を備えたストレージの例として、ここでは日立製作所のFCストレージ「USP VM」を紹介します。USP VMは、異なるベンダーのストレージを外部接続によって統合し、共通ストレージ・プールを実現します。これにより、運用の一元化が可能になります。

図8: 日立製作所のFCストレージ「USP VM」を用いたストレージ統合(クリックで拡大)

 

「USP VM」が実現するストレージ統合

  1. ストレージ仮想化によって、ストレージ混在環境を統合
    (既存のディスク容量を有効活用し、互いに異なるライフサイクルを平準化)
  2. ベンダーごとに異なるツール/コマンド/運用手順を一元化
    (それぞれ固有のノウハウを必要とするストレージを一括管理)
  3. シン・プロビジョニングやスナップショットなどの最新機能を活用
    (既存のストレージでは使えなかった機能をカバー)

「クラウド型データ・センター」に必要な要件は、共有ストレージ・プールに対して、あらゆるサーバーがオンデマンドで接続できる環境です。I/O仮想化が、こうした世界を作ります。

XSIGOとUSP VMが作る「クラウド型データ・センター」

  1. 既存のサーバー/ストレージ資産に、仮想マルチファブリック環境を提供
  2. 仮想サーバー/データ/バックアップなど個々の要件ごとに仮想ディスクを提供
  3. アプリケーションごとに異なるストレージ要件に応じて、個別のI/O接続を提供
  4. サーバーからディスクまですべてのリソースを仮想化したクラウド・インフラ

ここでは、既存の200台の物理サーバーを仮想サーバー環境(20台の物理サーバー)に集約するモデル・ケースに沿って、XSIGOとUSP VMの機能を説明します。図9の左は、既存のインフラです。仮想化によるシステム統合のため、図の右に示した仮想サーバー用途の新規サーバー20台とI/O仮想化コントローラ、さらにUSP VMを導入しています。

仮想サーバーへのシステム移行イメージ

  1. 既存Ethernetスイッチの空きポートと既存FCスイッチの空きポートにI/O仮想化コントローラを接続
  2. USP VMを既存FCスイッチの空きポートに接続
  3. 既存ストレージの空き容量をUSP VMにより仮想化し、仮想サーバーのディスク・イメージを格納するための共有ストレージを作成
  4. I/O仮想化コントローラ上に作成した仮想HBAを共有ストレージにマッピングした後、サーバーに割り当て
  5. 共有ストレージ上に、移行先となる仮想サーバーを順次インストールし、アプリケーションを移行
  6. 必要に応じて、既存ストレージへの接続を、サーバーごとに作成

図9: XSIGOとUSP VMを用いて物理環境を仮想環境に移行(クリックで拡大)

 

サーバーの移行が完了した後でも、ストレージの要件に応じてディスクの増設などが可能です。アプリケーション負荷の増加に合わせて、I/O接続の追加や帯域制御、仮想ストレージ間のデータ移行なども容易に実施できます。

図10: XSIGOを中核としたストレージ統合の最終形態(クリックで拡大)

 

まとめ

3回にわたって「I/O仮想化の現在」を解説してきました。

あらゆるシステム・リソースがオンデマンドで手に入る便利な世の中になりつつありますが、これらを支えるインフラの構築/運用には、まだまだ多くの課題が残されています。

そのキーワードの1つが「I/O仮想化」なのです。

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